著者
李 慧瑛 深田 あきみ 新橋 澄子 横山 美江 橋本 智美 下高原 理恵 西本 大策 緒方 重光
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
看護科学研究 (ISSN:24240052)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.20-31, 2016-08

研究目的は、ポートフォリオを用いた臨地実習における成長報告書の自由記述を内容分析し、学生の内省傾向を明らかにすることである。看護学生72名の自由記述データを計量テキスト分析の手法を用いて、共起ネットワークの作成と対応分析を行った。共起ネットワークの構造分析の結果、「成長ベスト3」「学んだこと」「獲得した力」それぞれの項目で3〜5群のカテゴリーが抽出された。振り返りの大切さに気づいた学生が、より高い看護実践能力の向上を目指して努力する内省が読み取れた。対応分析による抽出語の全体的布置において、「獲得した力」が第1成分の寄与率の高いプラス側第1象限に位置しており、「成長ベスト3」と「学んだこと」を区別する基準軸になっていると考えられた。第1成分のプラス側には、「活かす」「力」「今後」の語が並んでおり、学生は応用力を獲得していると考えられる。しかし、それを「成長」としては捉えておらず、「学んだ知識や技術」を「自己の成長」と捉える傾向がある事が示唆された。
著者
影山 隆之 小林 敏生
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

交替勤務者に質問紙調査を行った結果、夜勤に従事している間の眠気は、夜勤連続時の「昼間の就寝前」に飲酒する人、及び次の夜勤前に二度寝する人で強く、就寝前にカフェイン摂取を控える人、就寝前に入浴する人、及び健康感が高い人では弱かった。この結果と先行研究に基づき「交替勤務者のための睡眠教育テキスト」と睡眠日誌を作成し、これを使った睡眠教育を交替勤務者に実施した。その結果、2カ月後には、睡眠によい生活習慣の一部で実行率が上昇し、夜勤連続時の不眠症状と夜勤に従事している間の眠気は減少傾向を示した。
著者
定金 香里
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

医療現場や家庭、商業施設で使用されている手指消毒薬の有効成分10種について、アトピー性皮膚炎を増悪するかモデルマウスを用いて検討した。炎症を増悪したのは、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロサンであった。統計的に有意では無かったが、ポビドンヨード、エタノールも増悪傾向を示した。増悪を認めなかったのはグルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、アクリノール、クロロキシレノール、イソプロピルメチルフェノールであった。増悪には、炎症細胞の活性化や炎症に関わるタンパク産生の亢進が関与していた。
著者
市瀬 孝道 玉利 真由美 嵐谷 奎一 吉田 安宏 野口 恵美子 岸川 禮子 吉田 誠 西川 雅高 吉田 成一 定金 香里 藤枝 重治
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、黄砂がスギ花粉症、気管支喘息やアトピー性皮膚炎の病態を炎症性メディエータの発現を伴って増悪させることを動物実験で実証した。また黄砂が炎症誘導にあずかる転写因や遺伝子群の発現を変化させることを明らかにした。黄砂の継続的な曝露では、黄砂は一旦アレルギー気道炎症を悪化させるが、 曝露の長期化につれて TGF-β 誘導による免疫寛容が起こり、アレルギー気道炎症が減弱化することが分かった。調査研究では、黄砂飛来時に花粉症を持った人、あるいは持たない人の眼、鼻、咽頭等に影響が見られた。慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では黄砂日と呼吸機能や症状の変化との間に関連性が見られなかった。黄砂日における来院患者には鼻炎や花粉症患者が多く、続いて気管支喘息患者で、主訴は咳が最も多く半数を超えていた。以上の結果から、 黄砂はアレルギー疾患を増悪する環境要因であることが判明した。
著者
甲斐 倫明 遠藤 章 高橋 史明 佐藤 薫 伴 信彦
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

CT診断からの臓器線量計算を行うWebシステムWAZA-ARIにおいて、年齢と体型の個人差を考慮できるシステムに拡張したWAZA-ARI 2を開発した。未成年はフロリダ大学で開発した年齢別ファントムを用いた。成人体型の違いを計算するために、日本人の標準体型からBMIで2倍の標準偏差だけ外れるやせ型、2倍と5倍の標準偏差だけ外れる肥満型のファントムを皮下軟組織のみを変形することでファントムを構築した。また、実際の臨床で得られたCT画像をもとにボクセルファントムを構築し、臓器線量の個人差を実際の体型ごとに計算し、体型と臓器線量の関係を導いた。有効直径が体格の指数として利用できることがわかった。
著者
恵谷 玲央
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

頭部X線CT 検査の回数に依存して白血病や脳腫瘍の発症リスクが増加することが報告されているが、頭部への低線量の放射線繰り返し部分照射が発がんリスクを増加させることを示した実験データは少ない。本研究では、動物用X線CT検査装置を使用して、マウスの頭部あるいは全身に臨床レベルの放射線を繰り返し照射して、白血病の起因となることが知られている造血幹細胞中の染色体異常(遺伝子異常)の有無とその蓄積の程度の経時変化について多角的に検討する。さらに、これまでに報告されている研究結果と対比することで低線量の放射線の部分照射と白血病リスクとの関係について解析を行う。
著者
影山 隆之 河島 美枝子 小林 敏生
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

勤労者のコーピング特性を評価するための既存の質問紙にはさまざまの問題があった。これらを参考に、職域健診や健康教育場面で使いやすい6尺度20項目からなる新しい簡易質問紙を試作した。これを勤労者集団に適用しては信頼性と妥当性を確認する作業を、数回繰り返した。最終的に、18項目からなるコーピング特性簡易評価尺度(BSCP)を完成した。BSCPの下位尺度(積極的問題解決、解決のための相談、気分転換、視点の転換、他者への情動発散、回避と抑制)には十分な内的一貫性と構成概念妥当性が認められ、また因子構造妥当性に男女差がないことも確かめられた。さらに、職業性ストレスや抑うつとBSCP下位尺度との間には中程度の相関があることや、職業性ストレスと抑うつとの関連をコーピング特性が媒介していることも認められ、職業性ストレス過程モデルとの理論的一致が確認された。BSCPを用いた研究の結果、コーピング特性は、喫煙・飲酒習慣・自殺に関する態度などと関連している可能性がある他、病院看護師の喫煙行動が交替制勤務に伴う眠気に対する対処行動の一種である可能性も示唆された。BSCPの再現性の検討、および大集団における標準化の作業は研究期間中に終了できなかったが、近日中に実行する準備を進めている。BSCPは、職業性ストレスに起因するストレインの予測、勤労者の健康問題関連行動・態度の関連要因分析、職場の「ストレスマネジメント研修」の教材などとして、実用的なツールであることが示唆された。
著者
影山 隆之 錦戸 典子 小林 敏生 大賀 淳子 河島 美枝子
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
大分看護科学研究 (ISSN:13456644)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-10, 2003-04
被引用文献数
5

病院看護職の職業性ストレスの特徴および精神健康との関連を職業性ストレスモデルに拠って検討するために、一公立病院の看護職101 名に対して横断的な質問紙調査を行い、女性98 名(97%)の回答について分析した。一般男性勤労者に比べ、対象者が経験しているjob demand は特に高いものでなく、しかもcontrol とreward の水準は高かった。これは病院看護職についての先行研究と比較しても、比較的恵まれた状況に見える。それにもかかわらず、その精神健康度は、病院看護職についての先行報告と同様の低い水準にあり、このことは職業性ストレス簡易質問紙で調べた一般的な職場環境要因から説明できなかった。精神健康度と関連する要因は、職場の対人関係の困難、達成感、仕事以外の悩み・心配事、抑圧的なストレス対処特性、および年齢であり、達成感は対人関係の困難に対して緩衝作用をもつことも示唆された。これらの関連要因の中には、一般勤労者と共通するものと、本集団に特有のものが見られた。女性交替勤務職という職種の特徴がこれらの関連要因に影響している可能性や、対象者のストレス対処特性に一定の偏りがあるかどうかなどは、今後の検討課題と考えられた。本研究の結果に基づきこの病院で試み始めているストレスマネジメント対策について紹介した。
著者
佐藤 和子 天野 敦子
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
大分看護科学研究 (ISSN:13456644)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-7, 2000-12
被引用文献数
9 5

三交代制勤務に従事する看護職者の勤務条件と慢性的・蓄積的疲労の関連を検討するために、6 つの病院1,574 名の看護職者を対象に無記名式質問紙調査を行った。その結果、看護婦の蓄積的疲労は、職位、年齢、経験年数、家族の有無との関連が強いこと、とくに家族の存在は、労働の意欲を高める要因になっていることが明らかになった。勤務条件としては、勤務時間や超過勤務、週休の形態、週休や有給の取得状況、勤務場所との関連が深いことが確認された。中でも、超過勤務時間や週休の形態は看護職者の蓄積的疲労に深く関与しており、1日の勤務時間が長く連続した休日が規則的にとれない場合には、身体的な疲労だけでなく精神的・社会的疲労も強くなることが確認された。今回の調査対象の病院では、夜勤回数は人事院勧告通りに運用されており、夜勤回数の違いによる蓄積的疲労の差は認められなかった。調査結果から、超過勤務をなくす人員配置や、規則的で連続した休養がとれるような完全週休2日制の実施などに向けての改善の必要性が示唆された。
著者
松本 比佐志
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
看護科学研究 (ISSN:24240052)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.24-33, 2014-03

農薬等、汚染物質、金属類、食品添加物などが食品中に高濃度に含まれていると、ヒトに健康障害をもたらすおそれがある。最近(2007〜2011年度)のトータルダイエット分析による摂取量調査によると、PCBや農薬等の1日摂取量推計値(EDI)は、各々の1日摂取許容量(ADI)の6%未満であった。また、ダイオキシン類の食品を介したEDI はその耐容1日摂取量(TDI)の21%であった。金属のPb、Hg、CdのEDIは、それぞれのTDIの10、21、55 %となった。1986〜2000年度に調査された食品添加物のEDIは、多く見積もったとしても対応するADIの10%以下の値であった。従って、これらの化学物質の毒性の強度、ADIやTDIに対する低いEDI、食品での違反検出率の低さなどを考慮すると、食品とともに生体内に取り込まれた物質または化合物間の相互作用により生体への悪影響が生じる可能性は極めて低いと考えられる。
著者
影山 隆之 大賀 淳子 河島 美枝子 舞 治代 佐田 美貴恵 渡辺 英宣 東保 みづ枝
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
大分看護科学研究 (ISSN:13456644)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.33-39, 2002-06

在宅精神障害者の日常生活における困りごとについて調べるために、大分郡に在住する精神障害者とその同居家族45組に対して自記式質問紙調査を行った。精神障害者自身が認識している困りごとと、その家族が評価した援助の必要性を比較した結果、二つの観点の大きな乖離が詳細に示された。乖離の様相には男女差も認められた。この乖離は、保健師が在宅精神障害者のためのホームヘルプ事業などに係るケースマネジメントを行う際に、参考になる。
著者
市瀬 孝道 西川 雅高 今井 透 吉田 成一 定金 香里 岸川 禮子 世良 暢之 世良 暢之
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は日本に風送された汚染黄砂の呼吸器系への影響を、実験動物を用いて明らかにすると共に黄砂現象中の健康被害を、呼吸器系を中心とした疫学調査によって明らかにすることを目的する。我々は動物実験で風送黄砂が卵白アルブミンによって誘発される気管支喘息様病態やスギ花粉による鼻炎を悪化させることを明らかにした。また我々は北九州地域における疫学調査おいて、黄砂が花粉症や目の症状を悪化させることを明らかにした。
著者
市瀬 孝道 吉田 安宏 吉田 成一 山元 昭二
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1. 肺炎桿菌と黄砂曝露による培養細胞における炎症性サイトカイン・ケモカンの遺伝子発現とタンパク発現:黄砂は肺炎桿菌(Klebsiella Pneumoniae(KP))による肺の炎症を悪化させた(前年度)。このメカニズムを明らかにする目的で、BALB/cマクロファージ(MP)由来のRAW264.7細胞に黄砂と肺炎桿菌を曝露して、Toll-like receptor(TLR)2とTLR4mRNAの発現、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中のこれらのタンパク発現を調べた。またTLR2とTLR4の抗体を用いてこれらの発現への影響を調べた。肺炎桿菌を添加したRAW264.7細胞はTLR2mRNAの発現を高めたが、TLR4の発現はむしろ低下した。TLR2とTLR4の抗体を用いて、TLR2とTLR4のmRNA発現を調べた結果、TLR2抗体はTLR2mRNAの発現を抑えると共に、炎症性サイトカイン・ケモカインのmRNA発現と培養液中の炎症性タンパク発現を抑えた。しかし、TLR4抗体はこられの発現を抑えることができなかった。この結果からKPはRAW264.7細胞のTLR2発現を介して炎症性サイトカイン・ケモカイン類の発現を高めていることが分かった。RAW264.7細胞にKPと黄砂を添加してTLR2とTLR4mRNA発現、炎症性サイトカイン・ケモカインmRNA発現と培養液中のタンパク発現を調べた結果、黄砂は肺炎桿菌によるTLR2の発現と炎症性サイトカイン類のタンパク発現を更に高めたがTLR4は低下した。この結果から、黄砂の肺炎桿菌による炎症増悪作用はTLR2の活性化を介して肺の炎症を増悪している可能性を示唆した。2. 黄砂付着細菌の感染実験:日本に飛来した黄砂から分離したBacillus spと黄砂をマウスの気管内に投与して黄砂の炎症増悪作用を調べた。その結果、本実験に用いたBacillus spは病原性が低く、マクロファージ数は増加させるものの、炎症反応の誘導性(好中球数の増加)は低かった。またマクロファージに関連したサイトカインは誘導するが炎症性サイトカイン類の発現は低かった。今後は病原性の強い細菌による感染実験が必要である。