著者
松田 将也 寺田 哲也 北谷 和之 河田 了 奈邉 健
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 (ISSN:24357952)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.21-26, 2021 (Released:2021-08-31)
参考文献数
44

舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)は,抗原を舌下に長期間投与し免疫寛容を誘導することから,アレルギー疾患に対する唯一の根治療法といえる。SLITのアレルギー性鼻炎に対する臨床的有効性は確立されており,その効果発現メカニズムには制御性T細胞(Treg細胞)の増加が関与するとされるが,その詳細は不明な点が多い。Treg細胞には,マスター転写因子としてforkhead box P3(Foxp3)を発現するCD25+ CD4+ T細胞(Foxp3+ Treg細胞),ならびに抗炎症性サイトカインであるIL-10を高産生するFoxp3– CD4+ T細胞(Tr1細胞)が存在する。SLITを行ったアレルギー性鼻炎の患者においては,Foxp3+ Treg細胞ならびにTr1細胞の顕著な増加が認められることから,これらの細胞がアレルギー症状の抑制に重要な役割を担うことが推察される。本総説においては,これまでに報告されてきたSLITによるTreg細胞の誘導機序,ならびにSLITの効果発現におけるTreg細胞の役割について概説するとともに,近年発見されたTreg細胞誘導剤の有用性について考察した。SLITにおけるTreg細胞の誘導機序の解明ならびにその誘導薬物の創出は,より効率的なSLITの創出に繋がると考えられる。
著者
北谷 和之
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

セラミド量の変動は卵巣がん転移の重要因子である可能性が考えられる。本研究では卵巣がん転移におけるセラミドおよび生成・代謝酵素の意義を明らかにした。まずマウス卵巣がん転移モデルから4株の易転移性卵巣がん細胞を樹立した。これらのセラミド量を定量したところ、易転移性細胞ではセラミド量およびセラミド合成酵素 2発現が低下することを発見した。さらに卵巣がん腹膜播種マウスモデルにおいて、セラミド合成酵素2の発現を抑えることで播種転移が有意に抑制された。したがって、セラミド合成酵素の発現抑制およびセラミド量低下が卵巣がん転移の原因であると考えられる。