著者
加部 隆史
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会講演資料集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.352-353, 2009

労働安全衛生法第28条の2は,リスクアセスメントとリスク低減を求めている.通達によりこの実践方法をJIS規格を引用して示しているが,源則として国際機械安全規格の体系が示す隔離の原則・停止の原則・エネルギゼロの原則を示している.これは従来の労働安全による人への教育から,因果決定論の源としての機械の危険源を対処する方向転換である.危険な機械を囲い,動きを止めるという原理に基づいている為に機械の定常運転では有効だが起動停止を繰り返しユネイトな情報伝達が中断してしまう非定常時の作業での問題は必ずしも解決出来ない.技術を周囲環境取巻く周囲環境の多様化から,近年生産現場では人と機械の協働を可能とする要素技術が開発され,同時に一般消費者を対象としたサービスロボットが産業化に向けて準備されている.
著者
加部 隆史
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.140-147, 2009-06-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

<p>生産現場での人への危害は機械の危険源と人が同居し発生する.従来の労働安全は人に依存し,作業者の安全を確保するために,主として作業者への教育を重視し,事故が起きると作業者の不注意とされることが多かった.機械の確定的危険源にアプローチし,危険源を除去あるいはリスク低減することで安全を達成しようとするのが,機械安全の基本であり,この場合,事故が起きても人を責めないことが原則である.この機械安全におけるリスクベースド・アプローチの方法論も近年拡大・進歩しているために,グローバルな観点からこれらの概念ならびにそれに関連する安全要素技術の現状を整理し,時代の要求に則した対応が,各ステークホルダに求められてくる.隔離の原則・停止の原則に加え,これから人と機械の協働を実現するためには,新たに共存の原則というものが必要とされてきているが,基本は予防概念としての安全設計を適切に低減されたリスクまで事前に行い,機械設計者がやるべきことを成した後の残留リスクによる事故は社会が許容し,被災者は保険により救済・補償されるということである.科学技術の進歩に応じた社会制度の整備も必要とされる.</p>
著者
加部 隆史 門脇 敏 和田 有司 野田 和俊 天野 久徳 梅崎 重夫
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.145-154, 2010-06-15 (Released:2016-09-30)
参考文献数
15

爆発性雰囲気においては,可燃物・着火源・酸素の結合により危険状態となり,これを放置しておくと危害に繋がる.爆発の予防と防護の基本概念および方法論を示す欧州規格EN1127-1 では,国際標準化機構(ISO) が定めるリスクアセスメントの原則を実践し,その結果に基づきリスク低減の方法論を提示している.この方法では,リスク低減の原則は第一義的に予防であり,爆発性雰囲気を生成しない条件作りをし,それでも危険が除去できない場合は,第二義的に防護として,安全装置を使用することを述べている.従来の電気的着火源以外に,非電気による機械的着火源,粉じん等が同等な危険源として列挙されている.本稿は,これらの考えの基となる合理的体系論としてのEN1127-1 の予防と防護-基本概念と方法論の概説および考察をしたうえで,今後の国内における爆発性雰囲気での課題を問題提起する.