著者
加計 正文
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

膵β細胞からのインスリン分泌にはブドウ糖濃度の上昇が重要で、ブドウ糖代謝がKATPチャネルを閉鎖することでインスリン分泌が惹起されると考えられていたが、本研究ではそれ以外の機序として、TRPM2蛋白(チャネル)が関与していることを見出している。TRPM2チャネル開口にはブドウ糖代謝も重要であるが、GLP-1という腸管ホルモンによっても開口し、インスリン分泌をさらに増強する。これらの機序は新しく、特に健常者でのインスリン分泌機構にはTRPM2の方がより重要であることを示唆している。KATPチャネルによる従来の分泌機序に対して、修正が必要であることを提案するインパクトのある研究である。
著者
出崎 克也 矢田 俊彦 加計 正文
出版者
自治医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、膵β細胞におけるグルコース代謝情報およびホルモン情報変換装置としてのKvチャネルとTRPチャネルを介した新たなインスリン分泌制御機構を解明し、そのセンサー情報統合メカニズムを明らかにすることを目的とする。ラット膵島におけるKvチャネルの発現を検討した結果、Kv2.1チャネルのmRNA発現を検出し、二重免疫染色の結果、Kv2.1チャネルは膵β細胞に局在していた。Kvチャネル電流はグルコース濃度依存性を示し、Kv2.1チャネルブロッカーはラット分離膵島からのグルコース誘発インスリン分泌を促進し、β細胞のKv電流を抑制しグルコース刺激による[Ca^<2+>]_i上昇を増加させた。自然発症2型糖尿病GKラットは正常Wistarラットと比較して、β細胞Kv2.1の発現が増大していた。K_<ATP>チャネルサブユニットKir6.2および2型糖尿病との相関が報告されている電位依存性K^+チャネルKCNQ1の膵島発現レベルは、GKラットとWistarラットで同程度であった。単離膵β細胞のKvチャネル活性を電気生理学的に比較すると、GKラットではβ細胞Kvチャネル電流が増強していた。Kv2.1チャネルブロッカー存在下ではGKラットβ細胞におけるKvチャネル電流の増強が観察されなかった。TRPM2ノックアウトマウスは、グルコースやGLP-1刺激によるβ細胞[Ca^<2+>]_i上昇とインスリン分泌が低下していた。以上より、膵β細胞ではKv2.1チャネルやTRPM2チャネルがβ細胞インスリン分泌およびそのホルモン制御機構のセンサー分子として機能していると考えられる。また、2型糖尿病ラットβ細胞では、Kv2.1分子の発現増大によりKvチャネル電流が亢進しており、Kv2.1の発現機能亢進が糖尿病態におけるβ細胞インスリン分泌不全に関与することが示唆される。