著者
河野 紀美子 鈴木 陽 渡辺 美恵子 近藤 由紀子 向井 陽 大溝 法孝 高濱 靖英
出版者
Japanese Cleft Palate Association
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.159-170, 1989

九州大学歯学部附属病院矯正科における口唇裂口蓋裂患者の実態を把握するために,昭和45年8月の当科開設以来昭和63年末までに受診した口唇裂口蓋裂患者996名(男性525名,女性471名)を対象に臨床統計的観察を行い以下の結果を得た。<BR>1.初診時年齢のピークは3歳時であった。<BR>2.口唇裂口蓋裂の裂型別頻度は,唇裂6.0%,唇顎裂17.4%,唇顎口蓋裂59.8%,口蓋裂16.8%であった。<BR>3.裂の発生部位は左側53.4%,右側27.6%,両側18.6%であった。<BR>4.性差は唇裂で男性が女性の約1.4倍,唇顎裂では男女ほぼ同率,唇顎口蓋裂では男性が女性の約1.5倍,ロ蓋裂では女性が男性の約2.4倍であった。<BR>5.生下時の平均身・体重・低出生体重児の頻度は日本人一般平均と有意差は認められなかったが,早期出産傾向は有意に認められた。母親の年齢の影響は認められなかった。<BR>6.初診時における同胞数は2人が最も多く,出生順位は高位の者が多かった。末子である比率は66.9%であった。<BR>7.片側性唇顎口蓋裂患者の上顎歯列弓セグメントの接触状態は,接触型81.4%,遊離型11.8%,重複型6.8%であった。<BR>8.1歯以上の反対対咬(いわゆるクロスバイト)がある者は84.6%であった。反対対咬は前歯と破裂部位に隣接する歯牙に高頻度であった。乳歯列より永久歯列の方が反対対咬を呈する歯牙が多かった。<BR>9.当科受診後,矯正治療を受けなかった者の割合は,唇裂患者の23.3%,ロ蓋裂患者の21.6%,唇顎裂患者の16.7%,唇顎裂患者の11.8%であった。
著者
向井 陽祐 黒柳 ふみ 村林 学 渡部 博之 北井 則行
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 = The Journal of Gifu Dental Society (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.283-288, 2014-02-20

下顎左側側切歯の先天性欠如を伴う骨格性1級症例と診断された15歳9ヵ月の女子に対して上顎歯のストリッピングを併用した矯正歯科治療を行った。その結果、良好なオーバージェット、オーバーバイト、I級の犬歯・大臼歯関係および緊密な咬頭嵌合を得ることができた。保定開始から2年5ヵ月を経過し、現在も、安定した咬合関係を保っており、患者の十分な満足が得られた。
著者
高原 富弘 向井 陽美
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.205-214, 2013-07-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

細胞障害性薬剤に代表される抗がん剤のDDS研究において、最も有望なアプローチの1つに、従来の抗がん剤に対し製剤的な工夫を施すことで、理想的な薬物動態学的特性へと変化させる方法がある。塩酸ドキソルビシンをリポソームカプセルに封入し、メトキシポリエチレングリコールでコーティングした製剤であるドキシル®は、長時間の血液循環及び腫瘍組織への移行を促進することにより、塩酸ドキソルビシンの毒性プロファイルを改善した。本稿では、ドキシル®の開発経緯並びに再発卵巣癌における臨床データを中心に言及する。