著者
田中 芳明 石井 信二 浅桐 公男 深堀 優 七種 伸行 橋詰 直樹 吉田 索 小松崎 尚子 升井 大介 東舘 成希 八木 実
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-12, 2016 (Released:2016-02-27)
参考文献数
71

酸化ストレスは、炎症や感染などを契機として、抗酸化酵素などの体内抗酸化システムや摂取された抗酸化物質による消去を上回って体内で過剰に生成された活性酸素種による酸化損傷力として認識される。即ち、生体内の活性酸素生成系の亢進や、消去系(抗酸化システム)の低下により引き起こされる。酸化ストレスによって生体膜、生体内分子の酸化傷害に起因した臓器障害が進行し、多くの疾病の発症、増悪の原因となることが注目されている。近年、フリーラジカルの捕捉、安定化に寄与する CoQ10やカテキンなどの抗酸化物質、さらには n-3系多価不飽和脂肪酸などの脂質や亜鉛やセレン、クロム等の微量元素、短鎖脂肪酸である酪酸などが NF-κBの活性化を抑制して、炎症反応を制御することが明らかにされてきた。酸化ストレスと抗酸化療法に関して概略する。
著者
橋詰 直樹 田中 芳明 深堀 優 石井 信二 七種 伸行 古賀 義法 東舘 成希 升井 大介 坂本 早季 靍久 士保利 八木 実
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.1111-1114, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
28

プロバイオティクスとプレバイオティクスは腸内細菌叢の是正を目的として古くから用いられる。新生児期から幼児期までに腸内細菌叢は多くの因子に影響を受けながら変動し形成される。新生児外科的治療後の抗菌薬使用や経腸栄養の制限、乳児期における持続性下痢症など、正常腸内細菌叢の獲得が困難な場合において、プロバイオティクスとプレバイオティクスの有効性は数多く述べられている。また消化管疾患のみではなく、アレルギー性疾患など消化管疾患以外の面でもその有効性は報告されている。今回はその活用例について報告する。
著者
内山 昌則 岩渕 眞 大沢 義弘 松田 由紀夫 内藤 万砂文 広川 恵子 八木 実 飯沼 泰史
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.952-961, 1993-08-20 (Released:2017-01-01)

小児奇形腫群腫瘍の54症例中,未熟奇形腫は8例,悪性奇形腫は10例で,その発生部位は卵巣21例中未熟3例,悪性5例であり,精巣1例中悪性1例,仙尾部18例中未熟4例,悪性3例で,後腹膜9例中未熟1例,縦隔3例中悪性1例であった.悪性の組織型は未分化胚芽腫4例,胎児性癌3例,卵黄嚢癌3例であった.これらのうち小児腹部腫瘍で鑑別を要する卵巣,仙尾部,後腹膜の奇形腫群腫瘍,特に未熟,悪性奇形腫につき診断と治療方針および成績を検討した.卵巣未分化胚芽腫症例は腫瘍および同側卵巣卵管摘除術を行い,さらに術後療法として,Stage III症例の1例にCPA大量療法,もう1例に照射療法を行い, Stage IV 症例の1例に縦隔リンパ節転移巣の切除とCPA大量および照射療法を併用し,全例再発なく生存中である.卵巣未熟奇形腫の腹腔内再発を来した1例は摘除とVAC療法を行い,成熟神経線維からなる腹膜播種は経過観察し,腫瘍付属器摘除術後2年で両側肺転移を来した1例は肺転移巣を切除し,両例とも以後再発はない.また胎児性癌の1例は術後T2療法を行い再発はない.全例11歳以降には月経も発来し,経過良好である.仙尾部未熟奇形腫の3例は完全摘除後化学療法は行わず,仙尾部卵黄嚢癌のStage III の1例はPVB療法後完全摘除術を行い,術後PVBとHigh dose VAC療法で再発の徴候はない.後腹膜の成熟奇形腫の腹膜播〓例は術後経過観察で,また未熟奇形腫の1例は腫瘍摘除術後化学療法を行わず,経過良好である.
著者
八木 実 大滝 雅博 阿部 尚弘
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.51-54, 2021-04-15 (Released:2022-05-15)

外科領域で術前術後や,化学療法・放射線療法併用時にさまざまな愁訴が出現し,その解決に東洋医学(漢方医学)が果たす役割は大きい.実際にNSTでも,しばしばさまざまな症状とその解決依頼に直面する.このような場面こそ漢方医学の出番であると考えられ,個々の臓器の器質的異常に対して対処する西洋医学とは異なる対応が可能である.このような病態への対応にあたり漢方医学的基礎知識は身に着けておくべきである.本稿では外科医として知っておいた方がよい東洋医学(漢方医学)の基本を概説する.
著者
小林 英史 田中 芳明 浅桐 公男 朝川 貴博 谷川 健 鹿毛 政義 八木 実
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1207-1213, 2009 (Released:2009-12-21)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】緑茶カテキンには抗線維化作用や抗酸化作用があると報告されており、その効果および作用を胆汁鬱滞性肝障害モデルラットを用いて系統的に検討した。【対象及び方法】Wistar rat胆管結紮モデルをSHAM群、無治療群、治療群の3群に分け、17日後に犠死させた。検討項目は、AST、ALT値、抗酸化の評価として4-Hydroxynonenal染色と8-oxo-2'deoxyguanosine染色、炎症性サイトカイン活性化のkey mediatorとして転写因子Activator Protein-1 mRNAの定量、星細胞の活性化の指標として肝臓組織中のTGF-β1の免疫染色、線維化の評価としてAzan染色とα-smooth muscle actin染色である。【結果】緑茶カテキン抗酸化剤投与により、血清AST、ALT値の低下、転写因子AP-1の低下、酸化ストレス障害の軽減、星細胞の活性化の抑制、線維化の抑制がみられた。【結論】緑茶カテキン抗酸化剤投与により、酸化ストレス障害および転写因子の発現を抑制し、星細胞の活性化を抑制することによる線維化抑制効果が示唆された。
著者
橋詰 直樹 八木 実 石井 信二 浅桐 公男 深堀 優 七種 伸行 吉田 索 升井 大介 坂本 早季 恵紙 英昭
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1093-1099, 2015-10-20 (Released:2015-10-20)
参考文献数
22

機能性ディスペスシアに対し漢方療法を施行し,胃運動機能の観点からその有効性が認められた1 例を経験した.症例は5 歳男児.急性胃腸炎症状軽快後より腹部膨満,心窩部痛,嘔吐を認め近医を受診した.約50 日間摂取後の嘔吐が続き,発症前より3.6 kg の体重減少を認めた.上部消化管内視鏡検査では軽度の胃炎が認められ,画像検査では器質的疾患は認められず,感染性胃腸炎を契機とした機能性ディスペスシアと診断した.胃運動機能検査では13C 酢酸および13C オクタン酸呼気胃排出機能検査,胃電図検査を用いて評価した.入院後アコチアミドとH2 ブロッカーにて治療を開始したが,薬剤性肝機能障害を認め,六君子湯に変更した.内服開始後も水分摂取にて上腹部膨満が認められたため茯苓飲合半夏厚朴湯を追加した.症状改善し固形食摂取可能となった.4 か月間の内服治療により正常な胃排出機能が確認され廃薬とし,廃薬後も経過良好である.
著者
松下 優美 八木 実 水落 建輝 西浦 博史 牛島 高介 高木 章子 浅桐 公男 田中 芳明 鹿毛 政義 猪口 隆洋
出版者
日本門脈圧亢進症学会
雑誌
日本門脈圧亢進症学会雑誌 (ISSN:13448447)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.41-47, 2010-06-30 (Released:2012-12-28)
参考文献数
37
被引用文献数
1

小児の肝前性門脈圧亢進症(以下,本症)は主に肝外門脈閉塞症(EHO:extra-hepatic portal obstruction)や,肝内presinusoidal blockをきたす先天性肝線維症(CHF:congenital hepatic fibrosis)に大別される.これらは小児領域での突然の消化管出血の原因疾患として重要である.本論文では,自験例2例を紹介し,本症の原因,診断および治療,小児領域における問題点を述べる.CHFの1例は13歳男児,吐血で発症し,その後EVL, EISを繰り返したが,胃静脈瘤の発達と白血球,血小板の低下のため5年後にHassab手術を施行した.EHOの1例は8歳女児.心房中隔欠損症(ASD)を合併しており,吐血で発症.高度食道静脈瘤でありEVL, EISの適応を検討したが,ASDへの影響を考え,Hassab手術を先行して行った.その後EISにて残存する食道静脈瘤の追加治療を施行した.