著者
南 和彦 丸山 萩乃 土師 知行
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.180-185, 2015 (Released:2015-05-21)
参考文献数
14
被引用文献数
2

チューブ発声法はさまざまな音声障害に有効な音声治療として使用されており,コンピュータによるシミュレーションによると,声道の入力インピーダンスと声門のインピーダンスとを容易に適合させて効率の良い発声を導きやすくさせるとされている.しかし,実際にチューブ発声を行っている状態の声帯振動を観察した報告はわれわれが確認した範囲では,ない.当院では声帯結節に対してチューブ発声法を積極的に指導しているが,同訓練法の声帯振動への影響は不明であった.本検討ではチューブ発声時の声帯振動を電子スコープで観察したところ,通常発声時と比較して声帯振幅が増大する傾向にあることがわかった.これはコンピュータでのシミュレーションのように,チューブ発声が効率の良い発声を導くことを示す一つの証拠となると考えられた.チューブ発声法は自宅で簡便に訓練でき,継続的な訓練が可能である.今後,さらなる症例を重ねて治療効果についても検討したい.
著者
南 和彦 長谷川 直子 福岡 修 宮島 千枝 角田 玲子 深谷 卓
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.112, no.7, pp.550-553, 2009 (Released:2010-10-26)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

頭頸部進行癌で皮膚浸潤を呈した症例では出血, 疼痛, 感染などを伴い, 著しくQOLを損なうが, 有効な治療手段がないのが現状である. 特に腫瘍の皮膚浸潤による自壊, 出血例では止血に難渋することが多く, 輸血を必要とすることもある.今回, われわれは皮膚科領域で使用されてきたMohs軟膏を使用した処置を頭頸部癌皮膚浸潤2症例に適応した. この治療法は病変を化学的に固定することで, 腫瘍出血, 疼痛, 感染, 滲出液を制御するとされる. 実際, いずれの症例においても出血と疼痛を制御し, QOLの改善に有効であった.Mohs軟膏による処置は頭頸部癌の皮膚浸潤および皮膚転移を伴う症例における局所合併症の制御目的に非常に有用な治療法と考えられる. 頭頸部癌進行例のQOLの改善目的にMohs軟膏を使用して局所合併症を制御し得た2症例を経験したので若干の考察とともに報告する.