- 著者
-
市瀬 孝道
吉田 安宏
吉田 成一
山元 昭二
- 出版者
- 大分県立看護科学大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
1. 肺炎桿菌と黄砂曝露による培養細胞における炎症性サイトカイン・ケモカンの遺伝子発現とタンパク発現:黄砂は肺炎桿菌(Klebsiella Pneumoniae(KP))による肺の炎症を悪化させた(前年度)。このメカニズムを明らかにする目的で、BALB/cマクロファージ(MP)由来のRAW264.7細胞に黄砂と肺炎桿菌を曝露して、Toll-like receptor(TLR)2とTLR4mRNAの発現、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中のこれらのタンパク発現を調べた。またTLR2とTLR4の抗体を用いてこれらの発現への影響を調べた。肺炎桿菌を添加したRAW264.7細胞はTLR2mRNAの発現を高めたが、TLR4の発現はむしろ低下した。TLR2とTLR4の抗体を用いて、TLR2とTLR4のmRNA発現を調べた結果、TLR2抗体はTLR2mRNAの発現を抑えると共に、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中の炎症性タンパク発現を抑えた。しかし、TLR4抗体はこられの発現を抑えることができなかった。この結果からKPはRAW264.7細胞のTLR2発現を介して炎症性サイトカイン・ケモカイン類の発現を高めていることが分かった。RAW264.7細胞にKPと黄砂を添加してTLR2とTLR4mRNA発現、炎症性サイトカイン・ケモカインmRNA発現と培養液中のタンパク発現を調べた結果、黄砂は肺炎桿菌によるTLR2の発現と炎症性サイトカイン類のタンパク発現を更に高めたがTLR4は低下した。この結果から、黄砂の肺炎桿菌による炎症増悪作用はTLR2の活性化を介して肺の炎症を増悪している可能性を示唆した。2. 黄砂付着細菌の感染実験:日本に飛来した黄砂から分離したBacillus spと黄砂をマウスの気管内に投与して黄砂の炎症増悪作用を調べた。その結果、本実験に用いたBacillus spは病原性が低く、マクロファージ数は増加させるものの、炎症反応の誘導性(好中球数の増加)は低かった。またマクロファージに関連したサイトカインは誘導するが炎症性サイトカイン類の発現は低かった。今後は病原性の強い細菌による感染実験が必要である。