著者
尾崎 米厚 福島 哲仁 阿部 顕治 中川 昭生 岡本 傳男 山根 洋右
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.937-941, 1987

島根県農村部における輸入赤痢アメーバ症の2例について報告した。2例とも中華人民共和国のツアー中に, 北京にてスイカを食べており, これが感染経路と考えられた。<BR>症例1は, 帰路上海にて発症し, 患者は, 悪心・嘔吐・下痢・意識消失を来し, 上海病院に緊急入院し, 脱水症状に対する治療を受けた。帰国後, 糞便検査にて<I>Entamoeba histolytica</I>の栄養型が認められ, 赤痢アメーバ症と診断された。メトロニダゾールにて治療を行なったが, 高令で激症アメーバ性大腸炎を呈した本例においては, 効果があまりなく, チニダゾールの方が効果を示した。<BR>症例2では, 自覚症状が認められなかったが, 糞便検査にて, <I>Entamoeba histolytica</I>の嚢子型が認められ, キャリアと診断され治療を受けた。<BR>近年は, 都市部のみならず農村部においても海外渡航者が増えており, 旅行者における輸入赤痢アメーバ症の多発, およびその集団発生に, 今後注意を払う必要があるものと考える。
著者
勝野 眞吾 鬼頭 英明 西岡 伸紀 三好 美浩 和田 清 吉本 佐雅子 尾崎 米厚 永井 純子
出版者
岐阜薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

若者の喫煙,飲酒を含む薬物乱用は変化するので繰り返し調査をしてモニタリングを行うことが必要である.本研究では,日本とアジアの青少年の薬物乱用の実態を調査し,データ・アーカイブを構築した.得られた結果は以下のようである.(1) 日本の青少年の喫煙,飲酒経験は連続して低下しており,2009年の時点でのこれまで1度でも喫煙経験した者の割合は13.1%,飲酒生涯経験率は56.7%であった. (2) 何らかの違法薬物を一度でも経験した者は2009年,男子1.1%,女子で0.6%であった. (3) 日本を含むアジア諸国の青少年の違法薬物乱用経験は欧米に比べて著しく低い. (4) 日本の高校生のほとんどは,薬物乱用の危険性をよく理解し,乱用に拒否的な態度を もつ. (5) 以上をまとめデータ・アーカイブを構築するとともに,その重要性を指摘した.
著者
中村 正和 田淵 貴大 尾崎 米厚 大和 浩 欅田 尚樹 吉見 逸郎 片野田 耕太 加治 正行 揚松 龍治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.3-14, 2020-01-15 (Released:2020-02-04)
参考文献数
45

目的 本報告の目的は,加熱式たばこの使用実態,健康影響,ニコチン供給装置としての製品特性に関わるエビデンスをもとに,本製品の流行がたばこ規制の主要政策に与える影響を検討し,今後の規制のあり方について政策提言を行うことである。方法 加熱式たばこの使用実態,有害化学物質の成分分析,ニコチン供給装置としての製品特性に関する文献検索には医学中央雑誌とPubMedを用い,11編を収集した。そのほか,国内の公的研究班の報告書と海外の公的機関の報告書から8編を収集した。 本製品の流行がたばこ規制に与える影響については,WHOがMPOWERとして提唱する6つの主要政策を取り上げた。本検討にあたっては,上述の19文献に加えて,たばこ規制の現状に関わる計26編の文献や資料を収集して用いた。結果 わが国では2013年12月から加熱式たばこの販売が開始され,2016年から流行が顕著となっている。2016年10月の時点で,日本は国際的に販売されている加熱式たばこ製品の90%以上を消費している。加熱式たばこは,紙巻たばこに比べるとニコチン以外の主要な有害物質の曝露量を減らせる可能性がある。しかし,病気のリスクが減るかどうかについては明らかでなく,紙巻たばこを併用した場合には有害物質の曝露の低減も期待できない。また,ニコチンの曝露ならびに吸収動態は紙巻たばこと類似しており,ニコチン依存症が継続して,その使用中止が困難になる。 加熱式たばこの流行は,WHOが提唱する6つの主要政策のいずれにおいても,現状の日本のたばこ規制の下では悪影響を与える可能性が考えられた。結論 加熱式たばこの流行に対して公衆衛生上の懸念が指摘されているが,その規制のあり方を検討するためのエビデンスが不足している。今後,加熱式たばこの健康影響のほか,紙巻たばこ使用への影響,たばこ政策に与える影響について研究を進める必要がある。健康影響が解明されるまでは,公衆衛生の予防原則の観点から紙巻たばこと同様の規制を行うべきである。
著者
城戸 尚治 兼板 佳孝 尾崎 米厚 谷畑 健生 神田 秀幸 大井田 隆
出版者
NIHON UNIVERSITY MEDICAL ASSOCIATION
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.428-435, 2012-12-01

全国約 10 万人の中高生を対象とした大規模疫学調査データを用いて喫煙行動と不眠の関連性について検討を行った.調査デザインは断面標本調査とした.2004年から 2005 年にかけて全国学校総覧より無作為抽出した中学高校の在校生を対象に自記式質問調査票による調査を行い,回答に不備のなかった 102,451 人分の調査票を解析した.入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の有訴者率は,喫煙日数,喫煙本数が多いあるいはニコチン依存度が高いほど有意に高値を示した.多重ロジスティック回帰分析により非喫煙者に対する調整オッズ比を算出した結果,毎日喫煙する,1 日 21 本以上喫煙する,朝起きていつもすぐに吸いたくなるという群が最も高値を示し,いずれも有意な関連が認められた.これら体内のニコチン摂取量と不眠症状の関係から,喫煙行動と不眠の間に密接な関連があることが示唆された.今後,学校において喫煙防止と睡眠衛生を含めた包括的な対策が必要である.
著者
城戸 尚治 兼板 佳孝 尾崎 米厚 谷畑 健生 神田 秀幸 大井田 隆
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大醫學雜誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.428-435, 2012-12-01
参考文献数
30

全国約 10 万人の中高生を対象とした大規模疫学調査データを用いて喫煙行動と不眠の関連性について検討を行った.調査デザインは断面標本調査とした.2004年から 2005 年にかけて全国学校総覧より無作為抽出した中学高校の在校生を対象に自記式質問調査票による調査を行い,回答に不備のなかった 102,451 人分の調査票を解析した.入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒の有訴者率は,喫煙日数,喫煙本数が多いあるいはニコチン依存度が高いほど有意に高値を示した.多重ロジスティック回帰分析により非喫煙者に対する調整オッズ比を算出した結果,毎日喫煙する,1 日 21 本以上喫煙する,朝起きていつもすぐに吸いたくなるという群が最も高値を示し,いずれも有意な関連が認められた.これら体内のニコチン摂取量と不眠症状の関係から,喫煙行動と不眠の間に密接な関連があることが示唆された.今後,学校において喫煙防止と睡眠衛生を含めた包括的な対策が必要である.