著者
奈邉 健 松田 将也
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

IL-33のアレルギー性産生機序を解析し、難治性喘息におけるIL-33の役割を解析した。感作マウス肺内に抗原を投与した際のIL-33産生には、肺胞マクロファージ内への抗原-IgG複合体の取り込みを介する機序が関与することが示唆された。一方、難治性喘息モデルとして開発したステロイド抵抗性喘息モデルにおいて、IL-33産生はステロイド感受性であったが、IL-33受容体を有する2型自然リンパ球の肺への浸潤はステロイド抵抗性であった。さらに、IL-33受容体の遺伝子が肺において発現増強していた。以上より、難治性喘息において、IL-33の産生よりむしろIL-33受容体の活性化が増強していると考えられた。
著者
松田 将也 寺田 哲也 北谷 和之 河田 了 奈邉 健
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 (ISSN:24357952)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.21-26, 2021 (Released:2021-08-31)
参考文献数
44

舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)は,抗原を舌下に長期間投与し免疫寛容を誘導することから,アレルギー疾患に対する唯一の根治療法といえる。SLITのアレルギー性鼻炎に対する臨床的有効性は確立されており,その効果発現メカニズムには制御性T細胞(Treg細胞)の増加が関与するとされるが,その詳細は不明な点が多い。Treg細胞には,マスター転写因子としてforkhead box P3(Foxp3)を発現するCD25+ CD4+ T細胞(Foxp3+ Treg細胞),ならびに抗炎症性サイトカインであるIL-10を高産生するFoxp3– CD4+ T細胞(Tr1細胞)が存在する。SLITを行ったアレルギー性鼻炎の患者においては,Foxp3+ Treg細胞ならびにTr1細胞の顕著な増加が認められることから,これらの細胞がアレルギー症状の抑制に重要な役割を担うことが推察される。本総説においては,これまでに報告されてきたSLITによるTreg細胞の誘導機序,ならびにSLITの効果発現におけるTreg細胞の役割について概説するとともに,近年発見されたTreg細胞誘導剤の有用性について考察した。SLITにおけるTreg細胞の誘導機序の解明ならびにその誘導薬物の創出は,より効率的なSLITの創出に繋がると考えられる。