著者
今井 浩三 山下 健太郎 林 敏昭 村上 理絵子 高橋 裕樹 杉山 敏郎 千葉 進 谷内 昭
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.324-328, 1993-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

31歳女性.数年の経過で全身倦怠感があり,自宅で臥床していたが,全身倦怠感,関節痛,頭痛および眼瞼下垂を主訴として,精査を求めて平成4年4月当科入院.諸検査より慢性疲労症候群(CFS),シェーグレン症候群ならびに重症筋無力症を疑われたが,アメリカCDCの診断基準に基づいてCFSと診断した.一方, CFSは他の慢性疾患が除外されなければ診断できないため,鑑別診断を試みた.シェーグレン症候群に関しては唾液分泌能試験およびSchirmer試験陽性であり,疑い例とされたが,自己抗体を含めて他の検査は陰性であった.重症筋無力症については眼瞼下垂,外眼筋麻痺が認められ,またテンシロンテスト陽性と判断されたが,誘発筋電図,抗AChR抗体は陰性で確定診断に至らなかった. CFSは注目すべき疾患と思われるが,本症例のようにいくつかの自己免疫疾患と鑑別が困難な場合もあると思われ,その点で興味がもたれたので報告した.
著者
木村 健 浅香 正博 勝山 努 川野 淳 斉藤 大三 佐藤 貴一 下山 孝 杉山 敏郎 高橋 信一 服部 隆則 藤岡 利生
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.199-207, 1999-02-05
被引用文献数
17

第二次<I>Helicobacter pylori</I>治験検討委員会が改訂した治験ガイドラインの主な内容は,以下の通りである.<BR>I.除菌の利点と問題点: 利点は消化性潰瘍の再発抑制効果,そして低悪性度胃MALTリンパ腫の改善,かつそれらの医療経済効果である.問題点は薬剤耐性の獲得,および除菌後に新たに生じる疾患があり得ることである.<BR>II.除菌治験の適応疾患: 除菌治験を速やかに行うべき疾患は,現在のところ,胃・十二脂腸潰瘍と低悪性度胃MALTリンパ腫である.<BR>III.除菌薬: 酸分泌抑制薬+抗菌薬2剤の3剤併用療法をfirst-line therapyとする.<BR>IV.存在診断と除菌判定: 存在診断は培養,鏡検,ウレアーゼ試験にて行う.除菌判定は,培養と鏡検に加えて<SUP>13</SUP>C尿素呼気試験を必須とし,血清学的検査法とPCR法を削除する.除菌判定の時期は,治療終了後6~8週とする.
著者
西川 潤 細川 歩 渕野 真代 高取 俊介 岩本 真也 菓子井 良郎 坂東 正 清水 哲朗 峯村 正実 杉山 敏郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.3, pp.299-304, 2018-03-10 (Released:2018-03-12)
参考文献数
27

エソメプラゾール投与により発症した横紋筋融解症の1例を経験した.逆流性食道炎に対してエソメプラゾールを投与したところ,約10カ月後に横紋筋融解症を発症した.投薬の中止と補液によって腎障害を合併することなく改善した.横紋筋融解症はプロトンポンプ阻害薬投与にともなうまれな副作用であるが,速やかな診断と対応が求められる貴重な症例であり報告した.
著者
西川 潤 宮嵜 孝子 鈴木 庸弘 板谷 優子 山脇 秀元 三原 弘 蓮本 祐史 藤浪 斗 小川 浩平 細川 歩 工藤 俊彦 杉山 敏郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.9, pp.1535-1539, 2011 (Released:2011-09-05)
参考文献数
24

infliximab投与により薬剤誘発性ループスを発症した潰瘍性大腸炎の1例を経験した.ステロイド依存性潰瘍性大腸炎患者に対し,寛解導入ならびに寛解維持目的でinfliximab投与を施行した.第5回目のinfliximab投与後に多関節痛,リンパ球減少,抗二本鎖DNA抗体陽性,抗核抗体陽性を呈し薬剤誘発性ループスと診断した.保存的治療とinfliximab投与中止により症状の改善が得られた.
著者
杉山 敏郎 岡野 寛
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.48, no.574, pp.357-361, 1941-07-20 (Released:2008-04-11)
被引用文献数
2 1

本邦には三葉蟲類の尾部が北上及び阿武隈兩山地の二疊紀から夫々知られ, 大體廣義のPhilipsiaに同定せられてゐた。最近此外に石炭紀・泥盆紀及びゴトランド紀層からも夫々發見せらるるに至つた。本報告では北上の中里統から産出したPhacopsの尾部の記載をした。この標本は狹義のPhacopsに同定され, 殊にP., latifronsに酷似する諸性質を帶びてゐる。この泥盆紀産の三葉蟲の報告は本邦では初めてである。
著者
仲 紘嗣 杉山 敏郎 加藤 元嗣 浅香 正博
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.2035-2043, 1999 (Released:2011-05-09)
参考文献数
79

上部消化管内視鏡検査後の急性胃粘膜病変(PE-AGML)は日本において1973年頃から指摘されていた.このPE-AGMLの原因は当初,一般のAGMLと同一と思われており偶然にその発症前後を観察したと考えられていた.その後,内視鏡検査によるストレス説,内視鏡挿入・空気注入に伴う胃の過伸展による血流障害説などが主に推測され検討されてきた. 1989年からPE-AGMLとHelicobacter pylori(H.pylori)との関連が検討されはじめ,その発症には主にH.pyloriが関与している多くの研究結果が報告されてきた.加えて,内視鏡機器の洗浄・消毒法の検討もおこなわれ,事実上,PE-AGMLは十分な内視鏡の消毒により激減してきた.したがって今日では,PE-AGMLは内視鏡機器の不十分な消毒によって介在される微生物感染が主因であり,その中でH,pylori感染が中心をなしているのではないかと考えられるようになってきた.
著者
杉山 敏郎 平山 文博 浅香 正博 穂刈 格
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

H.pyloriは慢性萎縮性胃炎、胃癌の主要な病因と考えられ、その関連性は疫学的、動物実験モデルにより実証されている。我が国のH.pylori感染者は約6000万人と推定されているが、胃癌予防のために全感染者を除菌することは現実的に不可能である。したがって、予防ワクチンの開発は重要である。さらに開発途上国では胃癌患者はいまだ増加傾向にあり、かつ多数の感染者を除菌することは経済的に全く不可能であり、一層、予防ワクチンの開発が必要とされる。本研究ではH.pyloriリコンビナントカタラーゼ蛋白をワクチンとして用い、スナネズミに免疫し、その後、胃癌を高頻度に発症するH.pylori菌株を感染させ、感染の成立、胃炎の成立、そして胃癌発症予防効果を検討した。5週令SPFスナネズミにH.pyloriリコンビナントカタラーゼ蛋白をアジュバントとともに免疫し、その後、採血および胃液を採取、ELISA法により血清lgG抗体および胃液lgA抗体の上昇を確認した。免疫成立を確認した後、胃癌高頻度発生H.pylori菌(TN2GF4株)液を経管的にスナネズミに投与し、さらに10ppmのメチルニトロソウレアを20週間投与し、経時的に観察し、胃癌の発生を評価していたが、検討した72週の10匹のスナネズミでは組織学的に胃癌の発生は全く確認されていない。一方、我々がクローニングしたH.pyloriカタラーゼ遺伝子をカナマイシンカセットに導入しH.pyloriに遺伝子導入し、菌体内でリコンビネーションによりカタラーゼノックアウトH.pyloriを作成し5週令SPFスナネズミ15匹に感染させたが、感染は全く成立せず、カタラーゼは感染成立に必須であることが判明している。したがってH.pyloriリコンビナントカタラーゼ蛋白は感染予防ワクチンとして極めて有用である。