著者
友重 秀介
出版者
公益社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.264-266, 2019-03-01 (Released:2019-03-07)
参考文献数
9

Bacteria possess a cell wall based on a rigid extracellular matrix comprised of peptidoglycan (PG), which maintains their structural integrity. Although PG is a molecule that has attracted interest from various research fields, such studies have been limited by the difficulty to isolate the desired PG fragments. In order to make PG fragments available, many efforts have been made to achieve their synthesis. This review summarizes the synthetic strategies reported for the construction of PG fragments by the Fukase and Fujimoto’s group as well as the Mobashery’s group. Furthermore, applications of synthetic PG fragments in chemical biology are described.
著者
平井 景梧 山下 博子 友重 秀介 三島 祐悟 大金 賢司 佐藤 伸一 橋本 祐一 石川 稔
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

アルツハイマー病やハンチントン病などの神経変性疾患は、従来の創薬手法では対応できない凝集性タンパク質が原因であり、根治療法の開発には新たな創薬アプローチが求められる。我々はこれまで、タンパク質分解誘導薬Proteolysis Targeting Chimera(PROTAC)が凝集性タンパク質の分解を誘導でき、神経変性疾患の創薬アプローチになりうることを示してきた。しかし、PROTACは連結化合物であるため分子量や極性が高く、神経変性疾患の病巣である脳へと到達しづらいと予想される。これを解決するうえで、別のタンパク質分解誘導薬である疎水性タグ(HyT)に着目した。HyTはPROTACのE3リガンドを分子量の小さい疎水性構造に置き換えた構造を持ち、標的タンパク質の表面に疎水性構造を提示する。これがタンパク質の変性状態を模倣し、タンパク質品質管理機構による認識とユビキチン―プロテアソーム系を介した分解へと導く。これを踏まえ、我々の凝集性タンパク質に対するPROTAC 1をHyTへと変換すれば分子量と極性を低下させ、中枢移行性を向上できると考えた。PROTAC 1を基に設計・合成したHyTはいずれも、ハンチントン病の原因となる凝集性タンパク質変異huntingtinの存在量を減少させた。また、脳移行性の予測に用いられる固定化人工膜カラムにより各化合物の脳移行性を推定したところ、いずれのHyTも1よりも脳移行性が良いと示唆された。この結果を参考に、一部のHyTについてマウスを用いた脳移行性試験を行ったところ、HyT 2が脳移行性を示すことを見出した。本発表ではその他の結果も併せて報告し、PROTACからHyTへの変換による活性や薬物動態への影響についても議論する。
著者
友重 秀介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.411, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
2

分子糊はタンパク質に結合することでその高次構造を変化させ,他のタンパク質との相互作用を誘導する化合物の総称である.なかでも,タンパク質分解系に関与する分子糊は相手タンパク質の分解も誘導するため,分子糊型タンパク質分解薬(以下,分子糊型分解薬)として注目されている.タンパク質分解薬としてはproteolysis targeting chimeras(PROTACs)が有名だが,PROTACsは2つの薬剤の連結分子であるため分子量が大きく,体内動態などに懸念がある.一方,分子糊は低分子化合物であり,ドラッグライクネスの観点でより好ましい.しかし分子糊の創製は難しく,過去の分子糊はいずれも偶然見いだされている.そのため,分子糊型分解薬の効率的創製を可能にする手法が求められている.本稿では,Winterらのグループが報告した分子糊型分解薬の探索研究について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Mayor-Ruiz C. et al., Nat. Chem. Biol., 16, 1199-1207(2020).2) Słabicki M. et al., Nature, 585, 293-297(2020).