- 著者
-
河村 剛史
柴田 仁太郎
和田 寿郎
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.10, pp.1001-1008, 1984-10-15 (Released:2013-05-24)
- 参考文献数
- 12
雑種成犬10頭を用いた左脚中隔枝群の後半分を含む左脚後枝群障害,次いで右脚本幹障害を作成し,心表面マッピング,ベクトル心電図にて検討を加えた.左脚後枝群障害にて左室心尖部から後面にかけて興奮伝播遅延がみられたが,同領域はコントロール時にすでに興奮伝播が遅延しており,QRSベクトルの終末部に軽度の遅延がみられる程度で,QRS軸の変化はなかった.右脚本幹プロックが加わると右室前面の最早期興奮部位は消失し,左室前面が最早期興奮部位となり,これを中心とした興奮伝播パターンとなった.最終興奮部位は右室房室間溝側心表面で,QRS軸は右上方に大きく偏位した.QRS軸の偏位には心臓全体の興奮伝播の方向性の変化が必要で,前提条件として障害領域が早期興奮部位である必要がある.イヌにおいて,左脚後枝群障害を加えても,もともと興奮伝播の遅れている左室後面がさらに遅れるだけで,QRS軸の変化はみられなかったと考えられる.