- 著者
-
屋代 如月
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究では,整合界面を構成する種々の格子構造について「第一原理格子不安定解析」を行うことにより,界面転位発生の臨界ミスフイットの評価や第三元素添加による界面安定化など,2相整合耐熱超合金の界面原子構造設計につながる重要な知見を,電子レベルから精密に評価することを目的とする.昨年度は,基本となるNiおよびNi_3Al単結晶の格子不安定性を詳細に評価した上で,W, Cr, Bの添加の効果について検討した.本年度は,界面原子構造設計の指針となる格子不安定クライテリアマップをより多くの元素について検討するために,Ni以外の10族元素Pd, Ptならびに11族元素Cu, Ag, Auについて,[001]方向単軸引張下の格子不安定性を評価した.本研究の動機にあるように,小数の原子しか扱えない第一原理計算では,強い周期性を仮定した上で変形させるため,系が不安定となっても転位等の局所変形を生じることなく,引張方向の原子面はく離に相当する点まで応力は単調に増加した後,ピーク応力を示して低下する.このピークを「理想引張強度」として評価すると,臨界ひずみは0.23〜0.34の範囲内に分布し,そのときの応力の大小関係はほぼヤング率に応じたものとなった.一方,引張下の格子不安定性を調べると,これまでの報告同様いずれの元素も上述のピークひずみより遙かに小さいひずみで格子不安定条件に達していた.ここで,Pd, Cu, AgはNi, Ni_3Alと同じく横方向変形の等方性がくずれるBorn不安定を示していたのに対し,Pt, Auはせん断に対するB_<44>不安定となっていた.臨界ひずみ-臨界応力上に各元素の理想引張強度ならびに格子不安定となる点をプロットすると,前者は広く分布して相関が見られなかったのに対し,後者は低ひずみ側で,原点を通る同一直線上に乗るような分布を示した.