著者
角南 尚哉 安藤 英紀 丸山 敦也 三輪 泰司 濱本 英利 清水 太郎 異島 優 石田 竜弘
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】イオン液体(ILs)は有機アニオンと有機カチオンからなる常温で液体の塩で、様々な分野での応用が期待されている。我々は以前に、イオン液体を用いてタンパク質などの高分子、中分子核酸、ペプチドなどを経皮吸収させる技術を開発した。ところで、2型糖尿病治療薬でペプチド製剤であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬はほとんどが皮下注射製剤であり、低い服薬コンプライアンスが課題である。それに比べ、経口投与製剤は投与の簡便さ、非侵襲的なことが利点で、高い服薬コンプライアンスを実現できる。そこで、ILsを基剤として用いることで腸管での吸収性向上を期待し、GLP-1受容体作動薬の一つであるLixisenatide(Lix.)をILsと混合した時の腸管での吸収性を評価した。【方法】Lix.をILsに溶解させ(Lix.-ILs)、Lix.の胃での分解を避けるため経腸投与、あるいはLix.をSalineに溶解させ(Lix.-Saline)皮下投与し、Lix.血中濃度をEIAキットを用いて評価した。また、それぞれ投与した後に糖負荷試験をすることで、血糖値の上昇抑制効果を評価した。【結果・考察】Lix.をILsと混合して顕微鏡で確認したところ、加温することでLix.の結晶が消失したことから溶解したと判断した。Lix.-ILsの経腸投与により、Lix.血中濃度が顕著に上昇したことから、ILsはLix.の腸管吸収を促進することを新たに見出した。この時、Lix.-ILsは投与後1時間でピークとなり、投与後6時間まで高いLix.血中濃度が維持された。糖負荷試験において、Lix.-ILsの経腸投与で血糖値の上昇抑制が認められ、同程度のLix.血中濃度を示すLix.-Salineの皮下投与と同等の薬理効果が確認された。以上の結果より、Lix.をILsに溶解させることでGLP-1受容体作動薬の腸管吸収性が上昇することを示した。
著者
宮崎 雄生 新野 正明 深澤 俊行 高橋 恵理 野中 隆行 越智 龍太郎 南 尚哉 藤木 直人 土井 静樹 菊地 誠志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.357a, 2014 (Released:2014-10-07)

【目的】Sirtuin-1(SIRT1)はヒストン脱アセチル酵素であり,神経保護や脂質代謝などへの関与が報告されている.本研究ではヒト単球のIL-10制御におけるSIRT1の役割を検討した.【方法】健常者末梢血から精製した単球を用いLPSまたはIFNβで刺激後にSIRT1遺伝子発現を定量した.健常者,無治療multiple sclerosis(MS)患者,IFNβ治療MS患者の単球におけるSIRT1発現を定量した.単球のIL-10産生に対するresveratrol(SIRT1活性化剤),EX527(同抑制剤)の作用を検討した.【結果】単球におけるSIRT1発現はLPSで低下した一方,IFNβで上昇した.単球におけるSIRT1発現に健常者と無治療MS患者間で差は確認できなかったが,IFNβ治療患者で無治療患者より高い傾向が見られた.ResveratrolはLPS刺激に対する単球のIL-10産生を増強した.IFNβは単球からのIL-10産生を増強したが,この作用はEX527によりキャンセルされた.【結論】SIRT1は単球のIL-10制御に関与しており,IFNβによるIL-10産生増強にも関与することが示唆された.SIRT1は神経変性疾患動物モデルにおいて神経保護作用が報告されており,神経と免疫双方が関与する疾患であるMSにとって有用な治療標的であると予想される.