著者
原 政人 赤堀 翔 深谷 宜央 山本 優
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.300-306, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
13

上下肢のしびれや痛みを主訴に来院する患者は多い. 鑑別診断を行うにあたり最も重要なのは, 神経診断を確実に行うことである. 症候と神経診断である程度の診断を固めた後に, 画像所見, 電気生理学的所見を総括し, 診断を確定する. 神経高位として, 脳・脊髄・神経根以外に上肢では, 胸郭出口症候群, 手根管症候群, 肘部管症候群, ギオン管症候群などを, 下肢では, 腓骨神経絞扼障害, 足根管症候群, 梨状筋症候群などを考慮する必要がある. 末梢神経絞扼障害においては, しびれ・痛みの神経支配領域を考えるのが診断にたどり着く近道である. Tinel徴候, 肢位による症状誘発テストは末梢神経疾患の診断においては今なお非常に有用である. 最近では, MRIや超音波検査などの画像診断が発達してきているが, 電気生理学的検査が今も重視されている. 末梢神経絞扼障害においては, 初期の症状においては局所安静が非常に有用で, その他, 理学療法, 薬物療法などの保存的治療が中心になる. 症状が強く日常生活に支障をきたしているもの, 筋力低下をきたしているもの, 症状が進行するものに対しては手術を考慮する. 日本は, 諸外国とは異なり, 神経診断と外科治療が分担されておらず, このためむしろフィードバックが確実に得られ, 診断能力の向上, ひいては手術手技の向上に寄与している可能性がある. 診断においては神経内科医, 治療に関しては整形外科医も関与しているが, 末梢神経疾患は神経全体を扱うことのできる脳神経外科医が取り組むべき疾患である.
著者
梅林 大督 原 政人 橋本 直哉
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.985-991, 2018-11-25

はじめに Augmented reality(AR)とは,現実環境において視覚・聴覚などの知覚に与えられる情報をコンピュータ処理により追加,削減,変化させる技術である5,11).コンピュータ上で作成した仮想画像,映像,音声などを現実世界に反映する技術を示す.すでにわれわれの生活に広く浸透しており,スマートフォンやカーナビゲーションなどに用いられている.カーナビゲーションの実際を図示する(図1).カーナビゲーションは古典的には紙媒体の地図を読むことからはじまる.その後,ディスプレイの地図上に矢印を走らせることで経路を確認するナビゲーションが一般化された.これに対してARカーナビゲーションでは,ディスプレイの代わりにフロントガラスなどへ映像を投影して現実空間と融合させる手法が利用される.位置情報に付帯する情報を,ナビゲーションシステムを用いてフロントガラスに投影して現実視野と融合させたもの,これがARカーナビゲーションである.このナビゲーションシステムは自動車だけでなく,手術におけるナビゲーションにも有用であり応用されてきた.本稿では,AR技術の脊椎手術への応用の実際について紹介する.