著者
池田 奈由 西 信雄
出版者
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

国民健康・栄養調査の協力率は長期的に低下傾向にあり、国民全体の特徴を適切に反映した統計データが得られていない可能性があることから、非協力者バイアスとその修正方法について検討した。その結果、世帯属性等により世帯別の協力状況に差があるとともに、人口当たり協力率は低下傾向で、性・調査票別に差があることが示された。また、喫煙率の非協力者バイアスは限定的である可能性が示された。さらに、多重代入法を用いて、喫煙状況別の上半身肥満率の非協力者バイアスを修正できる可能性が示された。以上の結果を参考に、少なくとも現状の協力率を維持し、統計手法の活用により非協力者バイアスを最小限に止める方策を検討する必要がある。
著者
池田 奈由 由田 克士 西 信雄
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.365-372, 2021-12-01 (Released:2022-02-08)
参考文献数
23

【目的】国内における対人の栄養指導の効果を評価した文献をレビューし,栄養指導の効果を把握した。【方法】成人の生活習慣改善を目的とする栄養指導の効果を縦断研究の測定データで定量的に評価した査読付き論文で,2010年1月~2020年12月に発表されたものを研究対象とした。CiNii ArticlesとPubMedによるスコーピングレビューを行い,各文献の研究方法と主な結果を要約した。【結果】15件の文献を採用した(和文5件,英文10件)。研究設定は地域4件,職域1件,医療機関10件であった。研究参加者数の中央値は108人,研究参加者の主な特徴は糖尿病患者と地域在住高齢者であった。臨床試験が4件(うち無作為化比較試験3件),非無作為の群間比較研究が7件,全員に同一の栄養指導を行った研究が4件であった。評価期間では3か月と6か月が最も多く,主な評価指標は体重,食事摂取状況,血液検査値,生活の質であった。14件で栄養指導の効果が認められた。栄養指導を複数回行うことの重要性を示す研究もあった。【結論】様々な対人の栄養指導についてその効果が示されたが,出版バイアスの可能性に留意する必要がある。今後,研究機関が地域と職域の関係者と連携できる仕組みの構築や人材の確保を図り,健康な成人への栄養指導の効果について,無作為割付による定量的評価研究をより一層積極的に推進しデータを蓄積する必要がある。
著者
加藤 浩樹 池田 奈由 杉山 雄大 野村 真利香 由田 克士 西 信雄
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.631-643, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
参考文献数
82

目的 日本では高齢化の進展とともに,循環器疾患に関連する医療と介護に要する社会保障費への国民負担がより一層増大すると予想されている。栄養政策は,国民の食生活改善を通じて循環器疾患を予防する効果が期待される。しかしその費用対効果の評価は,日本ではこれまでに行われていない。本研究は,減塩政策による循環器疾患予防に関する海外の医療経済的評価研究を概括し,日本の栄養政策の公衆衛生学的効果と社会保障費抑制効果の評価手法を構築するための基礎資料とすることを目的とした。方法 循環器疾患予防介入の医療経済的評価に関する代表的なシミュレーションモデルとして,循環器疾患政策モデル(Cardiovascular Disease Policy Model),IMPACTモデル(IMPACT Coronary Heart Disease Policy and Prevention Model),米国IMPACT食料政策モデル(US IMPACT Food Policy Model),ACEアプローチ(Assessing Cost-Effectiveness approach to priority-setting)およびPRISM(Prevention Impacts Simulation Model)を抽出した。各モデルを応用してポピュレーションアプローチによる国レベルでの減塩政策の費用と効果を評価した海外の原著論文を収集し,モデルの概要,構造および応用研究を概括した。結果 5つのモデルの構造としてマルコフ・コホートシミュレーション,マイクロシミュレーション,比例多相生命表,システム・ダイナミクスに基づき,減塩政策による食塩摂取量と血圧の低下を通じて循環器疾患の予防に至る過程がモデルに組み込まれていた。これらのモデルを応用した豪州,英国および米国の研究では,食品業界による義務または任意の市販加工食品中の食塩含有量の低減を中心に,健康増進キャンペーン,容器包装前面の食塩量表示等の減塩政策の費用と効果について,10~30年または生涯にわたる長期のシミュレーションによる評価が行われていた。考察 海外では国の減塩政策による循環器疾患予防の費用と効果について,シミュレーションモデルに基づく医療経済的評価から得た科学的根拠を発信している。日本も減塩政策を中心にシミュレーションモデルを活用し,栄養政策の立案・評価に役立てることが期待される。
著者
安藤 雄一 池田 奈由 西 信雄 田野 ルミ 岩崎 正則 三浦 宏子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.33-41, 2021-01-15 (Released:2021-01-30)
参考文献数
18

目的 歯科疾患実態調査(以下,歯調)では,協力者数の減少傾向が懸念されている。2016(平成28)年調査では従来の口腔診査に質問紙調査が加わり,口腔診査への協力の有無を問わず質問紙調査に回答すれば協力者とみなされることになった。本研究は,平成28年歯調の協力状況を把握し,歯調への協力に関連する生活習慣要因を明らかにすることを目的とした。方法 平成28年歯調と親標本である平成28年国民健康・栄養調査(以下,栄調)のレコードリンケージを行い,分析に用いた。分析対象は,歯調対象地区における20歳以上の栄調協力者7,997人とした。歯調の質問紙調査および口腔診査ならびに栄調の身体状況調査(うち血圧測定および血液検査),栄養摂取状況調査(うち歩数測定)および生活習慣調査の協力者割合を,性・年齢階級(20~59歳,60歳以上)別に算出した。協力者割合は,栄養摂取状況調査,身体状況調査および生活習慣調査のいずれかに協力した人数を分母とし,各調査および調査項目に協力した人数を分子とした。歯調への協力と生活習慣要因(喫煙習慣の有無[基準値:あり],歯の本数[28歯以上],歯科検診受診の有無[なし],睡眠による休養[とれていない])との関連について,性・年齢階級別に多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を求めた。結果 歯調対象地区における栄調協力者7,997人の協力者割合は,身体状況調査89%(血圧測定44%,血液検査41%),栄養摂取状況調査83%(歩数測定78%),生活習慣調査98%,歯調質問紙調査65%,口腔診査41%であった。血圧測定と血液検査の協力者の95%以上が,歯調の質問紙調査および口腔診査に協力した。歯調への協力と有意な正の相関が見られた生活習慣要因は,喫煙習慣なし(20~59歳男性の口腔診査,20~59歳女性の質問紙調査と口腔診査),歯科検診受診あり(60歳以上女性の質問紙調査),睡眠による休養がとれている(20~59歳男性の口腔診査)であった。20~59歳男性を除き,歯数20未満と口腔診査への協力との間に有意な負の相関が見られた。結論 栄調協力者の約3分の2が歯調の質問紙調査に協力し,口腔診査の協力者割合は血圧測定および血液検査の協力者割合とほぼ一致した。女性を中心に,歯の本数,喫煙,歯科検診受診といった口腔に関する生活習慣要因と歯調への協力との間に相関がみられた。
著者
安藤 雄一 池田 奈由 西 信雄 田野 ルミ 岩崎 正則 三浦 宏子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-085, (Released:2020-12-19)
参考文献数
18

目的 歯科疾患実態調査(以下,歯調)では,協力者数の減少傾向が懸念されている。2016(平成28)年調査では従来の口腔診査に質問紙調査が加わり,口腔診査への協力の有無を問わず質問紙調査に回答すれば協力者とみなされることになった。本研究は,平成28年歯調の協力状況を把握し,歯調への協力に関連する生活習慣要因を明らかにすることを目的とした。方法 平成28年歯調と親標本である平成28年国民健康・栄養調査(以下,栄調)のレコードリンケージを行い,分析に用いた。分析対象は,歯調対象地区における20歳以上の栄調協力者7,997人とした。歯調の質問紙調査および口腔診査ならびに栄調の身体状況調査(うち血圧測定および血液検査),栄養摂取状況調査(うち歩数測定)および生活習慣調査の協力者割合を,性・年齢階級(20~59歳,60歳以上)別に算出した。協力者割合は,栄養摂取状況調査,身体状況調査および生活習慣調査のいずれかに協力した人数を分母とし,各調査および調査項目に協力した人数を分子とした。歯調への協力と生活習慣要因(喫煙習慣の有無[基準値:あり],歯の本数[28歯以上],歯科検診受診の有無[なし],睡眠による休養[とれていない])との関連について,性・年齢階級別に多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を求めた。結果 歯調対象地区における栄調協力者7,997人の協力者割合は,身体状況調査89%(血圧測定44%,血液検査41%),栄養摂取状況調査83%(歩数測定78%),生活習慣調査98%,歯調質問紙調査65%,口腔診査41%であった。血圧測定と血液検査の協力者の95%以上が,歯調の質問紙調査および口腔診査に協力した。歯調への協力と有意な正の相関が見られた生活習慣要因は,喫煙習慣なし(20~59歳男性の口腔診査,20~59歳女性の質問紙調査と口腔診査),歯科検診受診あり(60歳以上女性の質問紙調査),睡眠による休養がとれている(20~59歳男性の口腔診査)であった。20~59歳男性を除き,歯数20未満と口腔診査への協力との間に有意な負の相関が見られた。結論 栄調協力者の約3分の2が歯調の質問紙調査に協力し,口腔診査の協力者割合は血圧測定および血液検査の協力者割合とほぼ一致した。女性を中心に,歯の本数,喫煙,歯科検診受診といった口腔に関する生活習慣要因と歯調への協力との間に相関がみられた。