著者
清水 太郎 異島 優 石田 竜弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.2, pp.163-169, 2020-02-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2 6

Modification of proteins with polyethylene glycol (PEG) (PEGylation) is a gold standard technique that improves the solubility, pharmacokinetics, and immunogenicity of modified proteins. To date more than 10 PEGylated protein formulations have been approved, and more than 20 PEGylated drugs are entering clinical trials. PEG has been considered non-immunogenic and non-toxic, but several studies have shown that PEG acquires immunogenicity following attachment to nanoparticles. The administration of PEGylated liposomes, micelles and proteins induces the production of antibodies against PEG (anti-PEG antibodies) in animals and human subjects. Indeed, approximately 20% of healthy human subjects possess pre-existing anti-PEG antibodies prior to treatment with PEGylated therapeutics. The induced and pre-existing anti-PEG antibodies cause not only the elimination of PEGylated proteins from blood circulation, but also allergic responses via the release of anaphylatoxins. Consequently, therapeutic outcomes for PEGylated proteins are impaired. The utility of PEGylated proteins could be improved by attenuating the PEG-related immune response. On the other hand, anti-PEG immune responses might be exploited for vaccine applications. Our recent studies demonstrated that anti-PEG antibodies mediate the delivery of antigens encapsulated in PEGylated liposomes, and enhance antigen-specific immune responses. In this review, we summarize anti-PEG antibody induction by PEGylated proteins and alterations in anti-PEG IgM-mediated pharmacokinetics and pharmacodynamics. These findings extend our knowledge of PEG-related immune responses.
著者
清水 太郎 異島 優 石田 竜弘
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.199-207, 2017-07-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
51

補体系は、自然免疫系の1つであり、初期の異物認識機構で中心的な役割を果たしており、病原体だけでなく、人工のナノ粒子の排除にも深く関わっている。補体系の活性化(カスケード反応)に伴い、生物学的活性をもつさまざまな分子が生成され、異物の貪食や炎症反応を誘導している。ナノ粒子の物性に応じて補体の活性化の程度はさまざまに変化するため、ナノ粒子の予期せぬ体内動態変化や毒性発現が想定されている。このような現象はナノ粒子による薬物送達効率を低下させるため、ナノ粒子に対する補体活性化機構を理解することは、非常に重要である。一方で、補体活性化に伴う免疫活性化は、ナノ粒子を用いたワクチンへ応用することが可能であると考えられる。本稿では、ナノ粒子に対する補体活性化の負と正の両側面について紹介する。
著者
石田 竜弘 異島 優 安藤 英紀
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

中分子医薬品であるバイオ医薬品の経口投与技術の開発が切望されている。最大のバリアである小腸での吸収性を改善させるため、界面活性剤、キレート剤などの透過促進剤が提案されてきたが、中分子医薬品の吸収改善には至っておらず、実用化に進む可能性のある技術の開発は未達である。本研究では、バイオ・医療応用がなされていないイオン液体をキャリアとし、腸管上皮細胞の突破という最も大きな課題を解決し、中分子医薬品の経口投与法を開発する。
著者
清水 太郎 異島 優 石田 竜弘
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.396-401, 2017-11-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

ポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソームなどのPEG修飾体に対するaccelerated blood clearance (ABC)現象は、これまでbio-inertと考えられてきたPEGに対する免疫反応であり、PEGに対する抗体の誘導と、この誘導された抗体がその後に投与されるPEG修飾体に結合することに端を発する血中からの速やかな排除と定義することができる。PEG修飾は、いまだ医薬品開発におけるゴールデンスタンダードであり、既存医薬品のライフサイクルマネージメントのみならず、PEG修飾によって化合物の性質を変え新薬として開発しようとする動きも出てきている。ABC現象はPEGに対する免疫反応であることから、投与する動物種によって誘導されるABC現象の程度は異なる。また、ABC現象は補体系の活性化を伴うため、アナフィラキシー様の有害事象を惹起する可能性も高いが、表現型として現れる有害事象は動物種によって大きく異なる。さらに、ヒトでの第1相試験ではdose escalation試験が行われるが、ABC現象は低投与量の場合に生じやすく、試験の進捗に悪影響を与える可能性が高い。ABC現象における動物種差の影響はこれまでほとんど報告されておらず情報が少ないのが現状である。
著者
清水 太郎 濱本 英利 石田 竜弘
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.230-238, 2023-07-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
44

イオン液体は、室温で液体の塩であり、水や有機溶媒に続く第3の溶媒として注目されている。イオン液体は有機カチオンと有機・無機アニオンから構成され、その組み合わせを変えることによって無数の物性をもつ溶媒を作製することが可能である。イオン液体は薬物の溶解性や安定性や吸収性を向上させることが可能であるため、近年、イオン液体を医薬品開発に応用する研究が盛んに行われている。経皮投与は非侵襲的で利便性に優れた投与方法である一方で、親油性の低分子にしか適用し難かった。しかし、薬物をイオン液体に溶解する、または薬物自体をイオン液体化することによって、さまざまな薬物を皮膚透過できることが、近年報告されてきた。イオン液体とともに皮膚に適用した薬物は、皮膚局所だけでなく全身にも移行するため、さまざまな疾患治療への応用が期待される。本稿では、外用剤・経皮吸収製剤に用いられるイオン液体の特性および疾患治療への応用について紹介する。
著者
小出 裕之 浅井 知浩 畑中 剣太朗 清水 広介 横山 昌幸 石田 竜弘 際田 弘志 奥 直人
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.1445-1451, 2009-12-01 (Released:2009-12-01)
参考文献数
21
被引用文献数
10 12

Liposomes modified with polyethylene glycol (PEG) can stably exist in the bloodstream because the PEG on the liposomes attracts a water shell to the liposomal surface. Since these liposomes are long circulating nanocarriers, they are used as drug and gene delivery tools. Repeat injection of PEGylated liposomes, however, is known to induce the accelerated blood clearance (ABC) phenomenon. In the ABC phenomenon, PEGylated liposomes that are injected subsequent to the first injection are cleared rapidly from the bloodstream and accumulate in the liver, resulting in loss of their long-circulating characteristics. The induction of ABC phenomenon is related to the production of anti-PEG IgM from splenic B cells. To elucidate the mechanism of the phenomenon, we firstly examined the relationship between the induction of ABC phenomenon and the concentration of PEGylated liposomes, and observed that the high dose of those did not induce the phenomenon. Next, we investigated whether polymeric micelles trigger ABC phenomenon or not. Finally, the size-dependency of ABC phenomenon was investigated by use of variously sized PEGylated liposomes and polymeric micelles having PEG chains. Our data suggest that the initiation of ABC phenomenon would be size-dependent, and particles smaller than 30 nm did not induce ABC phenomenon. We anticipate that the elucidation of the ABC phenomenon will be helpful for the development of DDS formulations.
著者
松﨑 隆朗 清水 太郎 安藤 英紀 異島 優 山中 勝弘 三輪 泰司 濱本 英利 石田 竜弘
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【目的】近年、がん抗原に対して特異的な免疫反応を誘導できるがんワクチンが注目されている。従来の皮下投与に比べて、免疫反応を増強するために抗原提示細胞が多く存在する皮膚を標的としたワクチンが注目されてきている。以前、我々は角質層透過性を持ち経皮吸収促進剤として利用できるイオン液体(ILs)にアジュバントとがん抗原模倣ペプチドを溶解させたワクチンを調製した。腫瘍を皮下移植したマウスの腹部にアジュバントを24時間貼付した後にペプチドの24時間貼付を行う免疫を3週間で3回行ったところ、有意な腫瘍増殖抑制効果が得られることを示した。本検討では、腫瘍増殖抑制効果が得られたメカニズムを明らかにするために、貼付部位の皮膚および流入リンパ節での免疫細胞の存在割合の変化を経時的に評価した。【方法】アジュバントであるResiquimod(R848)を含むILs(R848-ILs)およびOVAペプチド(OVAp)を含むILs(OVAp-ILs)を調製し、それぞれを貼付したマウスの貼付部位の皮膚およびリンパ節を経時的に回収し、その中の白血球(CD45)、更にはマクロファージ(CD11b)及び樹状細胞(CD11c)の存在割合をフローサイトメーターで測定した。【結果・考察】R848-ILsを貼付したマウスの皮膚では、各細胞の割合が貼付12時間以降に有意に増加した。また、R848-ILsの24時間貼付し続けた後にOVAp-ILsを貼付したところ、OVApの抗原提示を行っている細胞の割合が皮膚ではOVAp-ILs貼付3時間後から有意に増加し、リンパ節では貼付の6時間後から増加した。腫瘍増殖抑制効果が得られたメカニズムとして、R848-ILsによって皮膚免疫細胞が増加し、そこにOVAp-ILsを貼付することで、皮膚でペプチドが抗原として捕捉される機会が増加するのと同時にリンパ節へと運搬されやすくなり、結果として細胞傷害性Tリンパ球の活性化が強くなり、高い腫瘍増殖抑制効果に繋がったものと考えられた。以上より、イオン液体を利用したワクチン製剤は皮膚免疫反応の増強を可能とすることが示され、新規の非侵襲性ワクチンへの展開が可能であることが示唆された。
著者
石田 竜弘 異島 優 清水 太郎
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

タンパクや核酸など高分子医薬品の低侵襲的投与法として経皮投与技術の開発が切望されている。最大のバリアである皮膚の角質層を突破させるため、透過促進剤やマイクロニードルの活用、超音波や電気などの物理的な刺激を利用する方法などが提案されてきた。しかし、高分子医薬品の透過に成功した報告は乏しく、実用化に進む可能性のある技術の開発は未達である。イオン液体は陽イオンと陰イオンからなる常温で液体の物質であり、その特徴的な性質から、新たな電池材料や溶剤としてなどグリーンケミストリーの素材として活用されてきている。しかし、医療応用に向けた試みは行われていない。本研究の目的は、イオン液体をキャリアとし、皮膚角質層の突破という最も大きな課題を一気に解決するための高分子医薬品の低侵襲的投与法を開発することである。本年度はモデル抗原としてインスリンを用い、in vitroでの皮膚透過性試験を行った。その結果、ある種のイオン液体と混合することで、インスリンの皮膚透過性が飛躍的に向上することが確認できた。次いでin vivoでの皮膚透過性試験を行った。その結果、インスリンが角質層を透過し、血中ににまで移行していることを血糖降下作用によって確認した。現在、がんペプチドであるWT1を用いて同様の検討を行っているが、同様に良好な結果が得られつつあり、当初の目的である画期的な低侵襲性の経皮型がんワクチンの開発に繋げていく予定である。
著者
石田 竜弘 際田 弘志
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.495-510, 2004-11-10 (Released:2008-12-09)
参考文献数
42
被引用文献数
4 8

筆者らとオランダのグループは, 最近, リポソームの頻回投与時に発現するABC現象の存在を報告した. ABC現象は, 2回目投与時のポリエチレングリコール修飾リポソームの肝移行性を亢進し, 高い血中滞留性を失わせる反応である. 最近の検討から, ABC現象の誘導·発現には, リポソームの物理化学的性質, 投与量, 種差, などが影響を与えること, また現象の発現には, 初回投与リポソームの刺激に呼応して分泌されるIgMが重要な役割を果たすことが明らかになった. 本稿では, ABC現象に関連した最近の知見について紹介する.
著者
松尾 菜々 異島 優 池田 真由美 安藤 英紀 清水 太郎 石田 竜弘
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景・目的】活性イオウ分子種(RSS)は、チオール基やジスルフィド結合にS原子がさらに付加した分子であり、S原子放出能や高い抗酸化作用を有する。近年、過剰なS原子のがん細胞内への導入は、還元ストレスを与え、効率的に細胞死を誘導することが期待されているものの、既存のRSSは生体内での血中滞留性やがん細胞指向性に乏しいことが知られている。そこで、ヒト血清アルブミン(HSA)を過イオウ化させたPoly-Persulfide-HSAの作製を試みた。HSAは、高い血中滞留性とがん細胞指向性を有しており、生体内でRSSとして機能する報告もあることからキャリアとして有益と考えた。本研究では、作製したPoly-Persulfide-HSAの還元ストレスによる抗腫瘍効果を評価した。【方法】HSAにIminothiolaneを反応させ、Lys残基にSH基を導入した後、そのSH基をIsoamyl nitriteでS-ニトロソ化し、Na2S4と反応させることでPoly-Persulfide-HSAを作製した。In vitroの検討において、マウス結腸がん細胞Colon26細胞を用いて、Poly-Persulfide-HSAの細胞内取り込み及び細胞生存率を評価した。In vivoでは、Colon26担がんマウスを作成し、Poly-Persulfide-HSAを静脈内投与した際の抗腫瘍効果を評価した。【結果・考察】Poly-Persulfide-HSAはHSA 1分子あたり約7分子のS原子が付加していた。Poly-Persulfide-HSA処理Colon26細胞において、高い細胞毒性が見られ、その効果には活性イオウの取り込みが関与することが示唆された。In vivoの実験より、顕著な腫瘍体積増加の抑制が認められた。これらより、Poly-Persulfide-HSAは、がん細胞内にS原子を送達することで還元ストレスを惹起し、細胞死を誘導したと考えられる。以上より、作製したPoly-Persulfide-HSAは、還元ストレス誘導型抗がん剤として有用であると示唆された。
著者
安藤 英紀 石田 竜弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-24, 2020-02-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
15

標的遺伝子の発現を特異的に抑制するRNA干渉(RNA interference;RNAi)医薬品は、patisiran(Onpattro®)が2018年に世界で初めて販売されたことを契機に、これまで以上に高い注目を集めている。筆者らは臨床での実用性を考慮したRNAi医薬品の開発を試み、すでに量産が可能な工業化技術を確立し、体腔(胸腔および腹腔)内直接投与により悪性胸膜中皮腫や承認薬のない胃がん、卵巣がん、膵臓がんの腹膜播種転移の治療剤としての有用性を前臨床レベルで確認した。本稿では、すでに本格開発段階に移行している体腔内投与型RNAi製剤(開発コード:DFP-10825)について、これまでの開発経緯を紹介する。
著者
石田 竜弘 EMAM SHERIF
出版者
徳島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-11-13

COVID-19に対する独自の免疫技術を用いたワクチンを開発することを目的とする。我々は高分子のPEGに対する自然免疫を利用して、体液性免疫も細胞性免疫も同時に誘導可能な抗原デリバリーシステムを開発している。COVID-19のワクチンは、単に体液性免疫を誘導するだけでは不十分で、細胞性免疫も同時に誘導することが必要とされており、我々のシステムを用いれば細胞性免疫も同時に誘導することができる可能性が高いことから、ユニークかつ有能なワクチンの開発が期待できる。
著者
角南 尚哉 安藤 英紀 丸山 敦也 三輪 泰司 濱本 英利 清水 太郎 異島 優 石田 竜弘
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】イオン液体(ILs)は有機アニオンと有機カチオンからなる常温で液体の塩で、様々な分野での応用が期待されている。我々は以前に、イオン液体を用いてタンパク質などの高分子、中分子核酸、ペプチドなどを経皮吸収させる技術を開発した。ところで、2型糖尿病治療薬でペプチド製剤であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬はほとんどが皮下注射製剤であり、低い服薬コンプライアンスが課題である。それに比べ、経口投与製剤は投与の簡便さ、非侵襲的なことが利点で、高い服薬コンプライアンスを実現できる。そこで、ILsを基剤として用いることで腸管での吸収性向上を期待し、GLP-1受容体作動薬の一つであるLixisenatide(Lix.)をILsと混合した時の腸管での吸収性を評価した。【方法】Lix.をILsに溶解させ(Lix.-ILs)、Lix.の胃での分解を避けるため経腸投与、あるいはLix.をSalineに溶解させ(Lix.-Saline)皮下投与し、Lix.血中濃度をEIAキットを用いて評価した。また、それぞれ投与した後に糖負荷試験をすることで、血糖値の上昇抑制効果を評価した。【結果・考察】Lix.をILsと混合して顕微鏡で確認したところ、加温することでLix.の結晶が消失したことから溶解したと判断した。Lix.-ILsの経腸投与により、Lix.血中濃度が顕著に上昇したことから、ILsはLix.の腸管吸収を促進することを新たに見出した。この時、Lix.-ILsは投与後1時間でピークとなり、投与後6時間まで高いLix.血中濃度が維持された。糖負荷試験において、Lix.-ILsの経腸投与で血糖値の上昇抑制が認められ、同程度のLix.血中濃度を示すLix.-Salineの皮下投与と同等の薬理効果が確認された。以上の結果より、Lix.をILsに溶解させることでGLP-1受容体作動薬の腸管吸収性が上昇することを示した。
著者
清水 太郎 石田 竜弘
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.300-307, 2016-07-25 (Released:2016-12-25)
参考文献数
47
被引用文献数
2

PEG(poly(ethylene glycol))修飾は、バイオ医薬品の生体内安定性を向上させる最も標準的な方法である。しかし、PEG修飾体投与後にPEGに特異的な抗体(抗PEG抗体)が誘導され、繰り返し投与時のPEG修飾体の血中滞留性を著しく低下させることが明らかになっている。これまでに、実験動物だけでなく、ヒトにおいても抗PEG抗体の誘導が確認されている。また、さまざまなPEG修飾体投与によって、さまざまな特性を持った抗PEG抗体が誘導されることも明らかになっている。PEG修飾技術による治療効果の向上を損なわないためにも、抗PEG免疫応答の正しい理解と抑制法の開発は非常に重要である。本稿では、抗PEG抗体の特性・評価・抑制法について概説する。
著者
際田 弘志 石田 竜弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究により、"bio-inertであると考えられてきたポリエチレングリコール(PEG)であっても薬物キャリア表面に提示されることによってB細胞を直接刺激し、T細胞の補助を受けることなく、特異的なIgM(anti-PEG IgM)を分泌させることを明らかにした。また、バイオ応用に関しては、PEG修飾ナノキャリアによって感作されたB細胞がanti-PEG IgMをその表面に過剰に発現し、2回目投与PEG修飾リポソームを積極的に取り込む可能性があることが明らかとなり、この免疫応答を利用すれば静注型のアジュバントが開発できる可能性が示唆された。