著者
勝又 正直
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.294-306, 2010-12-31 (Released:2012-03-01)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

ある看護系学部の社会学教員の体験から次のような経験知が得られる.看護師は患者を人間として理解し,その理解に基づいて看護しようとする.この目的のために,看護学では他の学問のさまざまな概念を用いて,患者の問題を看護診断として分類している.さらに,看護理論家は他の学問のさまざまな理論を導入して看護を1つの人間学へと高めようとしている.医療社会学は,医療の世界,あるいは医療が社会においてはたす機能に焦点をあてている.それに対して,看護は,患者を理解し看護するために,患者が属している社会に関心をもつ.看護学生に必要なのは,患者を人間として理解するための,社会学的想像力である.その社会学的想像力は,特殊な応用社会学である医療社会学よりも,むしろ普通の元来の社会学によってより養われるのである.
著者
勝又 正直
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学看護学部紀要 (ISSN:13464132)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.47-53, 1999

ヴェーバーの「宗教社会学論集」のなかの「世界宗教の経済倫理」の諸論文はこれまで「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を前提にして読まれてきた。その結果、プロテスタンティズム論文のテーゼの状況証拠の論文集と見なされてきた。しかし両者をよく読むと、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の方には政治領域への言及の欠如があることがわかる。初版の注からその欠如を埋めるのがイエリネックの「人権宣言論」であると推測される。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」」と「人権宣言論」の両者をセットにして読むとはじめて、プロテスタンティズムの政治経済双方への影響が見えてくる。と同時に、「宗教社会学論集」が東洋的家産制批判であるばかりか、ドイツ帝国の批判であり、真の市民社会創造の可能性を探った論文であることが了解されるのである。