著者
前田 充洋
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 = Studies in the humanities : Bulletin of the Graduate School of Literature and Human Sciences, Osaka City University (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.69-85, 2020

本論文の目的は、ドイツ鉄鋼業企業クルップ社の19-20世紀転換期における軍事技術代理であった、A. シンツィンガーの日本での活動を、駐日公使の報告書から明らかにすることにある。クルップ社の日本における軍需品販売やA. シンツィンガーの活動については、1920年代のものはこれまでの研究のなかで言及されてきたものの、19-20世紀転換期、とくに1895年から1902年におけるその活動については、十分に注意が向けられてこなかった。本稿では、フランス企業やイギリス企業といったクルップ社の競争相手が優勢であった、当時の日本の軍需品市場に割り込み、確保したそのシェアを守るために、A. シンツィンガーが日本でいかなる活動を展開したのかを明らかにする。そしてそれによって、19-20世紀転換期におけるクルップ社の対外事業における新たな側面を明らかにすることの一助としたい。