著者
安梅 勅江 呉 栽喜
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.7-18, 2000

本研究は、夜間を含む保育サービスを利用している子どもの発達や適応に対する、保育形態(昼間・夜間)、育児環境、保護者の状況の複合的な影響を明らかにし、今後の課題を検討することを目的とした。全国の認可夜間保育所(全41個所)のうち22ヵ所の保育所にて保護者及び園児の担当保育専門職を対象に質問紙調査を実施した。有効回答は保護者1,949名(回収率73.0%)、園児(保育専門職による回答) 2,905名(回収率74.6%)であった。本研究の結果を要約すると以下の通りである。(1)子どもの発達状態には、「保育の形態や時間帯」ではなく、「家庭における育児環境」及び「保護者の育児への自信やサポートの有無」などの要因が強く関連していた。(2)したがって、特に夜間保育園においては、家庭的な環境をいかに充実するかが重要な課題となる。物理的な環境、人的な環境、保育プログラムを含め、子どもの育ちに適合した家庭的な環境をさらに整備する必要がある。(3)さらに、保育園の役割として、育児に関する相談相手となり、保護者の育児への自信の回復を促すなど、保護者に対する「子育てを支える」ための地域に開かれたサービスの充実が期待される。(4)現実として、深夜保育には通常保育より発達にやや遅れのみられる子どもの在籍している割合が高いことから、通常保育よりさらに専門性の高い保育スタッフの配置が必須である。(5)夜間保育の子どもに対する影響を本当の意味で明らかにするためには、今後さらに経年的な研究を継続する必要がある。
著者
呉 栽喜 オウ ジエヒ Oh Jaehee
雑誌
大東文化大学紀要. 社会科学 (ISSN:09122338)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.53-67, 2014-03-31

子どもの貧困は、経済的困難を表すだけでなく、子どもの成長過程における様々な体験からの剥奪を意味する。日本では貧困研究は1970年代までは盛んであったが、その後の経済成長とともに貧困の問題は注視されずにいた。特に、子どもの貧困に関する社会福祉研究は乏しく、地域社会や家族における「子ども貧困」という捉え方としての研究はあまり蓄積されてないのが現状である。貧困状況が顕著な母子家庭において母親の就業率が他の世帯より高い状況にも関わらず多くの母子家庭の子ども達において貧困率が高くなっており、その原因として、日本における教育関係の公的支出が少ないことや、貧困のリスクを抱える層の税・社会保障負担が大きすぎることも子育て家庭における高い貧困率の原因であることが明らかになった。子ども期の貧困状況を改善することは、子育てを「家庭の責任」から「社会の責任」へと捉え直していくことが求められる。