- 著者
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神前 英明
- 出版者
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 (ISSN:24357952)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.4, pp.129-135, 2022 (Released:2022-12-28)
- 参考文献数
- 47
上気道における代表的な好酸球性炎症,アレルギー性炎症をきたす疾患として好酸球性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎があげられる。好酸球性副鼻腔炎は,手術後も再発が多いため,難治性疾患として扱われている。その病態として,抗原の感作なしに2型炎症を誘導する自然型アレルギーの関与が強いことが知られている。上皮細胞から産生された上皮由来サイトカイン(TSLP, IL-25, IL-33)は,2型自然リンパ球(ILC2)や病原性記憶Th2細胞を介して大量の2型サイトカイン産生を誘導し,好酸球浸潤,ムチン産生,杯細胞の過形成など,好酸球性副鼻腔炎に特徴的な組織像が形成されると考えられる。近年,病態の解明に伴うバイオ製剤の登場により,恩恵を得られる患者が増えている。アレルギー性鼻炎は,世界中で患者が増加しており,本邦では人口の半数が罹患していると推定される。アレルゲン免疫療法は,アレルギー性鼻炎に対する高い有効性が示され,長期的な寛解や治癒が期待できる唯一の方法である。アレルゲン免疫療法の作用機序は,IL-10,IL-35,TGF-β,IgG抗体の増加および制御性T細胞の誘導によって特徴づけられる免疫寛容の獲得に基づいている。しかしながら,アレルゲン免疫療法を行うことでなぜ長期寛解が得られるか,その全貌はまだ明かにされていない。いずれも2型炎症またはIgE依存的アレルギー炎症が特徴となる疾患で,これらの炎症を制御することが治療につながると考えられる。我々が行ってきた研究を中心に,好酸球性副鼻腔炎の病態と,アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法の作用機序について解説する。