著者
前之園 幸一郎
巻号頁・発行日
2008-11-23

京都科学哲学コロキアム11月例会(2008年11月23日)における口頭発表の配付資料に、NAGOYA Repositoryへの収録のため、「0.NAGOYA Repository収録に際しての前書き」を付加したもの。
著者
前之園 幸一郎
出版者
青山学院女子短期大学
雑誌
青山学院女子短期大学総合文化研究所年報 (ISSN:09195939)
巻号頁・発行日
no.9, pp.45-73, 2001-12

『ピノッキオ』の著者コッローディ(Collodi)は,子どもたちを楽しませるためにこの作品を書いた。しかし,そこにはイタリアの国家統一直後の社会に対する作者の激しい社会批判が,作者の意図をはるかに超えて描き込まれている。さらに,われわれは,この物語の中に多くの宗教的メッセージをも読みとることができる。おそらく作者は,子ども向けのこの物語において,ことさら宗教的な問題を取り上げようなどとは考えもしなかったであろう。しかしながら,19世紀末のイタリアの文化的土壌の中から生まれた『ピノッキオ』には,キリスト教的文化の伝統がくっきりと反映され,作者の意図のあるなしにかかわらずそれが明確に刻印されることになったと考えられる。