著者
佐野 文 白子 隆志 加藤 浩樹 天岡 望 芳野 圭介 杉山 太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1667-1672, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

われわれは7年間に3度にわたり針誤飲した統合失調症の1例を経験した.1回目は63歳時,8本の裁縫針を飲み腹痛にて来院した.CT,X線写真にて十二指腸2nd portionから後腹膜に針を認め同日緊急開腹手術を施行した.針は十二指腸壁を貫通し腸腰筋に埋没しており針を摘出した.2回目は64歳時,2本の針を誤飲し腹痛にて来院した.CT,X線写真にて左腹壁に針を認め局所麻酔下に皮膚切開し針を除去した.3回目は69歳時,腹痛にて受診した.CT,X線写真にて骨盤腔内に針を2本認めた.開腹手術にて1本はTreitz靱帯より約200cm肛門側の小腸より腸管外に抜け,さらに110cm肛門側の小腸間膜に刺さっていた.2本目は仙骨前面のS状結腸間膜に認められ,小腸から腹腔内に貫通したものと思われた.今後も誤飲の可能性あり,注意深い経過観察が必要である.
著者
加藤 浩樹 池田 奈由 杉山 雄大 野村 真利香 由田 克士 西 信雄
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.631-643, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
参考文献数
82

目的 日本では高齢化の進展とともに,循環器疾患に関連する医療と介護に要する社会保障費への国民負担がより一層増大すると予想されている。栄養政策は,国民の食生活改善を通じて循環器疾患を予防する効果が期待される。しかしその費用対効果の評価は,日本ではこれまでに行われていない。本研究は,減塩政策による循環器疾患予防に関する海外の医療経済的評価研究を概括し,日本の栄養政策の公衆衛生学的効果と社会保障費抑制効果の評価手法を構築するための基礎資料とすることを目的とした。方法 循環器疾患予防介入の医療経済的評価に関する代表的なシミュレーションモデルとして,循環器疾患政策モデル(Cardiovascular Disease Policy Model),IMPACTモデル(IMPACT Coronary Heart Disease Policy and Prevention Model),米国IMPACT食料政策モデル(US IMPACT Food Policy Model),ACEアプローチ(Assessing Cost-Effectiveness approach to priority-setting)およびPRISM(Prevention Impacts Simulation Model)を抽出した。各モデルを応用してポピュレーションアプローチによる国レベルでの減塩政策の費用と効果を評価した海外の原著論文を収集し,モデルの概要,構造および応用研究を概括した。結果 5つのモデルの構造としてマルコフ・コホートシミュレーション,マイクロシミュレーション,比例多相生命表,システム・ダイナミクスに基づき,減塩政策による食塩摂取量と血圧の低下を通じて循環器疾患の予防に至る過程がモデルに組み込まれていた。これらのモデルを応用した豪州,英国および米国の研究では,食品業界による義務または任意の市販加工食品中の食塩含有量の低減を中心に,健康増進キャンペーン,容器包装前面の食塩量表示等の減塩政策の費用と効果について,10~30年または生涯にわたる長期のシミュレーションによる評価が行われていた。考察 海外では国の減塩政策による循環器疾患予防の費用と効果について,シミュレーションモデルに基づく医療経済的評価から得た科学的根拠を発信している。日本も減塩政策を中心にシミュレーションモデルを活用し,栄養政策の立案・評価に役立てることが期待される。