著者
保谷 徹 松井 洋子 柴山 守 谷本 晃久 岡 美穂子 五百籏頭 薫 原 正一郎 原山 浩介 須田 牧子 小野 将 山田 太造 横山 伊徳 佐藤 雄介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

本研究では、東京大学史料編纂所の海外史料マイクロフィルム約150万コマ等をデジタルアーカイヴ化し、国内採訪史料とともに学術資源として閲覧公開をはかる。また、在外日本関係史料の調査・収集を進め、マルチリンガル、マルチアーカイヴァルなプロジェクト研究を推進する。①デジタルアーカイヴ構築の面ではマイクロフィルム全2739本からのデジタル画像データのサーバ登録を完了し、このうち約85%については簡易目録ベースでの公開を開始している。今年度は新規収集分を含めて約38万コマを公開データに追加し、累計185万コマとなった。②社会連携・地域連携の試みとして、英国外務省文書FO46(TNA原蔵)に続き、横浜開港資料館所蔵FO262(英国外務省駐日公館文書)マイクロフィルム(約20万コマ)をデジタル化した。史料編纂所と開港資料館でのFO262全体(28万コマ)の検索・閲覧を実現する。③ロシア国立歴史文書館長らを招聘した「日露関係史料をめぐる国際研究集会」をした(5月、東京本郷、日本学士院・東京大学史料編纂所で共催)をはじめ、計3回の国際研究集会を実施して研究成果を発表・発信した。④『ロシア国立海軍文書館所蔵日本関係史料解説目録2』を刊行し、ロシア国立歴史文書館所蔵東アジア三国関係史料解説目録の作成・提供を受けた。⑤各重点プロジェクトで日本関係史料調査と目録研究を実施し、とくに、ロシア両文書館での継続的な史料収集やロシア国立サンクトペテルブルク図書館での史料画像データ収集、ハワイ州立文書館での新規撮影約3500コマなど、さらに古写真史料集『高精細画像で甦る幕末・明治初期日本―ブルガー&モーザーのガラス原板写真コレクション―』(洋泉社)の刊行などの成果があった。⑥前項の海外史料調査・収集の成果に対する社会的反響は大きく、今年度も毎日新聞・読売新聞・朝日新聞・NHK報道などで大きく取り上げられた。
著者
原山 浩介
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

占領期の闇取引・闇市には、行政上の様々な意図が作用する。ひとつは、石橋湛山に象徴されるような、戦後インフレを一過性のものと見る立場からの闇市合法化論、あるいは戦時における統制の破綻に根ざした統制廃止論がある。また少し違った角度から、財産税課税のための資産補足を免れるために、手持ち通貨を換物しようとする動きが起こり、これが闇取引とインフレを助長していることに対する懸念があった。そして勿論、闇市・闇取引を、経済秩序の混乱をもたらすもの、あるいは犯罪の温床とみる立場からの、闇市・闇取引撲滅論も存在した。しかし全体としては、GHQ/SCAPの一貫した闇市・闇取引取締りの方針に突き動かされる形で、全体としては規制・廃止が基調となる。一方、実際にこの闇市・闇取引を自らの生業としながら生きた人びとにとっては、行政による取締りは、その振れ幅にも関わらず、概して脅威と捉えられていた。また、そこに生きた人びとのタイプは実に様々で、あぶく銭を手にして放蕩する者、日々を生き抜くための仕事として取り組む者、あるいは闇市での経験がベースになって後に小売業等に邁進する者など様々であった。こうした現実は、闇市・闇取引が、単なる時代のあだ花とするには余りある、生活との連関がある。また、闇市・闇取引が当時の物流・配給の手段として重要な意味を持っていたのも事実である。そうしたことは、現場に近い行政機関の関知するところでもあり、地方行政レベルでは露店の集約を事業化するなどの動きが見られ、また警察は闇市・闇取引に対する過剰な取締りを行わないという方向性を打ち出していた。以上の諸点に鑑みたとき、闇市・闇取引を、そこを生きた人びとの感覚に一面的に依拠しながら、「解放空間」ないしは「闇社会」と規定するのは誤りであり、占領期という歴史的に特異な時期に現出した生活世界として把握することが必要になると言える。