著者
古賀 雄二 村田 洋章 山勢 博彰
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.93-101, 2014-05-01 (Released:2014-07-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的:せん妄はICU患者の入院期間延長や生命予後悪化につながるが,スクリーニングされずに見落とされ,治療されないことも多い.Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit(CAM-ICU)は,ICUでのせん妄評価法として国際的に認められた方法である.CAM-ICUには評価手順を効率化したConfusion Assessment Method for the Intensive Care Unit Flowsheet(CAM-ICUフローシート)が作成されている.本研究は日本語版CAM-ICUフローシートの妥当性・信頼性の検証を目的とする.研究方法:日本の2ヵ所の大学病院ICUで実施された.妥当性評価として,精神科医が評価するDSM-IV-TR(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition, Text Revision)をせん妄診断の標準基準として,リサーチナースおよびスタッフナースの日本語版CAM-ICUフローシート評価と比較し,感度・特異度を算出した.また,リサーチナースとスタッフナースの日本語版CAM-ICUフローシートの評価を比較し,評価者間の信頼性を評価した.結果:評価対象者数は82名であり,DSM-IV-TRでのせん妄有病率は22.0%であった.興奮・鎮静度はRASS(Richmond Agitation Sedation Scale)-0.33~-0.28であった.DSM-IV-TRに対するリサーチナースとスタッフナースの日本語版CAM-ICUフローシート評価結果は,感度が78%と78%,特異度が95%と97%であった.日本語版CAM-ICUフローシートに関するリサーチナースとスタッフナースの評価者間の信頼性は高かった(κ=0.81).結論:日本語版CAM-ICUフローシートは,せん妄診断の標準基準(DSM-Ⅳ-TR)に対して妥当性を有し,評価者間の信頼性も高く,ICUせん妄評価ツールとして使用可能である.
著者
古賀 雄二 茂呂 悦子 有田 孝 小幡 祐司 川島 孝太 雀地 洋平 古厩 智美 藤野 智子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.47-56, 2018-03-01 (Released:2018-06-02)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

適切な診療報酬請求を行う上で,せん妄患者の明確化は不可欠である.平成28年度診療報酬改定後のせん妄評価およびせん妄ケアの現状調査を行うことを研究目的として,「急性期に密度の高い医療を必要とする状態」の患者を多くケアするクリティカルケア看護専門団体(急性・重症患者看護専門看護師,集中ケア認定看護師,救急看護認定看護師)の全会員を対象に,平成28年度診療報酬改定後のせん妄評価・ケアの現状を調査した.Web式無記名式質問紙調査を行い,単純集計と質的記述的分析を行った.対象者数1,798人,回答率9.6%,有効回答率100%であった.周術期全体で継続的に妥当性・信頼性のあるせん妄評価は行われていなかった.診療報酬請求の適切性の向上のために,せん妄評価ツールの導入に加えて,ツール評価精度の維持が重要であり,学会等を通じた教育支援を行う必要がある.また,看護必要度を通した医療経済的・政策的なせん妄評価定着への支援は,多職種連携・チーム間連携が進むせん妄ケアの共通言語化を促し,患者ケアを推進する可能性がある.
著者
古賀 雄二 植村 桜 伊藤 聡子 井上 和代 大西 純子 小幡 祐司 杉江 英理子 杉野 由起子 藤野 智子 古厩 智美 茂呂 悦子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.37-48, 2017-03-31 (Released:2017-04-19)
参考文献数
18
被引用文献数
2

クリティカルケア領域のせん妄ケアにおける急性・重症患者看護専門看護師(CCNS)の役割に関する実態調査(研究以外)を目的に自記式質問紙調査を行い,質的帰納的に分析した.その結果,実践29個,相談8個,調整5個,倫理調整2個,教育8個のカテゴリーが抽出された. CCNSのせん妄ケアはせん妄予防ケア・発症後ケア・離脱後ケアの3局面に対して,『せん妄要因のモニタリングと管理ケア(基盤的要素)』・『認知と生活リズムの再構築ケア(核心的要素)』・『Patient-Family empowerment(補完的要素)』により構成され,螺旋的に有機的相互作用を続けながら,せん妄リスクファクターからの解放と患者生活の再構築を促進していた.また,CCNSは家族をケア提供者として捉えてせん妄ケアチームへの参画を促し,せん妄にチームで取り組む体制を構築していた. CCNSのせん妄ケアは,患者ニードの追求とそれに基づく看護ケアに包含され,せん妄ケアの方向性は自己実現のニードの具体形である患者生活の再構築であることから,包括的患者生活管理である.
著者
古賀 雄二 村田 洋章 山勢 博彰
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.103-111, 2014-05-01 (Released:2014-07-11)
参考文献数
32
被引用文献数
10

目的:せん妄はICU患者の入院期間延長や生命予後悪化につながるが,スクリーニングされずに見落とされ,治療されないことも多い.ICDSC(Intensive Care Delirium Screening Checklist)は,ICUでのせん妄評価法として国際的に認められた方法である.本研究は日本語版ICDSCの妥当性・信頼性の検証を目的とする.研究方法:日本の2ヵ所の大学病院ICUで実施された.妥当性評価として,精神科医が評価するDSM-IV-TRをせん妄診断の標準基準として,リサーチナースおよびスタッフナースの日本語版ICDSCのカットオフ値を検討し,感度・特異度を算出した.また,リサーチナースとスタッフナースの日本語版ICDSCの評価を比較し,評価者間信頼性を算出した.結果:評価対象者数は82名であり,DSM-IV-TRでのせん妄有病率は22%であった.興奮・鎮静度はRASS-0.33±2.5であった.DSM-IV-TRに対して日本語版ICDSCのカットオフ値は2点の場合に感度と特異度の和が最大となったが,特異度が高いのはカットオフ値を3点とした場合であった.カットオフ値3点でのリサーチナースとスタッフナースの日本語版ICDSC評価結果は,それぞれ感度が66.7%と72.2%,特異度が78.1%と71.9%であり,評価者間信頼性はκ=0.55であった.結論:日本語版ICDSCは外科系ICU患者において,せん妄診断の標準基準であるDSM-Ⅳ-TRと比較して妥当性と評価者間信頼性を有するせん妄評価ツールであり,記録物からレトロスペクティブにせん妄評価が可能なツールである.高い特異度を確保するという臨床上の理由から,カットオフ値を3点として使用することを推奨する.