著者
西澤 千惠子 上久保 陽子 阿部 なづき 吉村 悦郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.192, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】大分県の日田地方には、真鱈のえらと胃を干した「たらおさ」を甘辛く煮た「たらおさ」という食材と料理名が同じ、盆に食べられている郷土料理がある。しかし近年は料理を作る人も知っている人も減少してきている。今回は「たらおさ」の全容を解明する研究の一環として、「たらおさ」の現状を把握することを目的とした。【方法】別府市内にある大学の学生と大分県の北部に住んでいる人を対象に、認知度についてアンケート調査を行った。またインターネットの書き込みから、食べている地方を調べた。さらに現在「たらおさ」を製造している北海道の業者に、製造方法や歴史などの聞き取り調査を行った。【結果】大分県西部の日田地方、玖珠地方、北部の下毛地方、福岡県の博多市、大宰府市、うきは市、八女市、筑豊地方で食べられていることが判明した。「たらおさ」の他に、こんにゃく、干し竹の子や干ししいたけが入る場合もあった。北前船の積み荷に「干鱈」の記述があったり、明治時代に道南の松前地方で真鱈釣り漁業が始まったりしているので、この頃に「たらおさ」が製造され始めた可能性がある。その後道南の漁獲高が減少するに伴い、製造業者は徐々に北方に移り、現在では稚内市の3業者が、鱈の獲れる冬に棒鱈とともに製造しているに過ぎない。この大部分が北部九州に出荷されている。かつて博多や北九州の問屋に輸送された「たらおさ」は、これらの周辺に広まり、さらに日田街道を通って内陸の日田まで運ばれたので、現在もこの街道沿いで「たらおさ」が食べられているものと推測された。海産物が入手しにくかった内陸地方では最高のご馳走で、盆のもてなし料理として作られていたものと考えられる。
著者
吉村 喜代美 赤松 利恵 吉村 悦郎
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.271-281, 2019

<p>目的:高齢男性が講師役を務める同性代の男性を対象とした料理教室を開催した.本稿ではその教室の内容を報告するとともに,受講生の本料理教室に対する評価と,講師役の意識変化を検討した結果を報告する.</p><p>活動内容:2017年1月,H市社会福祉会館にて活動している男性料理倶楽部会員8名(平均年齢72.0歳)が講師役となる料理教室を開催し,男性16名(平均年齢68.1歳)が受講した.受講生に対しては質問紙調査,講師役に対しては質問紙調査および料理教室開催前後のグループインタビュー調査を行った.さらに会食時における双方の自由発言を記録し分析した.</p><p>結果:受講生参加動機では,「今後必要だと思ったから」と「男性による料理教室に興味があったから」が参加者総数16名の内の80%を超えていた.教室の内容や男性講師については90%近くが高評価であり,教室が再開催した場合の参加希望は100%であった.受講生から男性講師役に対しては「同性ならではの共感」,「同じレベルゆえのメリット」などのカテゴリが抽出され,講師役からは「自覚の芽生え」,さらに双方から「今後への意欲」が見られた.</p><p>結論:高齢男性が講師役となって実施した料理教室は,受講生,講師役双方の調理への関心を増加させることが示唆された.また,再開催の要請もあり,今後も継続し発展していく可能性も示唆された.</p>