著者
佐野 文 白子 隆志 加藤 浩樹 天岡 望 芳野 圭介 杉山 太郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1667-1672, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

われわれは7年間に3度にわたり針誤飲した統合失調症の1例を経験した.1回目は63歳時,8本の裁縫針を飲み腹痛にて来院した.CT,X線写真にて十二指腸2nd portionから後腹膜に針を認め同日緊急開腹手術を施行した.針は十二指腸壁を貫通し腸腰筋に埋没しており針を摘出した.2回目は64歳時,2本の針を誤飲し腹痛にて来院した.CT,X線写真にて左腹壁に針を認め局所麻酔下に皮膚切開し針を除去した.3回目は69歳時,腹痛にて受診した.CT,X線写真にて骨盤腔内に針を2本認めた.開腹手術にて1本はTreitz靱帯より約200cm肛門側の小腸より腸管外に抜け,さらに110cm肛門側の小腸間膜に刺さっていた.2本目は仙骨前面のS状結腸間膜に認められ,小腸から腹腔内に貫通したものと思われた.今後も誤飲の可能性あり,注意深い経過観察が必要である.
著者
辻 量平 杉原 奈津子 寺林 大史 森腰 恵 大下 裕夫 天岡 望 種村 廣巳
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>がん患者に対するリハビリテーション(以下リハ)は多くの施設で提供され、がん拠点病院や緩和ケア病床、ホスピスでの活動も活発である。当院のような施設基準を有さない民間病院であっても、がん拠点病院の指導を受けながら、がん緩和ケアについてより質の高い医療とケアを提供できるかを模索することは大変重要なことである。今回、術中に腹膜播種などが確認できバイパスのみとなった切除不能がん患者に対し、周術期リハチームの方から、緩和ケアチームに対し予後も含めた情報提供を行い、周術期リハチームと緩和ケアチームがともに早期介入ができ、良好なかたちで在宅へ移行できた症例を経験したので、当院の今後の方針も含めて報告する。なお、ご本人・ご家族に本件の主旨を口頭および当院所定の文書で説明し、署名による同意を得た上で病院長の許可も頂いた。<br><b>【方法】 </b>症例は86歳男性。入院1か月前に食欲不振、嘔吐で近医受診し、当院紹介され、胃前庭部癌と診断され手術となった。手術1週間前のカンファランスにて手術方針や告知状況など情報を共有した。術前リハビリにより患者とのコミュニケーションを図り、患者が早い時期に在宅への移行を希望していることを知った。開腹の結果、腹膜播種が確認できたため、胃切除不能、胃空腸吻合に終わった。予後は3~6ヶ月との情報を得た。手術翌日に緩和ケアチームの早期介入を依頼した。<br><b>【結果】 </b>緩和ケアチームの早期介入によって術後の苦痛緩和が図れ、周術期リハは効果的に進んだ。術後の食欲不振、摂食障害は緩和ケアチームの一員である管理栄養士による食事相談や内容変更により術後第14病日には全量摂取可能となった。患者からの在宅復帰への強い希望もあり周術期リハの実施と緩和ケアチームとの連携により、高齢でしかも切除不能胃癌患者の術後としては比較的早い術後26病日に退院できた。なお地域連携の看護師やMSWによって術後19病日から退院や退院後調整が行われた。<br><b>【考察】 </b>当院では平成22年11月より緩和ケアチームが発足し、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、MSW、訪問看護師、理学療法士、作業療法士で構成されている。このような施設は少なくなく、がん緩和医療への質の高いリハの需要は高まっている。今回、進行胃癌患者に対し、術前からのリハを通してコミュニケーションがとれたこと、周術期に手術情報、予後情報、その他の患者情報をがん緩和ケアに携わる他職種と理学療法士とで共有でき、余命短い本患者が求める在宅へという希望を実現するため、早い時期から多職種が同じベクトルでそれぞれの専門職としての役割を果たすことで、患者の希望である早期在宅へ誘導でき、ひいては患者のQOLに益したものと考えられる。このような進行がん患者をケアするにあたり、それぞれの専門職でのチーム医療がいかに重要であるか痛感させられた1症例である。今後も本症例での経験を生かし、がん治療の早期から多職種が情報を共有することで、患者のQOLを高める実績づくりを行っていきたい。
著者
田中 香織 天岡 望 西科 琢雄
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1427-1430, 2017 (Released:2017-12-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

毛巣洞に対する根治術としては洞の完全切除が必要であるが,単純切除縫合では再発も多く,創離開することも少なくない.これに対して今まで様々な形成術が報告されているが,今回われわれはW形成術を採用し良好な結果を得た症例を経験したので報告する.症例は22歳の男性.数年前からの仙骨部の腫瘤,排膿,出血を主訴に当院を受診した.仙骨部に2箇所の開口部を有する約7cmの瘻孔を確認した.毛巣洞と診断し全身麻酔下で手術を施行した.皮膚切開は瘻孔部を囲む稲妻型とした.瘻孔を完全に切除後,皮弁形成のために左右の大臀筋筋膜上で十分に皮下脂肪層を剥離授動した.皮膚縫合は緊張なく施行可能で,術後8日目に退院した.W形成術は切除後の縫合に無理をきたすことなく,また毛巣洞の成因である臀裂の回転運動による瘻孔の内部への入り込みを防ぎ,発生原因を根本的に取り除く方法として,合理的な術式であると考えられる.