著者
勝田 聡
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.135-152, 2017 (Released:2020-07-10)

本研究は,日本の性犯罪者が性犯罪に至る過程を具体的に明らかにすることを目的とした。そのために,保護観察付執行猶予の判決を受け,または仮釈放された33人の保護観察中の性犯罪者が,性犯罪に関する専門的処遇プログラムにおいて記入したワークシートの自由記載と発言の内容を,グラウンデッド・セオリーの方法を参考にして,質的に分析した。分析の結果,15のカテゴリからなるモデルが見いだされた。そのモデルには,性犯罪者の生活上のつまずきや認知的要因といった,性犯罪に至る鍵となる要因が含まれていた。本研究の結果,このつまずきが重大なライフイベントであることが少なくなく,複数のつまずきが重なることが希ではないことが見いだされた。さらに,本研究の結果から,つまずきから,つまずきへの対処,不安定な心理状態,つまずきへのネガティブな捉え方のサイクルが誘発され,その後の認知的要因に結びついていることが明らかとなった。加えて,本研究の結果を踏まえ,性犯罪者のアセスメントと処遇の実践上の示唆について論じた。
著者
勝田 聡
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.26, pp.203-216, 2013-03

本書は、元犯罪者に対する面接調査の結果を、更生した人と更生していない人に分類して比較分析し、犯罪をした人の更生の要因について考察したものである。本書では、1)犯罪をした人の更生とは、再犯をしない状況の持続であり、更生への肯定的な動機付けや自己効力感を持つことが重要である、2)犯罪をした人が犯罪について言い訳や正当化をすることは、一般に、更生の妨げになるとされていたが、更生を促進する側面がある、3)言い訳や正当化には文化的な背景がある、の3点が論じられている。日本の保護観察は、保護観察対象者の改善更生を目的とする社会内処遇であるが、肯定的な動機付けや自己効力感は必ずしも重視されていない。また、これまで、言い訳や正当化の機能や文化的背景についても十分に論じられていない。本稿においては、本書の概要をまとめた上で、本書で指摘されている上記の3つの観点を踏まえ、日本の保護観察のあり方について考察する。
著者
羽間 京子 岡村 達也 勝田 聡 田中 健太郎
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、保護観察中の性犯罪者の性的認知のゆがみを分析するために、日本の保護観察所が実施している質問紙を用いた調査と事例研究を行った。保護観察中の性犯罪者と犯罪歴のない一般成人の質問紙への回答結果の分析の結果、性犯罪者群のほうが、合理化やわい小化などの性的認知のゆがみが大きいことが明らかとなった。また、財産犯との比較から、性犯罪者のほうが性的認知のゆがみが大きいことが示された。以上から、本研究は、それぞれの性犯罪者が有する性的認知のゆがみの種類や特徴を踏まえた保護観察処遇の重要性を指摘した。