- 著者
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安彦 智史
加藤 諒
北川 悦司
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.3, pp.535-543, 2020-03-15
近年のインターネット社会では,SNS(Social Networking Service)の利用による薬物売買や児童ポルノ,自殺幇助といった様々なサイバー犯罪が問題視されている.特に薬物売買は,インターネットの匿名性を利用した売買手法について潜在化や巧妙化が進行しており,平成29年では薬物利用による検挙人員の約半数は青少年であった.そのため,厚生労働省では,警察庁と連携し,有害情報をフィルタリングするシステムの導入を促進しているが,検挙人員の低下にはつながっていない.さらに公開型のSNSを中心に,薬物売買を示唆するアカウントが頻繁に作成されているため,個別に対応するだけでは根本的な解決につなげることは難しいという課題がある.そこで,本研究では,特に重要度が高いとされるマイクロブログを対象に,機械学習を用いて薬物売買を行うユーザの自動抽出を試みる.さらに,ユーザ間の関係から,薬物売買に興味があるコミュニティを包括的に把握可能なシステムを開発する.実証実験の結果,薬物売買に関連するユーザを高精度に抽出し,ユーザの有害判定やネットワークの可視化を実現できることを証明した.