著者
古川 誠志
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.77-79, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

米国では40年前と比べて35歳以上の初産婦の数は9倍増加した。一方本邦では35―39歳階級の出生率増加が他の年齢階級と比べて著しい。このような高齢出産の増加は女性の高学歴化とそれに伴う社会進出に加え,近年の生殖補助医療の発達が高齢女性の妊娠率を上昇させたことも影響している。さて,高齢出産には種々の問題がつきまとう。 妊娠中に起こる産科合併症のほとんどが年齢依存性に上昇する。高齢妊娠だと妊娠初期の流産率が上昇する。これには加齢による卵巣機能や子宮機能の低下とダウン症候群を始めとした染色体異常の頻度が増すことが関与する。実際,40歳で単胎妊娠の場合,児がダウン症候群となるリスクはおよそ1/100であり,これは20歳でのダウン症の発症リスク(1/1700)に比べて著しく高い。また妊娠糖尿病,妊娠高血圧症候群,前期破水,切迫早産,前置胎盤,常置胎盤早期剥離や胎内死亡といった産科合併症も年齢依存性に発症頻度が上昇する。更に高齢では慢性高血圧症や2型糖尿病,肥満などの内科合併症を持つ女性の頻度も増加し,妊娠中の内科合併症の悪化や妊娠高血圧症候群などの産科合併症が高率に出現する。これらは医原的な早産出生を余儀なくされる。このように高齢妊娠では母体の罹病率の上昇のみならず胎児の罹病率も上昇させ,双方の健康障害が危惧される。当面晩産化傾向は続くために,妊娠に伴う母児双方の諸問題を広く認知させ,個人レベルでも対策を講じる必要がある。
著者
鈴木 夏生 古川 誠志 秦 麻理 高宮 万莉 大野 珠美 大橋 昌尚 上原 ゆり子 山田 陽子 三島 みさ子
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.206-211, 2023 (Released:2023-09-08)
参考文献数
26

2022年1月から7月までに新型コロナ感染陽性と診断された妊婦53例と出産予定日をほぼ一致させた非感染妊婦106例を抽出し症例対照研究を行い,ワクチン接種(1回以上の接種)と最終接種からの期間(3カ月以内)の感染予防に対する有効率をオッズ比から算出した.検討集団でのワクチン接種の感染予防に対する非調整の有効率は60%,最終接種から3カ月以内の非調整の有効率は57%となった.これらを年齢と仕事の有無で調整すると,ワクチン接種の有効率は59%(95%信頼区間:-6.0%〜84%),最終接種から3カ月以内の有効率は54%(-6.0%〜80%)となり,感染予防に有効である傾向は認めた.
著者
古川 誠志
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.77-79, 2016

米国では40年前と比べて35歳以上の初産婦の数は9倍増加した。一方本邦では35―39歳階級の出生率増加が他の年齢階級と比べて著しい。このような高齢出産の増加は女性の高学歴化とそれに伴う社会進出に加え,近年の生殖補助医療の発達が高齢女性の妊娠率を上昇させたことも影響している。さて,高齢出産には種々の問題がつきまとう。 妊娠中に起こる産科合併症のほとんどが年齢依存性に上昇する。高齢妊娠だと妊娠初期の流産率が上昇する。これには加齢による卵巣機能や子宮機能の低下とダウン症候群を始めとした染色体異常の頻度が増すことが関与する。実際,40歳で単胎妊娠の場合,児がダウン症候群となるリスクはおよそ1/100であり,これは20歳でのダウン症の発症リスク(1/1700)に比べて著しく高い。また妊娠糖尿病,妊娠高血圧症候群,前期破水,切迫早産,前置胎盤,常置胎盤早期剥離や胎内死亡といった産科合併症も年齢依存性に発症頻度が上昇する。更に高齢では慢性高血圧症や2型糖尿病,肥満などの内科合併症を持つ女性の頻度も増加し,妊娠中の内科合併症の悪化や妊娠高血圧症候群などの産科合併症が高率に出現する。これらは医原的な早産出生を余儀なくされる。このように高齢妊娠では母体の罹病率の上昇のみならず胎児の罹病率も上昇させ,双方の健康障害が危惧される。当面晩産化傾向は続くために,妊娠に伴う母児双方の諸問題を広く認知させ,個人レベルでも対策を講じる必要がある。
著者
古川 誠志 斉藤 仲道 丸山 義隆 小田 東太
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.1091-1094, 1996-08-10

薬剤性膵炎のなかでエストロゲン製剤の占める割合は約5%であり,また高脂血症が膵炎に合併する頻度は4〜53%と報告されている.なかでもIV型高脂血症の患者にエストロゲン製剤投与後に急性膵炎を発症している報告が多い1).近年トリグリセライドと凝固線溶系,動脈硬化との関係やエストロゲン投与がもたらす血清脂質変化が明らかにされた.本症例は高トリグリセライド血症の患者に起きたエストロゲン誘発性急性膵炎であるが,エストロゲン,高トリグリセライド血症.膵炎の関係を考えるうえで興味ある症例と思われた.また本例を通じて,エストロゲン製剤を多用する産婦人科領域でもその適切な使用と代謝に及ぼす影響についての調査の必要性を感じた.
著者
門田 実 米山 和良 古川 誠志郎 河邊 玲
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.7-17, 2013
参考文献数
31

本研究ではクロマグロの鉛直運動パターン解析に必要なデータを,東シナ海にてクロマグロ7個体の遊泳深度を一秒間隔で収集した。クロマグロの水平方向の回遊に着目した研究は多く存在するが,本研究では膨大な鉛直方向のstep-lengthに関するデータ解析を行った。自然界に存在する多くの生態的な行動特性は餌との遭遇確率を最適化するためにレヴィウォークに従うランダムウォークとなることが多くの研究で示されている。しかしながら我々の分析結果は,step-lengthが指数関数的減衰で分布し,運動パターンはランダムウォークに近い事を示した。