- 著者
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出崎 克也
矢田 俊彦
加計 正文
- 出版者
- 自治医科大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
本研究では、膵β細胞におけるグルコース代謝情報およびホルモン情報変換装置としてのKvチャネルとTRPチャネルを介した新たなインスリン分泌制御機構を解明し、そのセンサー情報統合メカニズムを明らかにすることを目的とする。ラット膵島におけるKvチャネルの発現を検討した結果、Kv2.1チャネルのmRNA発現を検出し、二重免疫染色の結果、Kv2.1チャネルは膵β細胞に局在していた。Kvチャネル電流はグルコース濃度依存性を示し、Kv2.1チャネルブロッカーはラット分離膵島からのグルコース誘発インスリン分泌を促進し、β細胞のKv電流を抑制しグルコース刺激による[Ca^<2+>]_i上昇を増加させた。自然発症2型糖尿病GKラットは正常Wistarラットと比較して、β細胞Kv2.1の発現が増大していた。K_<ATP>チャネルサブユニットKir6.2および2型糖尿病との相関が報告されている電位依存性K^+チャネルKCNQ1の膵島発現レベルは、GKラットとWistarラットで同程度であった。単離膵β細胞のKvチャネル活性を電気生理学的に比較すると、GKラットではβ細胞Kvチャネル電流が増強していた。Kv2.1チャネルブロッカー存在下ではGKラットβ細胞におけるKvチャネル電流の増強が観察されなかった。TRPM2ノックアウトマウスは、グルコースやGLP-1刺激によるβ細胞[Ca^<2+>]_i上昇とインスリン分泌が低下していた。以上より、膵β細胞ではKv2.1チャネルやTRPM2チャネルがβ細胞インスリン分泌およびそのホルモン制御機構のセンサー分子として機能していると考えられる。また、2型糖尿病ラットβ細胞では、Kv2.1分子の発現増大によりKvチャネル電流が亢進しており、Kv2.1の発現機能亢進が糖尿病態におけるβ細胞インスリン分泌不全に関与することが示唆される。