著者
三澤 朱実 由田 克士 福村 智恵 田中 太一郎 玉置 淳子 武林 亨 日下 幸則 中川 秀昭 大和 浩 岡山 明 三浦 克之 岡村 智教 上島 弘嗣 HIPOP-OHP Research Group
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.97-107, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
3 1

目的:従業員食堂を中心とした長期間の食環境介入が野菜類の摂取量に及ぼす効果を検討する.対象と方法:対象は福井県現業系事業所の従業員約1,200人(19–61歳)である.野菜摂取量を増加させるため,日本型の3要素(主食・主菜・副菜(野菜))を組み合わせた食事の摂取を推進した.適切な食物選択を導くための食環境整備として,従業員食堂の全ての献立表示を3色で示した(3要素順に,黄色・赤色・緑色).食事の代金清算時に,3要素を組み合わせて食事を選択するよう栄養教育を実施した(適切選択者).同時に適切選択者の割合も評価した.介入前後に,半定量食物摂取頻度調査法に準じた質問紙調査を実施した.野菜類の摂取頻度と摂取目安量を質問し,1人1日当たりの推定摂取量の平均値を求めた.結果:適切選択者は,介入1年後63.5%から,介入2年後82.1%(p<0.001),介入3年後80.0%(p<0.001)へと有意に増加した.介入3年後では,朝食時(p<0.001),昼食時(p<0.001),夕食時(p=0.011)の野菜,野菜ジュース(p=0.030)の推定摂取量は,有意に増加した.漬物は有意に減少した(p=0.009).これにより野菜類摂取量は,男性では167.3 gから184.6 g,女性では157.9 gから187.7 gに増加したと推定された.考察:従業員食堂を中心とした長期間の食環境介入によって(3年間),野菜の推定摂取量の増加,漬物の推定摂取量の減少が認められ,野菜類の摂取量に望ましい効果が示された.
著者
樫野 いく子 溝上 哲也 由田 克士 上西 一弘 長谷川 祐子 斉藤 裕子 青柳 清治 倉貫 早智 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.445-450, 2018 (Released:2018-07-26)
参考文献数
12

国民一人ひとりが健康的な食品を特定し、選択することは容易ではない。近年、栄養素密度に基づき食品をランク付けする栄養プロファイリングモデルが各国で開発されている。しかし、わが国ではこのような概念による食品の評価は十分に行われていない。そこで、日本食品標準成分表2015年版に掲載された食品を対象に食品のランク付けを行った。積極的な摂取が推奨される9つの栄養素と、摂取量を制限すべき3つの栄養素を用いて高栄養素食品指数9.3 Nutrient-rich food index 9.3(NRF9.3)を各食品100kcal当たりで算出した。その結果、藻類、野菜類、きのこ類、豆類の食品群順にNRF9.3が高かった。また、同食品群内でも栄養価の高い食品と栄養価の低い食品を区別することができた。食品を購入する際に、栄養価のより高い食品を選択する、あるいは同食品群内で代替食品を選択するにあたり、本指数を参照することは有用であるかもしれない。
著者
池上 幸江 山田 和彦 池本 真二 倉田 澄子 清水 俊雄 藤澤 由美子 由田 克士 和田 政裕 坂本 元子
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.285-302, 2008-12-10
被引用文献数
3 7

食品成分表示・栄養教育検討委員会ではこれまで栄養成分表示に関する調査を行い,報告書として発表し,また栄養成分表示や健康強調表示に関するシンポジウムなどを開催してきた。前期の委員会では栄養成分表示と健康強調表示に関する意識調査を多様な対象者について行った。今期はこの調査結果を以前の調査と比較しながら,報告書としてまとめることとした。また,今後は新たな調査も加えて,栄養教育の観点から栄養成分表示や健康強調表示のあり方について,一定の見解をまとめた。本調査では,栄養成分表示,健康強調表示については,特定保健用食品や栄養機能食品,「いわゆる健康食品」について,認知,利用,情報源などについて調査した。その結果,<br>(1) 栄養成分表示は広く見られており,健康維持や増進のために利用されている。しかし,現状の表示は分かりにくく,また対象食品が限られていることから,消費者は改善を望んでいる。これらの結果は前回調査と同様であった。<br>(2) 特定保健用食品の認知度はきわめて高く,利用もされていた。とくに若い世代,学生での認知や利用が高いが,高齢者や生活雑誌読者での利用は低かった。他方,関心のある保健の用途は「体に脂肪が付きにくい」や「お腹の調子を整える」,「腸内環境を整える」などであった。しかし,保健の用途の関心と成分の関連には十分な認識がなく,消費者への情報提供が十分ではないと思われた。<br>(3) 栄養機能食品に対する認知や利用は特定保健用食品に比べると低かったが,世代間の傾向は(2)の特定保健用食品と同様であった。<br>(4)「いわゆる健康食品」の利用については特定保健用食品の利用とは異なる傾向を示した。すなわち年齢階層による差異が少なく,高齢者による利用も高く,特定保健用食品とは異なっていた。<br> 「いわゆる健康食品」に関する情報源はテレビや知人・友人からのものが多く,科学的な根拠の入手が困難な状況にあることを反映している。今後「いわゆる健康食品」の有用性や安全性の確保についてどのような制度を作るかが課題と思われる。
著者
野末 みほ 猿倉 薫子 由田 克士
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.36-41, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

エネルギー及び栄養素摂取量を把握するために食事調査が用いられる。ほとんどの思い出し調査の方法では,食事の記録の際,目安量が用いられる。そのため,目安量から実際に摂取した重量を推定する必要がある。しかしながら,各書籍や栄養計算ソフトに収載されている食品の目安量は様々であり,特に野菜,果物,魚,肉などの生鮮食品の重量についての研究は少ない。従って,本研究では,青果物の規格の面から,階級やその重量等が地域によって,どの程度異なるのかを明らかにすることを目的とした。さらに,食事調査において,青果物を目安量から重量に換算する際の問題点や課題等について検討した。青果物により階級の数及び名称は複数にわたり,なすでは13の階級,いちごでは28の階級があった。さらに,各階級における重量等にも幅があり,いちごのMにおいては,下限の最小値が7g,最大値が74gであった。これらのことから,食事調査において,目安量によって食品が記録された場合に,対象者と調査員,さらに調査員の間で,その目安量に関して共通の認識を持っていることが確認できることが望ましいと考えられる。実際の青果物の摂取量を過大あるいは過小に評価してしまうことを避けるためには,目安量の設定,つまりどの目安をどの重量で採用するのかを十分に配慮する必要がある。(オンラインのみ掲載)
著者
境田 靖子 岩橋 明子 辻本 洋子 福村 智恵 由田 克士
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.101-110, 2022 (Released:2022-02-18)
参考文献数
29

妊娠期の食品摂取状況と児の出生体重への影響を検討するために、大阪府・奈良県・福岡県の3地区において、2015年4月~2016年8月の間に3~4カ月児健康診査を受診する予定の母親1,302人を対象に、母親の身体状況と喫煙、飲酒習慣、食品摂取状況等および児の身体状況について質問紙調査を実施した。出生体重2,500g以上と低出生体重児の2群で比較すると、低出生体重児群は母親の非妊娠時および出産時体重、非妊娠時BMI、体重増加量、出生児の身長と在胎週数が低く、喫煙率が高かった。さらに、食品摂取頻度と摂取目安量から算出した摂取得点では、妊娠前と妊娠中の両期間で低出生体重児群は野菜料理摂取得点が低く、妊娠前の野菜料理摂取得点および牛乳・乳製品摂取得点が低い群は低出生体重児が出生するオッズ比が1.69、1.58と高かったことから、低出生体重児の抑制に妊娠前からの適切な食事管理、特に野菜摂取の指導の必要性が示唆された。
著者
池田 奈由 由田 克士 西 信雄
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.365-372, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
23

【目的】国内における対人の栄養指導の効果を評価した文献をレビューし,栄養指導の効果を把握した。【方法】成人の生活習慣改善を目的とする栄養指導の効果を縦断研究の測定データで定量的に評価した査読付き論文で,2010年1月~2020年12月に発表されたものを研究対象とした。CiNii ArticlesとPubMedによるスコーピングレビューを行い,各文献の研究方法と主な結果を要約した。【結果】15件の文献を採用した(和文5件,英文10件)。研究設定は地域4件,職域1件,医療機関10件であった。研究参加者数の中央値は108人,研究参加者の主な特徴は糖尿病患者と地域在住高齢者であった。臨床試験が4件(うち無作為化比較試験3件),非無作為の群間比較研究が7件,全員に同一の栄養指導を行った研究が4件であった。評価期間では3か月と6か月が最も多く,主な評価指標は体重,食事摂取状況,血液検査値,生活の質であった。14件で栄養指導の効果が認められた。栄養指導を複数回行うことの重要性を示す研究もあった。【結論】様々な対人の栄養指導についてその効果が示されたが,出版バイアスの可能性に留意する必要がある。今後,研究機関が地域と職域の関係者と連携できる仕組みの構築や人材の確保を図り,健康な成人への栄養指導の効果について,無作為割付による定量的評価研究をより一層積極的に推進しデータを蓄積する必要がある。
著者
加藤 浩樹 池田 奈由 杉山 雄大 野村 真利香 由田 克士 西 信雄
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.631-643, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
参考文献数
82

目的 日本では高齢化の進展とともに,循環器疾患に関連する医療と介護に要する社会保障費への国民負担がより一層増大すると予想されている。栄養政策は,国民の食生活改善を通じて循環器疾患を予防する効果が期待される。しかしその費用対効果の評価は,日本ではこれまでに行われていない。本研究は,減塩政策による循環器疾患予防に関する海外の医療経済的評価研究を概括し,日本の栄養政策の公衆衛生学的効果と社会保障費抑制効果の評価手法を構築するための基礎資料とすることを目的とした。方法 循環器疾患予防介入の医療経済的評価に関する代表的なシミュレーションモデルとして,循環器疾患政策モデル(Cardiovascular Disease Policy Model),IMPACTモデル(IMPACT Coronary Heart Disease Policy and Prevention Model),米国IMPACT食料政策モデル(US IMPACT Food Policy Model),ACEアプローチ(Assessing Cost-Effectiveness approach to priority-setting)およびPRISM(Prevention Impacts Simulation Model)を抽出した。各モデルを応用してポピュレーションアプローチによる国レベルでの減塩政策の費用と効果を評価した海外の原著論文を収集し,モデルの概要,構造および応用研究を概括した。結果 5つのモデルの構造としてマルコフ・コホートシミュレーション,マイクロシミュレーション,比例多相生命表,システム・ダイナミクスに基づき,減塩政策による食塩摂取量と血圧の低下を通じて循環器疾患の予防に至る過程がモデルに組み込まれていた。これらのモデルを応用した豪州,英国および米国の研究では,食品業界による義務または任意の市販加工食品中の食塩含有量の低減を中心に,健康増進キャンペーン,容器包装前面の食塩量表示等の減塩政策の費用と効果について,10~30年または生涯にわたる長期のシミュレーションによる評価が行われていた。考察 海外では国の減塩政策による循環器疾患予防の費用と効果について,シミュレーションモデルに基づく医療経済的評価から得た科学的根拠を発信している。日本も減塩政策を中心にシミュレーションモデルを活用し,栄養政策の立案・評価に役立てることが期待される。
著者
塚田 久恵 三浦 克之 城戸 照彦 佐伯 和子 川島 ひろ子 伊川 あけみ 西 正美 森河 裕子 西条 旨子 中西 由美子 由田 克士 中川 秀昭
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1125-1134, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的 乳幼児期の肥満が成人後の肥満にどの程度結びつくかについての日本人でのデータは乏しい。本研究は乳幼児期(3 か月,12か月,3 歳)の肥満度と成人時(20歳)の肥満度との関連を明らかにし,乳幼児健康診査(以下,健診)時の肥満指導のための基礎資料を得ることを目的とする。方法 石川県某保健所管内において1968-1974年に出生した20歳男女を対象として行われた成年健康調査を受診した男女のデータと,同管内における 3 か月,12か月,3 歳の乳幼児健診データとのレコード・リンケージを行い,全ての健診を受診して20年間追跡できた2,314人(男1,080人,女1,234人)を対象とし,乳幼児期と成人時の肥満度の関連について分析した。成績 各月齢・年齢のカウプ指数(または body mass index (BMI))相互間の相関を見たところ,20歳時の BMI と 3 か月時・12か月時・3 歳時のカウプ指数との間ではいずれも有意な正相関が認められ,中で最も強い相関を示したのは 3 歳時カウプ指数とであった(男 r=0.33, P<0.001,女 r=0.42, P<0.001)。乳幼児期の肥満度カテゴリー別に20歳時の肥満者(BMI 25 kg/m2 以上)の割合をみると,3 歳時カウプ指数15未満の者では男で4.6%,女で1.0%であったが,3 歳時カウプ指数18以上の者では男で29.1%,女で29.5%にのぼり,カウプ指数15未満の者に比べ男で6.3倍,女で29.5倍の率となった。3 か月時および 3 歳時におけるカウプ指数が平均未満か以上かのカテゴリー別に20歳時に肥満になっていた割合を検討したところ,3 か月時のカウプ指数が平均以上か未満かを問わず,3 歳時のカウプ指数が平均以上であったもので割合が高かった。結論 乳幼児期の肥満度は20歳時の肥満度と強い関連があったが,3 歳時との関連が最も強かった。3 歳時に肥満であった児は成人時にも肥満である率が約30%と評価され,本データは 3 歳児健診における将来の肥満のアセスメントに利用できると考えられる。