著者
友枝 明保 小野 隼 杉原 厚吉
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.3-9, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
18

クレーター錯視やホロウマスク錯視は,知覚する立体の凹凸が反転して見える錯視として有名である.クレーター錯視では,照明がもたらす陰影によって凹凸が反転すること,ホロウマスク錯視では,凹凸の反転に加えて,観察者の視点位置の変化に伴った立体の回転運動が錯視として観察されることが知られている.「矢印の幻惑」(友枝・杉原,2012)は,計算によって得られたくぼんだ構造を持つ矢印型の新しい錯視立体であり,クレーター錯視やホロウマスク錯視と同様の錯視現象が観察される.さらに,「陰影付き矢印の幻惑」(友枝・小野・杉原,2013)は,適切な陰影を与えることで,平面に描かれた矢印と錯視立体を同一のデザインとして見せることに成功している.本稿では,これらの作品を創作する数理的な方法として,くぼみ構造を持つ矢印型の錯視立体を構成する幾何計算,および,凹凸復元の手がかりとなる各面の陰影を計算する方法について解説する.