著者
北條 美能留 石井 浩二 原 哲也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.355-360, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
7

がん疼痛の薬物療法における非オピオイド鎮痛薬の役割は重要である.非オピオイド鎮痛薬の使用によりオピオイドの副作用軽減が可能になることもある.非オピオイド鎮痛薬は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンに大別される.NSAIDsはその作用機序の特徴から消化管障害,腎機能障害,血小板障害などのリスクがある.近年,さらに心血管系のリスクも存在することが明らかになった.一方,アセトアミノフェンは肝機能障害に関して注意が必要である.本稿ではがん疼痛治療に際し,非オピオイド鎮痛薬選択に関して注意すべき点を中心に概説する.
著者
高田 正史 北條 美能留 上園 保仁 澄川 耕二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.160-164, 2008-05-25 (Released:2011-12-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

フェンタニル単独で除痛が困難であったがん性腹膜炎による腹痛に対して,少量のモルヒネを追加し,腹痛が著減した2症例を報告する.症例1は15歳の女児で,卵巣癌の腹膜播種による腹痛に対して最初の3カ月間はフェンタニル300μg/日で良好な鎮痛が得られていた.その後,腹痛が増強したので1週間で持続フェンタニルを2,400μg/日まで増量し,フェンタニル100μg/回のレスキューを16回/日使用し,ケタミンを併用したが,腹痛はまったく軽減しなかった.モルヒネ(50 mg/日)の持続静脈内投与を追加した後に,腹痛は著減した.症例2は33歳の女性で,胃癌の腹膜播種による腹痛に対して,フェンタニルの持続投与を2週間で9,600μg/日まで増量し,フェンタニル200μg/回のレスキューを25回/日使用し,ケタミンを併用したが,鎮痛効果不十分であった.モルヒネ(150 mg/日)の持続静脈内投与を追加した後に,腹痛は著減した.2症例では,フェンタニルへの耐性が発現していたと考えられた.