著者
駒井 三千夫 神山(渡部) 麻里 神山 伸 大日向 耕作 堀内 貴美子 古川 勇次 白川 仁
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.248-251, 2008 (Released:2008-04-14)
参考文献数
13

ビタミンは,基本的には食品から摂取されなければならないが,大量に摂取することによって,基本的な生理機能の働きのほかに疾病を予防するなどの新規な機能を発揮することが知られてきた.また,体力増強や疲労回復などにもビタミンが利用されるようになってきた.このように,ビタミンを所要量の数倍から数十倍摂取すると,体内におけるビタミンの薬理作用が期待されている(薬理量,保健量の摂取).当論文では,ビオチンによる新規生理作用のうち,とくに高血圧症改善効果に関してまとめた.ビオチンの摂取によって耐糖能とインスリン抵抗性の改善はすでに報告されているが,今回は脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いて,高血圧改善効果を証明できたので報告する.すなわち,毎日3.3 mg/L水溶液の飲水からのビオチンの摂取によって,飼育2週目以降で高血圧症が改善されることを見出した.このように,本態性高血圧症を呈するSHRSPにおいてビオチン長期摂取により血圧上昇抑制効果が確認され,またそれによる動脈硬化の軽減が実際に示された.さらに,ビオチンの単回投与による血圧降下作用の検討によって,この作用はNOを介さない経路での可溶型グアニル酸シクラーゼ活性化を介したcGMP量増加の機構(Gキナーゼ介在による細胞内Ca2+濃度の低下)による可能性が示唆された.
著者
駒井 三千夫 伊藤 道子 古川 勇次
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

ラット生体内におけるK_1(フィロキノン=PK)からメナキノン-4(MK-4)への変換に関するトレーサー実験(1)と、各臓器で生成するMK-4の単離・精製と同定に関する実験(2)を行い、以下の結果を得た。(1)PKからMK-4への変換に関するトレーサー実験^<14>C標識PK(側鎖に標識したものとナフトキノン骨格に標識したものを別々に用いた)を用いたin vivoならびにin vitroの実験から、PKからMK-4への変換は各組織において行われることと、PKはそのイソプレン側鎖がはずれて一度K_3になってから別のイソプレン側鎖(ゲラニルゲラニル基)が付加すると考えられる結果が得られた。すなわち、PKのイソプレン側鎖は3カ所が不飽和化されてそのままMK-4になるのではなく、各組織において一度K_3になったものにゲラニルゲラニル基が付加して生成される機構を明らかにすることができた。また、この変換能は肝臓でよりもむしろ他の臓器(膵臓、唾液腺、腎臓、精巣、脳、等)で高いことが示され、MK-4は肝臓における凝固因子としての作用の他に、多くの臓器においてこの他の未知の生理作用を発揮しているものと予測される。(2)の単離・精製と同定に関する実験昨年度の結果からMK-4生成能が最も高いと考えられた膵臓(MK-4を増やすためにK含有固型飼料を8日間与えた)を用いて、HPLCにおけるMK-4の画分を分取し、不純物(他の脂溶性ビタミン類)を取り除いた後、質量分析装置によって物質の同定を試みた。その結果、PKを経口投与後に各臓器において増えるHPLC上でMK-4様物質であると予測された物質は、MK-4であると同定された。