著者
北村 嘉恵
出版者
日本台湾学会
雑誌
日本台湾学会報
巻号頁・発行日
vol.6, pp.107-130, 2004-05

台湾先住民児童を対象とする初等教育機関・蕃童教育所は警務局の管轄下におかれ、その教員を担ったのは駐在所の巡査であった。本稿の課題は、教育所の教員を担った警察官の具体像を検討し、そこに教育実践上どのような問題があったのかを検討することにある。主な資料は、警察関係の統計、官庁出版物、雑誌、部内簿冊等である。 総督府が教育所教員としてどのような人材を配したかを通観すれば、限られた人員と予算のもとで、総督府が教育所教員のために講じた措置はごく限定的なものであったことが歴然としている。このことは、先住民政策において教育所教員の問題が低い位置しか占めていなかったこと、ひいては、為政者にとって先住民教育が切迫した政策課題とはなりえなかったことをよく示している。しかも、先住民教育が先住民政策の「要」であるといった掛け声とは裏腹に、教育所の生徒たちは劣悪な教育状況下での学習を余儀なくされたのである。
著者
北村 嘉恵 樋浦 郷子 山本 和行
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
no.126, pp.298-190, 2016

本稿は、中華民国台南県の市立新化国民小学および国立新化高級工業職業学校が所蔵する植民地関係史料の中から学校沿革誌を翻刻し、台湾地域史および帝国日本教育史の基礎史料として集積と共有化をはかるものである。近年台湾では学校史料への関心が高まりを見せ、学校所蔵史料の調査・整理とともに、これらを利用した学校史研究が一定の蓄積をみつつある。日本でも、アーカイブズ学的な関心から、各都道府県に現存する史料の俯瞰的な調査が進みつつある。ただし、悉皆的な調査や比較検討の重要性が指摘されながらも、個別の学校や自治体に視野が限定されがちな傾向は否みがたい。こうした状況をふまえ筆者らは、帝国日本の全域に視野を開きつつ教育史資料の所在調査・整理を段階的・体系的に進めるとともに、地域社会に視点を据えて東アジアの植民地化・脱植民地化の道筋を解明していくことをめざしている。本稿は、その初段階における報告である。This volume is reprinting of historical school documents selected from historical archives of two schools, Municipal Hsinhua elementary school and National Hsinhua industrial vocational school,both located in the present-day in Hsinhua district, Tainan city, Taiwan. In Taiwan, interests in school official documents are rising in recent years. With investigation and arrangement of these documents, studies are being deepened to some extent. In Japan, too, comprehensive investigation on historical documents in each prefecture is being developed fromarchivist standpoints. We hope that publishing these documents will contribute to allowing the histories of Taiwan and the Japanese Empire to be studied in conjunction with the historic and bird-eye view of oneanother. We are currently surveying documents from throughout the Japanese Empire related to the educational history, with the goal of elucidating the processes of colonization and decolonization in East Asia in ways that are rooted in local communities. This volume is the preliminary publication of our larger project. As said above, both schools in this volume were now located in Hsinhua district, Tainan. Hsinhua is in about fifteen kilometers to the northeast from Tainan city area. By seventeenth century, there was a village of indigenous Siraya people, and Tavokan-sha (the community of Siraya people) had also been formed in the present-day Hsinhua district. With increase of Han Chinese immigrants later on, Siraya people was obliged to leave there and emigrate to the foot of mountains. These school archives enable us to understand the multilateral meanings of the elementary and post-elementary education for Hsinhua area.
著者
北村 嘉恵
出版者
帯広市教育委員会
巻号頁・発行日
2014-01-31

本書は、日本学術振興会科学研究費補助金「台湾先住民族の教育をめぐる歴史的動態」(2011~13年度、研究代表者北村嘉恵、若手研究(A)、課題番号23683022)の交付を受けて行った調査・研究の成果報告として、吉田巖氏(1882~1963年)が遺した資料群の中から「台湾学事視察旅行」(1927年5月27日~6月30日)に関する資料を翻刻・紹介するものである。
著者
北村 嘉恵 山本 和行 樋浦 郷子
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、「研究実施計画」に即して、以下のとおり進めた。1.台湾南部(台南、嘉義)において、国民小学や個人・団体の所蔵する文書・写真・奉安庫等の調査を進めるとともに、関係者に聞き取り調査を行った(8月、3月)。所蔵者の逝去により一時中断していた元教員旧蔵資料群については、遺族の了解を得て作業を再開することができ、出版物(書籍)を除く全資料のデジタル撮影を終えることができた。現在その悉皆的な目録の作成を進行中である。これまでの調査の成果と課題を共有するため、国立台湾歴史博物館研究組組長と協議を行い、同館における調査・整理の方針について情報を得るとともに、今後の協力方法についても検討した。2.韓国・国家記録院のデータベース等により学校資料の残存状況および内容を把握したうえで、韓国南部の数カ所(昌原、釜山)に調査地を絞りこみ、初等学校や韓国長老教会の所蔵する文書・写真等の閲覧および関係者への聞き取り調査を行った(8月)。実地調査において学校沿革誌の原本を確認することはできなかったが、とくに、学校創立以来の通時的な集合写真や学籍簿、普通学校生徒の帳面のほか、教会の牧師・長老会議の記録である「堂会録」(1900年代初頭~1960年代末)などの所蔵を確認し閲覧できた点で大きな進展が見られた。このうち許可の得られた資料についてはデジタルカメラにて撮影を行うとともに、仮目録を作成した。3.主要資料のうち公刊許可の得られた学校沿革誌については、全文の翻刻を行い、解題を付して紙媒体および電子媒体で順次公刊し、幅広い共有化をはかるとともに調査地への成果還元につとめている。また、調査・分析より得られた知見は教育史学会等にて個別研究として発表し、論文として公刊を進めている。
著者
北村 嘉恵
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.129, pp.240-187, 2017-12-22

本稿は、中華民国台南市の市立山上国民小学所蔵史料の中から日本植民地期に関わる学校沿革誌を翻刻し、台湾の地域史および帝国日本教育史の基礎史料の集積と共有化を進めることを目的とする。本稿でフォーカスをあてるのは、別稿で取り上げた「新化公学校」を本校とする分教場・分校・分離教室である。これら分校を前身とする、8つの国民小学(うち2校は廃校跡)の調査に基づき、個別の学校史を超えて〈地域〉における公立(総督府認可)初等学校存立の意味を捉え直していくための基礎作業を進めるものである。
著者
山下 直樹 北村 嘉恵 新田 和幸 前田 賢次
出版者
北海道大学大学院教育学研究科教育史・比較教育研究室
巻号頁・発行日
2007-03-22

北海道の近現代教育史に関する資料の整理・保存を目的として、2005年3月~2006年3月に後志支庁管内の岩内東小学校、岩内西小学校、岩内町郷土館にて所蔵資料の調査を行った。本目録は、その成果報告である。
著者
北村 嘉恵
巻号頁・発行日
2010-09-22