著者
犀川 哲典 中川 幹子 高橋 尚彦 原 政英
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.149-155, 2001-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
30

標準12誘導心電図の最大QT間隔と最小QT間隔の差と定義される“QT dispersion” (QT間隔のばらつき) が各種の心疾患の予後と関連するとされ注目されている, しかし一方QT dispersionの概念に疑問も提出されている.疫学的研究でもQT dispersionは予後と相関しないとの報告もなされ, 賛否両論がでている, QT dispersionは心筋細胞の細胞膜電流を担うイオンチャネルの不均一分布によると考えられる.よって心臓再分極時間の空間的“ばらつき”そのものに疑義はない, 問題はそれを体表面でとらえることができるか?である.理論的な考察でもCampbellらが当初提唱したQT dispersionは近年問題ありとされ, 新しい指標あるいは体表面心電図の処理方法が開発され報告されている.本稿ではQT dispersionに関する現状と問題点を整理する.今後の研究の一助になれば幸いである.
著者
近藤 秀和 高橋 尚彦 脇坂 収 岡田 憲広 油布 邦夫 中川 幹子 原 政英 犀川 哲典 谷口 弥生 大家 辰彦
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.S3_74-S3_74, 2011

[目的] ATP感受性心房頻拍(Iesaka AT)の電気生理学的特性について検討した.<BR>[方法] EPSでATP感受性心房頻拍と診断した10症例(年齢69±21歳, 男性5名, 女性5名). ATP(5mg)急速静注によるAT停止直前のAT-CL延長の程度と, AT中の最早期興奮部位の電位のfragmentationの有無を検討した.<BR>[結果] (1)最早期興奮部位での心房電位が明らかなfragmentationを示した症例は5例〔frag(+)群〕, そうでなかった症例は5例〔frag(−)群〕であった. (2)すべての症例で, ATP静注後, AT-CLが延長して頻拍を呈したが, 停止直前のAT-CL延長の程度は, frag(+)群の方が, frag(−)群に比し軽度であった(11.2±12.8 vs 38.6±16.1ms, p<0.01). (3)頻拍中の3D-Electro Anatomical Mappingを5例で行った〔3例がfrag(+)群, 2例がfrag(−)群〕. frag(+)群では, 最早期興奮部位近傍にlow voltage zoneが認められ, これに一致して伝導遅延が認められた. 一方, frag(−)群ではこれらの所見を認めなかった.<BR>[結語] ATP感受性ATは, 最早期興奮部位でのfragmentationの有無によりATPによる停止様式が異なり, 2つのカテゴリーに分類できる可能性が示唆された.