著者
門田 宰 吉岡 祐亮 藤田 雄 落谷 孝広
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.3, pp.119-122, 2017 (Released:2017-03-04)
参考文献数
31
被引用文献数
2 2

エクソソームは,ほぼ全ての細胞から分泌される脂質二重膜で囲まれた100 nm前後の小胞であり,タンパク質,核酸,脂質,代謝産物などにより構成される.エクソソームの産生機構については,エンドサイトーシス経路を介して形成され,多胞体が原形質膜と融合して細胞外に放出されると考えられている.近年,エクソソームは細胞間で移送され機能することから,細胞間情報伝達に関与することが判明した.現在,様々な疾患の病態形成へのエクソソームの関与が解明され始めており,エクソソームの各種特徴に着目した診断や治療,そして核酸医薬の新規ドラッグデリバリーシステムとしても研究されている.まだ未解明の点が多くさらなる研究の発展が必要であるものの,今後の臨床応用が期待される.
著者
吉岡 祐亮 落谷 孝広
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-46, 2020-01-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
65
被引用文献数
2 1

現在、核酸医薬品や抗体医薬品などの分子標的医薬品の開発が盛んに行われており、その治療効果が期待されている。実際、マウスを用いた治療効果の測定では一定の評価が得られているが、それら評価は腫瘍局所に投与したりして評価している場合もあり、局所投与に限定されるのが現状である。しかし、ヒトの治療を想定したときに、局所投与可能な場合はほとんどなく、開発した医薬品を患部局所に効率的に送達するデリバリーシステムの開発が必要である。エクソソームは細胞が分泌するナノスケールの小胞であり、生体における天然の分子デリバリーシステムを担っている。このエクソソームの特徴に注目した新たなデリバリーシステムの開発が世界中で行われており、治療応用を示した実例も報告されている。しかし、技術的な問題点なども多く残っており、実用化に向けた研究段階である。本稿では、エクソソームを用いたドラッグデリバリーシステムの可能性、その利点や問題点などを述べる。