著者
吉村 光敏 八木 令子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>千葉県市原市田淵にある上総層群国本層の露頭は、更新世前期・中期境界の指標となる「地磁気逆転地層」がよく観察され、国の天然記念物指定地となっている。また2020年1月には、この地層を含む「千葉セクショ ン」を、「国際境界模式層断面とポイント(GSSP)」とすることが 正式に認定され、更新世中期の地層に、「チバニアン(期)」の名称 が使われることになった。このような話題を受けて、数年前より現地を訪れる人が増えており、現在、地元自治体を中心に観察路整備、ビジターセンターのオープン、ガイド育成などが進められている。そこで今回、これらの地層が見られる場所がどのようなところかを示すため、露頭周辺の地形とその成り立ちについて明らかにした。 </p><p>露頭が位置する崖は、房総丘陵を北流する養老川本流沿いの河岸段丘分布域にあたる。地磁気逆転を示す露頭は、完新世の最も新しい段丘面である久留里Ⅴ面(鹿島1981)の段丘崖にあり、 段丘面と現河床の比高はおよそ5メートルである。養老川本流右岸は、久留里Ⅲ面期の蛇行流路が短絡した後、比高60mに及ぶ本流下刻と側刻により蛇行切断段丘が形成された。さらに蛇行跡旧河床面は、支流により開析され、曲流する侵食谷となった。谷底は、江戸時代に川廻し新田として河道変更と埋め土が行われ、小規模な連続型の川廻し地形が形成された。これら川廻し地形のうち、フルカワは近年盛り土され原形を留めないが、シンカワのトンネルなどは現在も残り、観察することができる。ここには洪水対策としての微地形も見られ る。また地磁気逆転地層の露頭近くに位置する不動滝は、流路変更による人工の滝である。このことから、養老川中流の集落では、中世〜近世の頃には、様々な地形改変が行われていたと考えられる。</p><p> なお2019年9月から10月にかけて連続して発生した台 風15号、19号、及び21号 関連の集中豪雨によって、旧河道跡は水没し、支流の川廻し地形跡にも、想定された洪水水位の上まで水が上がったことが観察されている。</p>
著者
吉村 光敏 八木 令子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.206, 2020 (Released:2020-03-30)

千葉県市原市田淵にある上総層群国本層の露頭は、更新世前期・中期境界の指標となる「地磁気逆転地層」がよく観察され、国の天然記念物指定地となっている。また2020年1月には、この地層を含む「千葉セクショ ン」を、「国際境界模式層断面とポイント(GSSP)」とすることが 正式に認定され、更新世中期の地層に、「チバニアン(期)」の名称 が使われることになった。このような話題を受けて、数年前より現地を訪れる人が増えており、現在、地元自治体を中心に観察路整備、ビジターセンターのオープン、ガイド育成などが進められている。そこで今回、これらの地層が見られる場所がどのようなところかを示すため、露頭周辺の地形とその成り立ちについて明らかにした。 露頭が位置する崖は、房総丘陵を北流する養老川本流沿いの河岸段丘分布域にあたる。地磁気逆転を示す露頭は、完新世の最も新しい段丘面である久留里Ⅴ面(鹿島1981)の段丘崖にあり、 段丘面と現河床の比高はおよそ5メートルである。養老川本流右岸は、久留里Ⅲ面期の蛇行流路が短絡した後、比高60mに及ぶ本流下刻と側刻により蛇行切断段丘が形成された。さらに蛇行跡旧河床面は、支流により開析され、曲流する侵食谷となった。谷底は、江戸時代に川廻し新田として河道変更と埋め土が行われ、小規模な連続型の川廻し地形が形成された。これら川廻し地形のうち、フルカワは近年盛り土され原形を留めないが、シンカワのトンネルなどは現在も残り、観察することができる。ここには洪水対策としての微地形も見られ る。また地磁気逆転地層の露頭近くに位置する不動滝は、流路変更による人工の滝である。このことから、養老川中流の集落では、中世〜近世の頃には、様々な地形改変が行われていたと考えられる。 なお2019年9月から10月にかけて連続して発生した台 風15号、19号、及び21号 関連の集中豪雨によって、旧河道跡は水没し、支流の川廻し地形跡にも、想定された洪水水位の上まで水が上がったことが観察されている。
著者
吉村 光敏 白井 豊
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

(目的)既存の干葉県・埼玉県・栃木県・群馬県・神奈川県等の道標データに新発見の神奈川県、茨城県、干葉県内データを加える。東京都の道標のデータベース化を行う。(作業内容)1。資料収集:東京都、神奈川県の道標所在調査データの収集を図書館等で行った。2。現地調査:特に千葉県・埼玉県内の道標につき、-部地域について道標の旧位置確認や銘文の不明瞭個所の再検討作業を行った。3。データベース入力:東京都を除く関東各都県(主に神奈川県)のデータ入力を行う。(データ処理)1。関東地方の都市交通圏図の作成を行いつつある。2。千葉県北東部の道路網図(近世中期、後期)を作成した。(結果)1。関東地方の都市の都市交通圏は径15-20キロの略円形の交通圏をもつ、地方中心都市の交通圏が併存していることが確かめられた。2。江戸の近傍には日帰り、1泊の参詣旅行ルートに対応した網の目状の交通路が近世後期に発展した。それに対し、より遠方では、主な街道沿いの通過交通を主とした交通網が形成された。この道路網の形態は単線状で、主要霊場あるいは湯治場を結ぶ道であった。この道に沿道の寺社霊地が組み込まれた交通網が形成されたらしい。3。収集したデータをもとに、処理作業中であり、図の完成には至っていない。