著者
山口 貴史 中嶋 大介 江副 優香 藤巻 秀和 嶋田 好孝 小澤 邦壽 嵐谷 奎一 後藤 純雄
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-27, 2006-03-01

本研究は新築住宅における室内空気中のVOCsの挙動を把握するため,木造一戸建て住宅および集合住宅を対象に,新築時から一年間,室内および屋外空気をパッシブサンプリング法を用いて毎月測定を行った.一戸建て住宅の初回の測定では,リビングルームにおいてn-hexane, n-undecane, toluene, ethylacetate, methylethylketone, alpha-pineneおよび(+)-limoneneの7物質が10ppb以上で検出され,その後,経時的に減少した.6月には,p-dichlorobenzeneが一時的に高濃度(320ppb)で検出され,その後また減少した.その原因は,6月に冬服から夏服への衣替えをする際,p-dichlorobenzeneを含んだ防虫剤を使用したことが推察された.一方,集合住宅においてはtoluene,1,2,4-trimethyl-benzene, methylethylketoneおよびalpha-pineneの4物質が10 ppb以上で検出された.中でもmethylethylketoneは,100ppb以上の高濃度で検出されたが,その後,やはり経時的に減少した.完成から同じ時期の新築住宅でも,住宅や住み方の違いによって,VOCs汚染物質の種類が異なることが示された.
著者
市瀬 孝道 玉利 真由美 嵐谷 奎一 吉田 安宏 野口 恵美子 岸川 禮子 吉田 誠 西川 雅高 吉田 成一 定金 香里 藤枝 重治
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、黄砂がスギ花粉症、気管支喘息やアトピー性皮膚炎の病態を炎症性メディエータの発現を伴って増悪させることを動物実験で実証した。また黄砂が炎症誘導にあずかる転写因や遺伝子群の発現を変化させることを明らかにした。黄砂の継続的な曝露では、黄砂は一旦アレルギー気道炎症を悪化させるが、 曝露の長期化につれて TGF-β 誘導による免疫寛容が起こり、アレルギー気道炎症が減弱化することが分かった。調査研究では、黄砂飛来時に花粉症を持った人、あるいは持たない人の眼、鼻、咽頭等に影響が見られた。慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では黄砂日と呼吸機能や症状の変化との間に関連性が見られなかった。黄砂日における来院患者には鼻炎や花粉症患者が多く、続いて気管支喘息患者で、主訴は咳が最も多く半数を超えていた。以上の結果から、 黄砂はアレルギー疾患を増悪する環境要因であることが判明した。
著者
嵐谷 奎一 松井 康人 戸次加 奈江
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.127-136, 2019 (Released:2019-08-01)
参考文献数
11

モデルルーム(面積:20 m2, 容積:45 m3)において, 6種の異なる暖房器具(3種の石油系暖房器具, 都市ガス及びプロパンガスヒーター, 電気ストーブ)および喫煙により発生する汚染物質の計測を行った。換気条件は, 以下に示す4種類の方法により実施した。1: 換気操作を行わない(Fan off, Door closed), 2,3: ドアの開閉により換気を行う(Fan off, Door 45°-openまたはFan off, Door 10°-open), 4: 機械換気を行う(Fan on, Door closed)。なお, 暖房時間と喫煙時間は, いずれも3時間と設定した。これらの結果から, 電気ストーブを除く暖房器具の使用により, NOおよびNO2の発生が確認され, その濃度は機種により異なることが確認された。 また, CO, CO2およびホルムアルデヒドは, 電気ストーブを除く全ての暖房器具から発生することが確認され, 粉じんと多環芳香族炭化水素(PAH)は石油系暖房器具からの発生が認められた。一方で, 喫煙による影響を評価した結果からは, NO, COおよびCO2, ホルムアルデヒド, 粉じん, PAHの濃度の上昇が認められた。これらの汚染物質は, いずれも換気操作を行うことによって濃度の低減が確認され, 暖房器具の使用時や喫煙時には, 換気を行うことが室内汚染物質除去への対処策として効果を示すことが確認された。
著者
吉川 博道 田村 廣人 市来 弥生 長 普子 嵐谷 奎一
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.295-305, 2003-09-01 (Released:2017-04-11)

ヌクレオシドを構成する糖が, アキラルで安定な非環状糖からリボースやデオキシリボースヘ進化したとするJoyceなどの仮説をもとに, ペンタエリトリトールを糖残基として持つ新規な擬似ヌクレオチドのデザインと合成を行い, その生物活性を検討した. 合成した化合物は真核生物に対して毒性を示さなかったが, 原核生物であるスピルリナに対しては, アデニン, ベンズイミダゾールあるいは6-クロロプリンをヌクレオチドの塩基としてもつ化合物が100ppmで増殖阻害活性を示した. Vero細胞を用いたプラーク形成試験において, Herpes simplex virus (HSV) には塩基として6-クロロプリンを持つ化合物が, Parainfluenza virus (PIFV) には, 6-クロロプリン, 2-メチルメルカプトベンズイミダゾールあるいはグアニンを持つ化合物がプラーク形成阻害活性を示した.
著者
欅田 尚樹 中島 民治 菊田 彰夫 川本 俊弘 嵐谷 奎一
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.337-348, 2004-09-01
被引用文献数
10

医学教育における系統解剖実習においては,ホルムアルデヒドに高濃度で曝露される可能性がある.解剖学実習における学生および教職員の安全性評価のために,系統解剖学実習時に環境中濃度測定と自覚症状についてのアンケート調査を実施し,解剖学実習の環境改善および防備体制などの充実に繋げる基礎データを蓄積することを目的とした.濃度評価は作業環境測定に準じ, 2,4-dinitrophenylhydrazine (DNPH)含浸シリカゲルカラムに気中ホルムアルデヒドを捕集し,アセトニトリルで溶出後,高速液体クロマトグラフ(HPLC)にて分離・定量を行った.解剖実習開始前のホルムアルデヒド濃度の平均値は20〜93ppbであったが,実習開始後は実習の進展に伴い気中濃度は増加し最高時には1012〜1380ppbを示した.自覚症状調査においては,「喉が乾燥する」,「目がチカチカする」,「目がかゆい」,「気分が悪い」,「疲れている」などにおいて,普段に比べ解剖学実習室内において有意に高い訴えを認めた.
著者
嵐谷 奎一
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.143-161, 2007-06-10

強い発がん性を有するBenzo (a) pyreneを含む多環芳香族炭化水素の測定方法の開発と一般環境中の多環芳香族炭化水素汚染状況に関する調査・研究を進めてきた。この調査・研究では多環芳香族炭化水素の定量精度の高い簡易迅速分析法の確立とその方法を用いて、1985年より一般大気中の浮遊粉じん、多環芳香族炭化水素の測定と土壌中の多環芳香族炭化水素の測定を実施し、汚染状況について把握した。
著者
真鍋 龍治 欅田 尚樹 加藤 貴彦 黒田 嘉紀 秋山 幸雄 山野 優子 内山 巌雄 嵐谷 奎一
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.717-723, 2008 (Released:2008-09-30)
参考文献数
25
被引用文献数
3 5

Objectives: The purpose of this study was to investigate the incidence of multiple chemical sensitivity (MCS) and effectiveness of the Quick Environment Exposure and Sensitivity Inventory (QEESI) in Japanese workers in specific buildings. Methods: The survey was performed in 2004–2006 in Japan. QEESI (Japanese version) and a checklist on accumulation of fatigue developed by the Ministry of Health, Labour and Welfare were used in the examination of 410 workers in specific buildings. Three criteria of QEESI’s “symptom severity”, “chemical intolerance”, and “other intolerance” were evaluated in this study. Clinical histories were also surveyed. Result: Responses were obtained from 368 (89.8%) workers. The results showed that 132 (35.9%) individuals have been diagnosed as having allergy. Only two (0.5%) individuals were found to be MCS patients. There was no sick building syndrome patient. Applying the “high” criteria with QEESI to the standard of Miller and Ashford, we determined that only four (1.1%) individuals met all the three criteria, and 17 (4.6%) individuals met two of the three criteria. The QEESI score of allergy persons was higher than that of nonallergy persons. Among nonallergy persons, those who have a high score on accumulation of fatigue in the checklist showed a high score in QESSI. Conclusions: These findings indicated that the QEESI score tended to increase with workload and be high in individuals with allergy. Therefore, careful consideration is required, when QEESI is applied for screening MCS patients in Japan.