- 著者
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出口 禎子
武井 麻子
- 出版者
- 日本保健医療社会学会
- 雑誌
- 保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.50-60, 2005-06-30 (Released:2016-11-16)
最近、日本でも自然災害や犯罪などの社会問題と共に心的外傷体験が注目されるようになって来た。日本では、太平洋戦争時に疎開を経験した人は58万人以上いるといわれているが、彼らの体験の実態やその体験がその後の生活にどのような影響を与えたかはあまり明らかにされていない。そこで私達は、7人の集団疎開の体験者に、当時の生活状況やその後の人生について聞き取り調査を行った。その結果、集団疎開は合法的な監禁状態にあったことや日常的に食物の盗みが行われ、一緒に暮らしている仲間同士で疑うという安全保障感の失われた環境になっていたことがわかった。また飢餓や寂しさは誰にも共通のものであったが、主に低学年の3年生がいじめの対象になっていたこと、直接いじめに加担していなくてもいじめを目撃したことが罪悪感となって心の傷となっている人もいることがわかった。また一方では、新しい価値を見出し、集団疎開の経験を生かして社会活動に参加しているひともおり、生活レベルでその記憶は今も息づいていることが明らかになった。