著者
田中 芳明 石井 信二 浅桐 公男 深堀 優 七種 伸行 橋詰 直樹 吉田 索 小松崎 尚子 升井 大介 東舘 成希 八木 実
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-12, 2016 (Released:2016-02-27)
参考文献数
71

酸化ストレスは、炎症や感染などを契機として、抗酸化酵素などの体内抗酸化システムや摂取された抗酸化物質による消去を上回って体内で過剰に生成された活性酸素種による酸化損傷力として認識される。即ち、生体内の活性酸素生成系の亢進や、消去系(抗酸化システム)の低下により引き起こされる。酸化ストレスによって生体膜、生体内分子の酸化傷害に起因した臓器障害が進行し、多くの疾病の発症、増悪の原因となることが注目されている。近年、フリーラジカルの捕捉、安定化に寄与する CoQ10やカテキンなどの抗酸化物質、さらには n-3系多価不飽和脂肪酸などの脂質や亜鉛やセレン、クロム等の微量元素、短鎖脂肪酸である酪酸などが NF-κBの活性化を抑制して、炎症反応を制御することが明らかにされてきた。酸化ストレスと抗酸化療法に関して概略する。
著者
吉田 索 浅桐 公男 朝川 貴博 田中 宏明 倉八 朋宏
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.169-175, 2019 (Released:2019-09-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

近年,生体電気インピーダンス分析法(以下BIA)は,日常の診療や栄養評価,スポーツなどのさまざまな分野に用いられている.このBIAを利用して算出されるPhase angle(以下PhA)は細胞膜の抵抗を表した角度であり,細胞や細胞膜の栄養状態と関係が深く,体細胞量に反映する.健常者やアスリートなどの構造的完成度の高い細胞膜をもった正常細胞では,PhAは高く計測され,老化やがんなどの細胞膜の構造的損傷や細胞密度の低下した障害細胞では,PhAは低く計測される. PhAは細胞の健常度や全体的な栄養状態を反映することから,各種疾患の予後予測因子や栄養指標として注目されている.また,PhAは人体に微弱電流を流し細胞膜の抵抗値を直接測定して算出する実測値であるため,身長や体重だけでなく体液過剰の影響を直接受けない利点がある.そのため,通常の体成分分析には則さない重症度の高い患者や重症心身障害者などの正確な栄養評価が困難な患者にPhAは有用と思われる.
著者
橋詰 直樹 八木 実 石井 信二 浅桐 公男 深堀 優 七種 伸行 吉田 索 升井 大介 坂本 早季 恵紙 英昭
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1093-1099, 2015-10-20 (Released:2015-10-20)
参考文献数
22

機能性ディスペスシアに対し漢方療法を施行し,胃運動機能の観点からその有効性が認められた1 例を経験した.症例は5 歳男児.急性胃腸炎症状軽快後より腹部膨満,心窩部痛,嘔吐を認め近医を受診した.約50 日間摂取後の嘔吐が続き,発症前より3.6 kg の体重減少を認めた.上部消化管内視鏡検査では軽度の胃炎が認められ,画像検査では器質的疾患は認められず,感染性胃腸炎を契機とした機能性ディスペスシアと診断した.胃運動機能検査では13C 酢酸および13C オクタン酸呼気胃排出機能検査,胃電図検査を用いて評価した.入院後アコチアミドとH2 ブロッカーにて治療を開始したが,薬剤性肝機能障害を認め,六君子湯に変更した.内服開始後も水分摂取にて上腹部膨満が認められたため茯苓飲合半夏厚朴湯を追加した.症状改善し固形食摂取可能となった.4 か月間の内服治療により正常な胃排出機能が確認され廃薬とし,廃薬後も経過良好である.