著者
西田 奈央 落谷 孝広
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.235-241, 2015 (Released:2016-10-04)

Exosomes are lipid bilayer vesicles, which are secreted outside of the cells. Exosomes have a size of 40~200 nm in diameters. Exosomes contain miRNAs, mRNAs, proteins and DNAs, and transfer their contents to other cells. Exosomes are expected to be useful and effective cancer biomarker, because exosomes are detected in body fluids, and because molecules contained in exosomes reflect the components of originated cells. In addition, exosomes may be able to apply to novel therapeutic strategies. In this review, we explain the basic characteristics of exosomes and recent advances in diagnostics and therapeutics using exosomes.
著者
門田 宰 吉岡 祐亮 藤田 雄 落谷 孝広
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.149, no.3, pp.119-122, 2017 (Released:2017-03-04)
参考文献数
31
被引用文献数
2 2

エクソソームは,ほぼ全ての細胞から分泌される脂質二重膜で囲まれた100 nm前後の小胞であり,タンパク質,核酸,脂質,代謝産物などにより構成される.エクソソームの産生機構については,エンドサイトーシス経路を介して形成され,多胞体が原形質膜と融合して細胞外に放出されると考えられている.近年,エクソソームは細胞間で移送され機能することから,細胞間情報伝達に関与することが判明した.現在,様々な疾患の病態形成へのエクソソームの関与が解明され始めており,エクソソームの各種特徴に着目した診断や治療,そして核酸医薬の新規ドラッグデリバリーシステムとしても研究されている.まだ未解明の点が多くさらなる研究の発展が必要であるものの,今後の臨床応用が期待される.
著者
小坂 展慶 落谷 孝広
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-133, 2014-03-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
23

がん細胞とその周辺細胞の密接な関係は、これまでサイトカインやケモカインなどで説明されてきた。しかし、その複雑な関係は複数種類の分子では説明がつかず、新たな相互関係が探索されてきた。最近、エクソソームと呼ばれる100nmの細胞外小胞顆粒の存在が再注目され、特に、がん細胞における役割が近年急速に解明されている。本稿では、がん細胞がどのようにしてエクソソームを悪用しているのかを述べるとともに、エクソソームを標的とした治療と診断の展望に関して述べる。
著者
吉岡 祐亮 落谷 孝広
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-46, 2020-01-25 (Released:2020-04-25)
参考文献数
65
被引用文献数
2 1

現在、核酸医薬品や抗体医薬品などの分子標的医薬品の開発が盛んに行われており、その治療効果が期待されている。実際、マウスを用いた治療効果の測定では一定の評価が得られているが、それら評価は腫瘍局所に投与したりして評価している場合もあり、局所投与に限定されるのが現状である。しかし、ヒトの治療を想定したときに、局所投与可能な場合はほとんどなく、開発した医薬品を患部局所に効率的に送達するデリバリーシステムの開発が必要である。エクソソームは細胞が分泌するナノスケールの小胞であり、生体における天然の分子デリバリーシステムを担っている。このエクソソームの特徴に注目した新たなデリバリーシステムの開発が世界中で行われており、治療応用を示した実例も報告されている。しかし、技術的な問題点なども多く残っており、実用化に向けた研究段階である。本稿では、エクソソームを用いたドラッグデリバリーシステムの可能性、その利点や問題点などを述べる。
著者
落谷 孝広
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.10-14, 2011 (Released:2011-04-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

細胞外に分泌される分泌型microRNAは体液中を循環するが, エクソソームのようなナノサイズの小胞顆粒に包埋されるため, 多くの消化酵素が存在する血漿・血清中でも安定である. 特に, がんをはじめとする疾患の病態や進行度合いなど, ヒトの生理状態によってその発現量や種類が大きく変化するため, 血液を利用した非浸襲的な診断用バイオマーカーとしても期待されている.本稿では, 小さな分泌型microRNAの発見がもたらすメガインパクトを中心に, 疾患診断への応用や, その生物学的意義についても言及する.
著者
河原田 一司 是石 裕子 労 昕甜 上田 忠佳 住田 能弘 大津 見枝子 明石 英雄 出澤 真理 Luc GAILHOUSTE 落谷 孝広
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-202, 2015 (Released:2015-08-03)

【背景/目的】近年、ヒト初代肝細胞に替わる細胞として、多能性幹細胞から分化誘導・成熟化した肝細胞の利用が検討されている。我々は、間葉系組織に存在する多能性幹細胞「Muse細胞」に注目し、効率的な肝前駆細胞への分化誘導法を検討した。一方、我々はこれまでに、肝臓の成熟過程に関与するmicroRNAを網羅的に解析した結果、microRNA-148a(miR-148a)が肝細胞の成熟化を促進することを明らかにしている。そこで、Muse細胞を肝前駆細胞へ分化誘導し、得られた肝前駆細胞にmiR-148aを作用させ、肝細胞の成熟化を試みた。【方法】ヒト骨髄由来間葉系細胞からSSEA3陽性のMuse細胞を単離した。Muse細胞に発現する遺伝子Xを抑制し、分化誘導因子と組み合わせ肝前駆細胞への分化誘導を試みた。次に、分化誘導した肝前駆細胞にmiR-148aを作用させ成熟化させた。Muse細胞由来肝細胞にCYP酵素誘導剤を添加し、酵素誘導能を評価した。【結果】Muse細胞に発現する遺伝子Xを抑制することで、AFP、ALB、CK18、CK19陽性の肝前駆細胞への分化誘導を確認した。また、Muse細胞由来肝前駆細胞にmiR-148aを作用させることにより、肝特異的遺伝子の発現量は上昇し、miR-148aによる成熟化の促進を認めた。以上の結果から、肝細胞を誘導する出発の幹細胞として、Muse細胞の有用性が示唆された。今後は、フェノバルビタールやリファンピシンによるCYP2B6やCYP3A4誘導能のデータを得ることで肝毒性・薬物動態評価系への応用性を検討する予定である。
著者
勝田 毅 落谷 孝広
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.140-151, 2014-03-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1

エクソソームと呼ばれる細胞分泌小胞が、細胞間相互作用において重要な役割をもつことが明らかとなり、急速に注目を集めている。エクソソームにはタンパク質、microRNA、mRNAなどの分子が含まれ、由来する細胞と類似の機能が備わっていることがわかってきた。そのため、幅広い疾患に対する細胞治療のソースとして注目されている間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)が分泌するエクソソームには、MSCと同様の治療効果が備わっていると期待される。本稿では、最近明らかになってきた、MSC由来のエクソソームが見せるさまざまな疾患に対しての治療効果について最新の知見を紹介する。さらに、MSCのエクソソームを用いた治療戦略と、その実現に向けて解決すべき課題について議論する。