著者
橋詰 淳哉 龍 恵美 能勢 誠一 宮永 圭 岸川 礼子 中村 忠博 室 高広 兒玉 幸修 山下 春奈 石井 浩二 佐々木 均
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.101-109, 2020 (Released:2020-04-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 5

【目的】ナルデメジンは消化管のµオピオイド受容体に拮抗してオピオイド誘発性便秘(opioid-induced constipation: OIC)を改善するが,副作用として下痢が知られている.ナルデメジン導入後の下痢発現の予測因子についてオピオイド鎮痛薬投与期間に着目して解析した.【方法】2017年6月1日から2019年3月31日の期間に長崎大学病院においてナルデメジンをはじめて導入した患者を対象に後方視的調査を行った.【結果】調査対象は132名であり,下痢は33名(25.0%)に発現した.多変量ロジスティック回帰分析の結果,ナルデメジン導入前のオピオイド鎮痛薬投与日数8日以上は下痢発現と有意に関連した(オッズ比:3.76, 95%信頼区間:1.53-9.20, p=0.004).【考察】OICに対してナルデメジンを使用する場合,オピオイド開始後7日以内に使用することで,下痢の発現を回避できる可能性が示唆された.
著者
田口 文広 松山 州徳 中垣 慶子 森川 茂 石井 浩二 氏家 誠
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

SARS-CoVは、受容体ACE2に結合後、エンドゾームに輸送され、cathepsin-Lなどのプロテアーゼによりスパイク(S)蛋白の膜融合能が活性化され、細胞侵入するという、エンドゾーム経路で細胞内へ侵入する。一方、我々は外来性のプロテアーゼが存在する場合、細胞表面から侵入する可能性を提唱した。この細胞表面からの侵入は、ACE2結合したS蛋白がプロテアーゼにより解裂され、膜融合活性を獲得するために可能になると考えられている。本研究では、この仮説を検証するため、解裂性S蛋白を持つpseudotypeウイルスを用いて、細胞表面からの侵入が可能か否かに付いて検討した。SARS-CoV S蛋白上の細胞内プロテアーゼ(フリン)により解裂が予想される3か所にプロテアーゼ認識アミノ酸配列を導入した変異S蛋白を作成した。このS蛋白をenvelope上に持つ水泡生口内炎ウイルス(VSV)のpseudotypeウイルスを作成し、その細胞侵入経路を検討した。3か所の変異挿入部位の中で、S蛋白797/798で解裂が起こるよう設計されたS蛋白は、細胞融合性を示し、pseudotype envelope上に発現された。このpseudotypeは、SARS-CoV非解裂性S蛋白を持つpseudotypeと比べ、エンドゾーム経由感染阻止薬による感染抑制はなく、また、SARS-CoVがエンドゾーム内で活性化されるプロテアーゼ阻害剤の影響も低かった。以上の結果から、解裂性S蛋白を持つpseudotypeは細胞表面から侵入することが強く示唆された。即ち、SARS-CoVはプロテアーゼの存在下で直接細胞膜から細胞侵入する能力を有することが確認された。マウス肝炎ウイルス(MHV)のS蛋白のheptad repeat由来peptideは膜融合活性を阻害することでウイルス感染を阻止することが報告されている。SARS-CoVのS蛋白でも同様の実験がなされたが、MHVに比べて阻害効率が著しく悪い事が報告されている。我々は、外来性のプロテアーゼ存在下、細胞表面からの感染が可能な状態で、peptideの感染阻害効率を再評価した。この結果、細胞表面からのウイルス感染では従来考えられていたよりも低濃度のpeptideで効率よく阻害できる事が分かった。このことは、これらのpeptideが潜在的なSARS-CoVに対するinhibitorとなりえる事を示唆するもので、SARS-CoVの感染経路にpeptideをターゲティングする事でSARS-CoVの感染を効率よく阻止できる可能性を示した。
著者
北條 美能留 石井 浩二 原 哲也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.355-360, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
7

がん疼痛の薬物療法における非オピオイド鎮痛薬の役割は重要である.非オピオイド鎮痛薬の使用によりオピオイドの副作用軽減が可能になることもある.非オピオイド鎮痛薬は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンに大別される.NSAIDsはその作用機序の特徴から消化管障害,腎機能障害,血小板障害などのリスクがある.近年,さらに心血管系のリスクも存在することが明らかになった.一方,アセトアミノフェンは肝機能障害に関して注意が必要である.本稿ではがん疼痛治療に際し,非オピオイド鎮痛薬選択に関して注意すべき点を中心に概説する.
著者
石井 浩二郎
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、これまで未解明であったセントロメア新生反応機構について、分裂酵母の卓越した遺伝学を用いた新たに分子的な解剖を試み、セントロメア生来の必須機能の分子的な本質の理解を行ってきた。セントロメア機能傷害の発生に際して、染色体上の別座位に新たにセントロメア機能(ネオセントロメア)が獲得される現象は既に高等細胞で見出されているが、その出現を偏りなく人為的に誘導する実験系はこれまで報告がない。私たちは、高等生物と同等の分子構造を示す分裂酵母セントロメアに人為操作を加え、細胞内で条件的にセントロメアを染色体から切除するシステムを構築し、セントロメア欠失という致死的な傷害を既定の細胞集団に誘発する系を確立した。ネオセントロメアの新生をこの致死的細胞集団からの復帰生存株の出現という細胞応答として検出し、その反応素過程を分子生物学的に解析した。昨年までの解析により、分裂酵母第一染色体および第二染色体からのセントロメア欠失はネオセントロメア獲得細胞を再現性よく生成し、そのネオセントロメア形成領域として染色体両端のテロメア近傍が集中して選ばれていることが判明していた。テロメアの重要性を探るため、本年度はまずテロメア末端を欠失した染色体でのセントロメア欠失を行った。その結果、テロメアを欠く細胞ではいかなる復帰生存株も生まれないことを見出した。テロメア構造は染色体再編成に必須なことが示唆された。また、ネオセントロメア形成後の遺伝子発現の変動を人為的発現誘導によって解析し、セントロメアの転写に対する柔軟性がさらに明確に示された。