著者
生野 公貴 北別府 慎介 梛野 浩司 森本 茂 松尾 篤 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.485-491, 2010-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,脳卒中患者に対する1時間の末梢神経電気刺激(PSS)と課題指向型練習の組み合わせが上肢機能に与える影響を検討することである。【方法】脳卒中患者3名をベースライン日数を変化させた3種のABデザインプロトコルに無作為に割り付け,ベースライン期として偽刺激(Sham)治療,操作導入期としてPSS治療を実施した。1時間のSham治療およびPSS治療後に課題指向型練習としてBox and Block Test(BBT)を20回行い,練習時の平均BBTスコアの変化を調査した。さらに,PSS治療後24時間後にBBTを再評価した。【結果】全症例Sham治療後と比較して,PSS治療後に平均BBTスコアが改善傾向を示した {症例1:+4.9(p < ;0.05),症例2:+3.1,症例3:+5.7(p < 0.05)}。全症例の24時間後のBBTスコアが維持されていた。また,PSSによる有害事象はなく,PSSの受け入れは良好であった。【結論】1時間のPSSは課題指向型練習の効果を促進させ,24時間後もその効果が維持される可能性がある。
著者
小嶌 康介 中村 潤二 北別府 慎介(OT) 梛野 浩司 庄本 康治
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会 第50回近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.78, 2010 (Released:2010-10-15)

【目的】筋電誘発電気刺激(ETMS)は脳卒中後の運動麻痺の改善を目的として近年試みられている治療であり,随意運動時に生じる筋放電を表面電極を介して測定し,設定された閾値を越えると電気刺激が誘発され筋収縮を引き起こす治療方法である。海外では脳卒中患者の手関節背屈筋群に対してETMSを実施した研究報告が散見されるがシステマティック・レビューでもETMSの治療効果はいまだ確立されておらず,本邦での治療報告はほとんどないのが現状である。一方で脳卒中患者の麻痺側上肢に対する他のアプローチとしてミラーセラピー(MT)による治療報告が散見される。MTでは,鏡像による視覚フィードバックにより脳へ錯覚入力を与え,その錯覚により運動感覚を生成し,運動前野や運動野の活性化をもたらし,運動麻痺を改善させることが考えられている。しかしMTの先行研究も多くは小サンプルであり,治療効果が確立されるには至っていない。ETMSとMTは,それぞれ異なる形で大脳皮質の損傷側の神経ネットワークの再構築にアプローチしており,両者を組み合わせることでより高い治療効果をもたらす可能性が考えられる。そこで今回,脳卒中患者の麻痺側上肢に対してETMSとMTの組み合わせ治療(ETMS-MT)を実施し,その臨床変化を捉え考察することとする。 【方法】対象は同意の得られた脳卒中患者2症例とした。症例1は脳梗塞発症後86日を経過した84歳の左片麻痺女性で研究参加時の運動麻痺はBrunnstrom Recovery Stage(BRS)にて,上肢stage_III_,手指stage_IV_であった。症例2は脳梗塞発症後111日を経過した72歳の左片麻痺男性でBRSは上肢stage_V_,手指stage_IV_であった。両症例とも口頭指示を理解し,著明な認知機能低下や高次脳機能障害はみられなかった。 ETMS-MTは椅子座位,両前腕を台上にのせた肢位で実施した。電極を設置した状態で麻痺側前腕以遠を卓上鏡にて隠し,その位置に非麻痺側前腕と手の鏡像を知覚するようにし,対象には常に鏡像を注視するよう指示した。電気刺激パラメータのon/off時間のうちonの時間は機器の聴覚信号に併せて両上肢同時に手関節背屈の随意努力を行い,offの時間は両側上肢で手関節,手指の運動を同調させて行った。 治療機器はChattanooga社製Intelect Advanced comboを使用した。電気刺激パラメータは周波数50Hz,パルス幅200μsecの対称性二相性電流を使用し,on/off時間は10/20秒とした。電流強度は疼痛を生じず,最大限の関節運動が起こる程度とし,閾値は手関節背屈の最大随意努力時とし対象の状態に併せて治療者が適宜調整を行った。対象筋は麻痺側尺側手根伸筋とした。 研究デザインにはBA型シングルケースデザインを用い,操作導入期(B期),治療撤回期(A期)はそれぞれ4週間とした。B期には標準的理学療法(PT),作業療法(OT)と併せてETMS-MTを1セッション20分間を2回/日,5日/週,4週間実施した。A期にはPT,OTのみを実施した。評価項目はFugl-Meyer Motor Assessment Scale上肢項目(FM),手関節背屈の自動関節可動域(AROM),握力,Box and Block Test(BBT),Wolf Motor Function Test(WMFT),Motor Activity Log(MAL)とした。 【説明と同意】本研究への参加を求めるにあたり,対象には本研究の目的や予測される治療効果および危険性について説明を行い,参加同意書に署名を得た。 【結果】B期には症例1,2はそれぞれFMにて11点,7点,AROMにて10°,0°握力にて2.0kg,1.0kg,BBTにて8個,6個,WMFTにて496.0秒,40.5秒,MALにて0.51点,0.99点と殆どの評価にて改善を示した。A期にはそれぞれFMにて5点,4点,AROMにて-5°,0°,握力にて0.5kg,3.0kg,BBTにて1個,2個,WMFTにて-47.1秒,7.4秒,MALにて-0.17点,-0.41点と変化し,一部の項目に低下もみられたが,わずかな改善傾向を示した。FMとWMFT,MAL,BBTは両症例ともB期により大きな改善を示した。 【考察】両症例ともB期に多くの改善を示しており,FMやWMFTの中でも手関節の分離運動や手の巧緻動作の項目に改善が多いことから,ETMS- MTが麻痺手の機能回復に寄与した可能性が考えられた。今後は症例数の増加,比較対照群の設定などにより,治療効果の検証を行っていく必要がある。 【理学療法研究としての意義】今回は2症例のみでの検証であったが,ETMS-MTは脳卒中後の上肢運動麻痺に対する新たな治療方法として今後の更なる検証の必要性が示唆された。
著者
生野 公貴 北別府 慎介 梛野 浩司 森本 茂 松尾 篤 庄本 康治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.485-491, 2010-12-20
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,脳卒中患者に対する1時間の末梢神経電気刺激(PSS)と課題指向型練習の組み合わせが上肢機能に与える影響を検討することである。【方法】脳卒中患者3名をベースライン日数を変化させた3種のABデザインプロトコルに無作為に割り付け,ベースライン期として偽刺激(Sham)治療,操作導入期としてPSS治療を実施した。1時間のSham治療およびPSS治療後に課題指向型練習としてBox and Block Test(BBT)を20回行い,練習時の平均BBTスコアの変化を調査した。さらに,PSS治療後24時間後にBBTを再評価した。【結果】全症例Sham治療後と比較して,PSS治療後に平均BBTスコアが改善傾向を示した{症例1: +4.9(p<;0.05), 症例2: +3.1, 症例3: +5.7(p<0.05)}。全症例の24時間後のBBTスコアが維持されていた。また,PSSによる有害事象はなく,PSSの受け入れは良好であった。【結論】1時間のPSSは課題指向型練習の効果を促進させ,24時間後もその効果が維持される可能性がある。