著者
和田 謙一郎
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.66, pp.75-89, 2018-09-25

本稿は、主に視覚障害者が65 歳に達した場合に介護保険制度・障害者総合支援制度がどのように適用されるのかを念頭に、高齢・障害双方の在宅サービスを担う「共生型サービス」の位置づけと、高齢障害者がそれをいかに適切に利用可能としていくのか、それらを検討するものである。65 歳問題と共生型サービスは、普遍化されたニーズとそれに応えるサービスに更に特化したサービスを加えるものとはいえない。長年、難病等の疾病や各種障害、そして高齢について個別に制度運用と適用されてきたものが、地域共生の名の下で、在宅サービスに限り社会保障費抑制策としてサービスを普遍化するものと言っても過言ではない。その普遍化とは、市場原理と所得再分配機能が混在するものになる。運営する側の自治体も、サービスの担い手となる事業者も、そしてサービス利用者も、この混乱ぶりを重く感じているのである。
著者
和田 謙一郎
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学大学院研究論集 (ISSN:18836364)
巻号頁・発行日
no.11, pp.53-79, 2016

この国で類を見ない人権侵害を継続し続けたハンセン病(らい)問題については、司法判断までの経緯や当事者(ハンセン病回復者)らの考え方について、似た分類に入る他の訴訟との相違点を感じる部分が多い。この素朴な疑問を解決するためには、戦後の現行憲法下のらい法制と、当初から強制隔離の対象となった療養所入所者の生活状況、そして、らい法制を含むわが国の国民の生活保障を担う社会保障法制について、一連のらい法制を旧来の保護と考えるか、侵害法制と考えるか、あるいは給付法制と考えるか、それら各法制を時代別相互に確認する必要がある。同時に、戦後に再形成されるハンセン病患者らへの社会的排除と、社会保障法制下の制度的排除が生じる原因の解明も必要となる。本稿は、戦後の時代背景を捉え、らい法制と社会保障法制の変遷も確認し、行政・立法、そしてハンセン病患者らが、戦後のらい法制を、その時代、その時代にどのように捉えていたかを司法判断を参考にし先の疑問の解明を試みる。
著者
和田 謙一郎
出版者
四天王寺大学大学院
雑誌
四天王寺大学大学院研究論集 (ISSN:18836364)
巻号頁・発行日
no.12, pp.67-92, 2018-03-20

敗戦を経験した年齢層のらい(ハンセン病)療養所入所者、及び療養所医療関係者は、らいの「不治の時代」と「治療可能になった時代」をまたぎ、また、戦争を経験した者が敗戦を迎え、GHQ 主導の下での新しい医療施策を経験する。これらを念頭に置き、当時からの療養所入所者の生活実態や、そこに従事した看護婦らの実態を眺め、敗戦後も、そして「治療可能な時代」になっても、なぜ長年、らい(ハンセン病)療養所が特異な療養所として存在し続け、あるいは、そこでの患者らの生活が継続し続けたのか、その検討を進める。