著者
南雲 道彦
出版者
一般社団法人 日本高圧力技術協会
雑誌
圧力技術 (ISSN:03870154)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.190-199, 2008-07-25 (Released:2008-09-19)
参考文献数
18

The function of hydrogen in the embrittlement of steels has been examined with respect to plasticity involved in the fracture process. Fractographic features and effects of stress state on the hydrogen embrittlement indicate promoted crack formation by hydrogen associated with strain localization. Hydrogen also enhances the creation of vacancy-type defects during plastic deformation, and correlations are shown between the density of strain-induced vacancies and the susceptibility to the hydrogen embrittlement. Analyses of the role of hydrogen in the fracture process have shown that hydrogen promotes the initiation of micro-cracks and reduces the resistance to the successive crack growth, being originated in vacancy formation. Interrelations between hydrogen effects in fatigue and delayed fracture have been shown, supporting the common effects of hydrogen through enhanced creation of vacancies. Various models of the mechanism of hydrogen embrittlement have been briefly and critically reviewed. Characteristic features of hydrogen embrittlement are the best explained with the hydrogen-enhanced strain-induced vacancies model that claims the primary role of vacancies rather than hydrogen itself in the embrittlement.
著者
南雲 道彦
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.380-389, 2006 (Released:2007-06-28)
参考文献数
39
被引用文献数
6 7

液相からの水素侵入に関する基本的な電極反応を概説した. 水素の表面被覆率や吸収水素量を含めて, 水素侵入速度を表すパラメーターを決めるいくつかのモデルを紹介した. 腐食過程では, とくに水素侵入に及ぼす表面皮膜の影響を電極/電解液界面の電気二重層の構造と水素のアンダーポテンシャル析出から述べた.
著者
南雲 道彦
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.42-50, 2006 (Released:2007-06-28)
参考文献数
30
被引用文献数
8 11

材料中の水素の存在状態を解析する手法を概観した. トリチウムオートラジオグラフィ, 水素マイクロプリント法, 走査型二次イオン質量分析法など, いろいろな水素可視化技術の原理と特徴と, 水素昇温分析の解析法について述べた. 実際の適用例を実験技術や理論の限界や不確定さに重点をおきながら紹介した.
著者
南雲 道彦
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
まてりあ (ISSN:13402625)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.205-211, 2011 (Released:2012-12-06)
参考文献数
41
被引用文献数
4
著者
南雲 道彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

高強度鋼の遅れ破壊が環境変動によって促進されることをプリストレスドコンクリート(PC)鋼棒について明らかにした。環境因子として荷重及び水素添加ポテンシャルを取り上げ、最大荷重あるいは電解電流値を一定にして変動させた。環境変動の効果は、低歪み速度の引張り試験と定荷重の遅れ破壊試験の両方で確認した。環境変動の効果は水素の吸収速度や吸収量には影響を与えず、荷重変動の効果が試料表面の保護被膜の破壊によるとする従来の考えでは説明出来ない。水素添加ポテンシャル変動の場合も水素の吸収及び放出速度の解析から水素の拡散速度を求め、水素添加ポテンシャル変動の効果は受けないことを示した。環境変動の効果を水素の存在状態から調べるために、鋼中に吸収された水素の加熱放出特性を測定した。約100℃に放出ピークを持つ弱くトラップされている水素には、塑性変形に伴なって増加する水素と、もとの組織中の析出物などにトラップされている水素とがある。塑性変形跡に200℃での低温で回復処理を与えた試料に水素を吸蔵させて放出特性を調べることにより、塑性変形に伴なって増加する水素のトラップサイトは点欠陥であり、昇温過程で点欠陥が消滅するために水素が放出されることを明らかにした。荷重変動の効果は、回復処理で消滅する点欠陥密度を増加させることにあることを見出した。これらの結果から、水素脆性の機構は塑性変形によって導入される点欠陥を安定化してその密度を増加させるためであり、環境変動はこの効果を強調するものであるという新しい考えを提出した。