著者
長谷川 政美 加藤 真 湯浅 浩史 池谷 和信 安高 雄治 原 慶明 金子 明 宝来 聰 飯田 卓
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

マダガスカル固有のいくつかの生物群について、その起源とこの島における多様化の様相を明らかにする分子系統学的研究を行った。(1)マダガスカル原猿類(レムール類)とアフリカ、アジアの原猿類との進化的な関係を、ミトコンドリアのゲノム解析から明らかにし、レムール類の起源に関して新しい仮説を提唱した。(2)テンレック類についても分子系統解析によって、その起源とマダガスカルでの多様化進化を明らかにする研究を行った。テンレックについては、前肢運動器官の比較解剖学的解析を行い、この島における適応戦略を探った。(3)マダガスカル固有のマダガスカルガエル科から、アデガエル、マントガエル、イロメガエル3属のミトコンドリア・ゲノムを解析し、この科がアオガエル科に近縁であることを示した。(4)マダガスカル固有のバオバブAdansonia属6種とアフリカ、オーストラリアのものとの進化的な関係を、葉緑体ゲノムの解析から明らかにした。マダガスカルの6つの植生において、植物の開花を探索し、それぞれの植物での訪花昆虫を調査した。いずれの場所でも、訪花昆虫としてマダガスカルミツバチが優占していたが、自然林ではPachymelus属などのマダガスカル固有のハナバチが観察された.このほか,鳥媒,蛾媒,甲虫媒なども観察された。マダガスカル特有の現象として、長舌のガガンボ類Elephantomyiaの送粉への関与が、さまざまな植物で観察された。Phyllanthus属4種で、ホソガによる絶対送粉共生が示唆された。マダガスカルの自然と人間の共生に関する基礎的知見の蓄積のため、同国の海藻のフロラとその利用に関する研究、及びマングローブ域に特異的に生育する藻類の生育分布と交雑実験による生殖的隔離に基づく系統地理学的解析を行った。マダガスカル南西部漁村の継続調査から、生態システムと文化システムの相互交渉を浮かび上がらせた。
著者
大沼 亮 原 慶明
出版者
山形大学
雑誌
山形大学理学部裏磐梯湖沼実験所報
巻号頁・発行日
vol.17, pp.11-14, 2010-03

はじめに オオイシソウ属藻類は汽水域から淡水域に生育する紅色植物で、日本では7月から11月頃に池沼や河川で繁茂する。体は糸状で皮層細胞と中軸細胞に分化し、1から3回ないしはそれ以上に分枝する。体色は概ね暗青緑色で、体長は50cmを越えることもある。有性生殖は不詳で、単胞子による無性生殖で繁殖する。池の石や用水路のコンクリート壁表面にも付着するが、沈水植物の葉・茎あるいはヨシなどの主茎表面に付着することが多い。日本にはオオイシソウ属及び近縁の藻類として以下の5種が知られている ; Compsopogon oishii(オオイシソウ)の他に、C. aeruginosus(イパラオオイシソウ)、C. corticrassa(アツカワオオイシソウ)、C. hookeri(インドオオイシソウ)、Composopogonopsis japonica(オオイシソウモドキ)である。これらは分枝様式と皮層の形成様式、層数、皮層細胞の形などの形態形質で識別できる。オオイシソウは付着部に近い主軸では2から3回分枝する。皮層は2から3層よりなり、糸状体が肥大した根本付近の主軸では中軸細胞が死んで中空となる、特徴がある。主な分布域は関東以西とされているが、福島県(長谷井氏、私信)での生育も確認されている。今回オオイシソウの生育が確認できた白竜湖は山形県南陽市にあり、本種の新たな北限生育地となる。また、繁茂する時期は夏期から秋期とされていたが(前述の長谷井氏によれば越冬することもあるという)、今回の採集・生育確認は冬期であり、産地における生育時期の再調査が必要である。なお、オオイシソウの和名は明治33年武州矢口村(東京都狛江市)の清水川(公園内の水路として僅かに痕跡が残っている)で本種を発見した大石芳三氏に由来する。記載者の岡村金太郎博士は、隅田川や月島での生育も確認している。