著者
山田 陽子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.380-395, 2002-12-31

本論の目的は, 「社会の心理学化」 (P. L. Berger) をE.デュルケム以来の「人格崇拝」の再構成から位置付けることである.心理学的知識が普及した社会では, 「心」に多大な関心が払われる.その侵犯を回避すべく慎重な配慮がなされ, 「心」は聖なるものとして遇される.「心」が重要だと語りかける一方で, それを操作対象とする「心」をめぐる知の普及はいかに解釈されうるか.ここではデュルケムの「人格崇拝」論にE.ゴフマンの儀礼論, A.ホックシールドの感情マネジメント論を接続し, それぞれに通底する「人格崇拝」論の構造と異同を明らかにすることによって解答を試みる.<BR>デュルケムは「人格崇拝」概念において, 近代社会では個人の人格に「神聖の観念」が宿ると指摘した.ゴフマンはそれを継承して儀礼的行為論を展開し, 世俗化の進行する大衆社会において唯一個人が「神」である様子を詳細に記述・分析した.デュルケムの宗教論とゴフマンの儀礼的行為論の影響が認められるホックシールドの感情マネジメント論では, 人格や「カオ」に加えて「心」に宗教的配慮が払われることが示唆されている.<BR>ホックシールドを「人格崇拝」論から読む試みを通じ, デュルケムやゴフマンの現代的意義を再評価しつつ, 心理学的知識の普及に関する新たな分析視角の導出と理論的枠組みの構築をめざす.
著者
山田 陽子
出版者
広島国際学院大学現代社会学部
雑誌
現代社会学 (ISSN:13453289)
巻号頁・発行日
no.10, pp.133-144, 2009

本報告は、広島国際学院大学現代社会学部・社会学合同演習「現代社会にみる恋愛」の一環として、2008年6月21日(土)に広島国際学院大学立町キャンパスにて行なわれた公開講義「純化する愛、その不安」の概要である。本講義では、恋愛について社会学的な観点から講じた。主として、1)ロマンティック・ラブ・イデオロギーと恋愛結婚の誕生、2)「純粋な関係性」と「コンフルエント・ラブ」(A.Giddens 1992)、3)コンフルエント・ラブが導く関係の不確定性、以上三点について講じている。受講者は、社会学にまったくなじみのない高校生や一般の方であったため、「恋愛チェックシート」(資料1)を作成し、講義の前に自らの恋愛観を振り返ってもらうという、最も身近なところから議論を出発させた。受講者一人一人が普段何気なく抱いている恋愛に関する様々な規範意識や感覚が、現代社会の成員の多くに共有されている社会意識であることを示し、そのことを通じて、通常は最も個人的で私的なものと考えられている感情が社会的・外的要因によって規定される側面を持つこと(E.Durkheim 1912)、もしくは自然で内発的なものであるとみなされている感情が社会的に決められた「感情規則」(A.Hochschild 1983)に沿う形で経験されていることに対する認識を促すことを目的とした。さらには、現代人に共有されている恋愛観や関係性の特徴、不安の来歴について講じることによって、社会規範や社会の在り方は常に「別様でもありうること」(N.Luhmann)を提示し、受講者自らが生きる社会を客観的に観察する契機となればとの期待をこめた。
著者
松永 宣史 山田 陽子 山田 加奈子 内海 健太 中南 秀将 野口 雅久 笹津 備規
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.362-368, 2011 (Released:2012-02-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

接触感染は,院内感染の最も主要な感染経路である.接触感染の防止には,患者や医療従事者が頻繁に触れる場所(高頻度接触表面)の汚染状況を把握し,医療従事者の病院内環境に対する意識を向上させる必要がある.本研究では,院内感染の主要な原因菌であるPseudomonas aeruginosa,メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA),およびSerratia marcescensについて,高頻度接触表面の環境調査を行った.2005年から2008年の4年間,のべ1,513試料から,MRSA 13株(0.9%),P. aeruginosa 69株(4.6%),およびS. marcescens 24株(1.6%)が検出された.検出された細菌の特徴を調査するため,抗菌薬感受性試験およびパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を行った.その結果,環境分離MRSAの抗菌薬感受性と遺伝学的背景は,臨床分離株と類似していた.一方,環境分離P. aeruginosaおよびS. marcescensの80%以上が,調査した抗菌薬全てに感受性を示した.また,環境分離P. aeruginosaと臨床分離株の遺伝学的類似率は低いことが明らかとなった.したがって,高頻度接触表面に付着していたMRSAは患者や医療従事者由来株であり,P. aeruginosaおよびS. marcescensの大部分は,環境細菌であることが強く示唆された.さらに,細菌検出数の経時変化を調査したところ,初回調査時の18株/89試料(20.2%)が最も多く,調査2回目は7株/89試料(4.5%)と大きく減少した.これは,MRSAの検出数が著しく減少したことに起因していた.したがって,環境調査を行うことによって,職員の環境に対する意識が向上し,各部署における清掃および消毒が頻繁に行われるようになったと考えられる.
著者
山田 陽子
出版者
広島国際学院大学現代社会学部
雑誌
現代社会学 (ISSN:13453289)
巻号頁・発行日
no.11, pp.3-14, 2010

本稿の目的は、ソーシャルネットワーキングを介した時間管理術の自主的勉強会における参与観察や参加者へのインタビュー調査をもとに、昨今の「自己啓発」の内実について明らかにすることである。調査の実施期間は2008年6月から2009年3月、インタビュー対象は大手企業勤務のシステムエンジニアやIT系の起業家である。近年、ビジネスマンの自己啓発や仕事の効率性・生産性の向上を目的とした諸々のテクニックの集積体は「時間管理術」や「ライフハック」といった名称で呼ばれることが多い。本稿では、時間管理術やライフハックとは何なのか、人々は時間管理術やライフハックに何を求め、どのような点に魅力を感じているのか、その社会的機能とはどんなものか、時間管理術やライフハックという知が人々をどのように結び付けているのか、時間管理術やライフハックという知が出てきた社会的背景はどのようなものか、時間管理術やライフハックと現代人の自己がどのように関連しているのか等について知識社会学の観点から明らかにする。In this paper, from a viewpoint of sociology of knowledge, I survey the aspects of worker's self-enlightenment today based on the qualitative research concerning the social networks of time management and life-hacks. Methods of self-enlightenment or of working with great efficiency for businessperson frequently are called "life-hacks". In this paper,I interviewed two systems engineers worked in world-wide electronic company and an entrepreneur. In this paper, the following the points at issue are examined."What is the life-hacks?,". "What are social functions of life-hacks?", "What are social backgrounds of life-hacks?", "How does the life-hacks connect people?" and so on.